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1年後、世界最高峰の舞台で史上初のメダル獲得を目指す車いすバスケットボール男子日本代表。その実現に向けて、及川晋平ヘッドコーチの下、さらなる強化を図っている。強化の重要な要素の一つとして指揮官が掲げているのが「チーム内競争の激化」だ。トップレベルでしのぎを削り合い、12人の代表メンバーの座を争う環境の常態化が、チームの力を押し上げる原動力となるからだ。そこで今回は、既存の選手たちのライバルに名乗りをあげようとしている選手たちに注目した。
15、16日の2日間にわたって行われた国際親善試合「アジアドリームカップ2019」。日本は予選リーグから4戦全勝で完全優勝を成し遂げた。決勝後、「大きな収穫を得た大会となった」と語っていた及川HC。その一つが、チーム内競争を激化させることが期待できる選手たちの出現だ。
今大会、4年ぶりに“代表入り”を果たしたのが、竹内厚志。所属するワールドBBCでは主力の一人として活躍し、国内トップクラスのプレーヤーの一人だ。
その竹内が初めて強化指定選手に選ばれたのは、2015年。同年11月に行われた国際親善試合「北九州チャンピオンズカップ」では、初めて「JAPAN」のユニフォームに袖を通した。だが、16、17年は選考から漏れてしまった。昨年、3年ぶりに強化指定に返り咲いたものの、一度も代表入りを果たすことはできなかった。
そんな悔しい4年間を経ての2度目の代表選出となった今大会、竹内は「正直、とても緊張していた」。そんな中、及川HCや京谷和幸ACから「お前の持ち味を出してこい」とげきを飛ばされという。その言葉に背中を押されるようにして、決勝では第1クォーターの出だしで立て続けに得意のカットインプレーで得点を挙げ、チームを勢いに乗せた。
全4試合で竹内をスタメンに起用した及川HCは、彼への期待をこう語る。
「竹内には(同じ持ち点3点台の)香西宏昭、古澤拓也に並ぶ選手になってほしいなと。ポイントガードとして、チームの要になってほしいという期待をもっています」
今大会で「危機感が出てきたのではないか」と指揮官が見ているのが、鳥海連志だ。高校1年だった14年の夏に代表候補の合宿に初招集されて以降、鳥海の代表活動は順風満帆と言っていい。翌15年に代表入りを果たし、16年にはリオパラリンピックにチーム最年少として出場。リオ以降は、主力の一人として活躍してきた。
今大会、その鳥海にとって2度目のパラリンピックを1年後に控えた今、強力なライバルとなる可能性を秘めた存在として指揮官が挙げたのが、関大樹だ。
関は今年初めて強化指定に入り、今大会が代表デビュー。だが、「まったく緊張感はなかった」と言い、初戦から自慢のシュート力を発揮してチームに貢献した。躍動する関の姿に、及川HCも高く評価した。
「強化指定に入ったばかりの関にとって、代表でやろうとしているバスケがまだまだわからないことも多いはず。それでも初めての国際大会できちんとプレーで見せてくれた。関があれだけシュートを決めてくれたことによって、同じ持ち点(2.5)の鳥海も意識をしたと思いますよ。だから鳥海もまたシュートを落とさなかったですよね。今大会では彼らの競争が見えて良かったなと」
昨年、高校3年で初めて強化指定に入り、10月のアジアパラ競技大会で代表入りを果たした赤石竜我も含め、これまで鳥海が唯一無二に近かった持ち点2.5同士の競争が、ますます激しくなりそうだ。
「代表というのは選手たちにとって夢のような場所。それが『いつでも入れる』という場であっては絶対にいけないし、それではチームは強くなっていかないですよね。常にトップレベルでの競争があり、少しでも手を抜いたら落とされる。そういう場であるためにも、今回のように新しく選手が台頭してくれるのは大きい。みんなで切磋琢磨しながら東京(パラリンピック)に向かっていきたいなと」
今夏には国際親善試合「三菱電機 WORLD CHALLENGE CUP 2019」があり、そして11月には今年最大でメインとしている「アジア・オセアニアチャンピオンシップス」が控えている。果たして、厳しい競争を勝ち抜き、12枠の代表の座をつかむのはどの選手か。今後の代表選考にも注目したい。
文・写真=斎藤寿子