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2020年東京パラリンピックで史上初のメダル獲得を目指す車いすバスケットボール男子日本代表。その実現に向けて、現在、チームは強化に余念がない。19日には強化指定選手24人のうち選ばれた13人が渡米。21日には5日間にわたって行われる、アメリカ、スペインとの親善試合がスタートした。
初日の21日、日本はスペインと対戦した。スペインは2016年リオデジャネイロパラリンピック銀メダルチーム。そして、昨年の世界選手権では、日本が決勝トーナメント1回戦で、わずか2点差に泣いた因縁の相手でもある。
今年9月には東京パラリンピックのヨーロッパ予選を控えるスペインは、昨年の世界選手権メンバー7人を擁したチーム構成でこの遠征に乗り込んできた。親善試合とはいえ、ほぼフルメンバーのスペインとの一戦は日本の力を測るうえで大事な指標となる。
第1クォーターではディフェンスでの連携が思うように取れず、いきなり10-22とダブルスコアに。しかし、スタメンからラインナップを代えて臨んだ第2クォーターでは徐々に流れが日本へ。第3クォーターは得意のプレスディフェンスでスペインを翻ろうし、完全に主導権を握って逆転に成功した。
しかし、第4クォーターで再び逆転を許し、そのまま逃げ切られた日本。66-73で敗れ、黒星スタートとなった。
敗れはしたものの、課題だけが残ったわけではない。チームとして強化してきた成果も数多く見受けられた。
その一つが、川原凜のプレーだ。第2クォーターの途中から出場した川原は、ボールマンに強くプレッシャーを掛けに行くアグレッシブなディフェンスで超ビッグマンたちの動きを封じた。
さらに、第3クォーターには3本のシュートを決め、オフェンスにも貢献。いずれも超ビッグマンが待ち受けるインサイドに果敢にアタックした見事なシュートだった。
結局、試合終了まで川原を起用し続けた及川晋平ヘッドコーチも「飛躍的に成長した選手の一人。存在感が出てきたね」と高く評価した。持ち点1.5の川原だが、そのスピードやボールキープ力は「2点台の選手のライバル的存在となりつつある」と指揮官は見ている。
本人はというと、「今日の試合は全然でした」と反省しきりだ。だが、それは逆に言えば、自信と向上心の表れでもある。「まだまだ上げられます」と川原。その胸の内には「このレベルで終わらない」という気持ちがあるのだろう。
そんな川原には試合前の大事な儀式がある。チーム全体のアップ後、ほかの選手たちがシュート練習をしたりダッシュをしている中、川原は一人、センターラインから相手コートをじっと見つめる。
それは、「試合中、コート全体を俯瞰して見られるようにするためのルーティーン」。集中しすぎないように一度上げたギアを試合前に落とす作業をしているのだ。
1年前ほど前から続けているが、パスを受けた次の動作が早くなったと感じている。視野を広くもつことで、パスを受けた時にはすでに次に何をすべきかが瞬時に判断できるようになったからだ。
そんな成長著しい川原が、ずっと楽しみにしてきたことがある。リオデジャネイロパラリンピック金メダルチームで、世界最強と言っても過言ではないアメリカとの対戦だ。昨年の世界選手権ではそれが実現できず、今回の遠征でようやく叶う。
22日(現地時間)には、そのアメリカとの初戦を迎える。
「今日のスペイン戦を見ていて、連携は取れているし、すごいなと思いました。ただ、やっているバスケ自体は、日本の方が上かなと。明日は自信を持って勝ちに行きたいと思います」
指揮官もまた、「きっと、選手たちはやってくれるでしょう」と全幅の信頼を寄せる。果たして、世界の頂点に上り詰めた強豪国相手に、日本はどんな試合をするのか。ティップオフは、現地時間午前10時だ。
文・写真=斎藤寿子