2020.04.20

ラマスHC率いるアルゼンチンと激突!あと一歩のところで勝ち切れないアジアの戦いぶりは【FIBA CLASSIC GAMEアジア編】

アジアの各国が世界に挑戦した戦いをプレーバック [写真]=fiba.com、Getty Images
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

 FIBAの公式YouTubeで毎日配信されている『FIBA CLASSIC GAMES』を紹介する第2弾は「男子アジア編」。ここでは、アジア勢が強豪国を相手に大激戦を展開した3ゲームを紹介する。ただ、ここに紹介するのは激戦であって勝ち切れなかった試合ばかりである。昨年のワールドカップでの結果からわかる通り、アジア勢が世界大会でグループラウンドを突破するにはまだ壁があるのが現状だ。

 アジア勢は何が足りないのか? 終盤での詰めの甘さやプレスをかけられたときの対応力など様々な理由が浮かび上がるが、絶対的に言えることは、アジア勢は世界レベルでのゲーム経験がもっともっと必要であるということが、これらのゲームからもわかるだろう。

 2014年のFIBAワールドカップでフリオ・ラマスヘッドコーチ率いるアルゼンチンに挑んだフィリピンの試合をはじめ、昨夏行われた2019年FIBAワールドカップから、勝利目前で白星がスルリと逃げていった中国vsポーランド、イランvsプエルトリコの3ゲームを紹介する。

文=小永吉陽子

「ラマスHCも冷や汗。『アジアにフィリピンあり』を印象付けた大会」2014年FIABワールドカップ グループラウンド アルゼンチンvsフィリピン

アルゼンチン85−81フィリピン
https://youtu.be/T1aEkh7rARU

 2012年のロンドン五輪でアルゼンチンをベスト4へと導いたフリオ・ラマスHC率いるアルゼンチンが、アジア2位のフィリピンとワールドカップで激突。

アルゼンチンの指揮をとっていたのは現日本代表のヘッドコーチ、フリオ・ラマス [写真]=Getty Images


 フィリピンはラニデル・デオカンポや、『カストロ』の愛称で知られるジェイソン・ウイリアムら得点源の3ポイントで先行し、主導権を握って試合を進める。しかし地力にまさるアルゼンチンは前半のうちに追いつき、第3クォーターにはディフェンスの甘さを突いて15点差まで引き離す。ここでフィリピンは引き下がらなかった。窮地に陥ると、フィリピンの『レジェンド』と呼ばれる司令塔のジミー・アラパグが3ポイントを次々に決め、残り12.7秒で2点差まで迫る気迫を見せる。しかし、逆転をかけた最後の攻めでミスが出てしまい、万事休す。

世界の強豪アルゼンチンにチャレンジしたフィリピン [写真]=fiba.com


 この大会でのフィリピンは帰化選手のアンドレイ・ブラッチェ(元ワシントン・ウィザーズほか)と攻撃力のあるアウトサイド陣をはじめ、2013年に自国で開催されたアジアカップからの強化を引き継ぎ、バランスのいい布陣で大会に臨んでいた。アルゼンチン戦の他にも初戦ではクロアチアに78−81、4戦目にはプエルトリコに73−77と大激戦を繰り広げ、グループラウンド最終の5戦目には79−81でセネガルを下して待望の1勝をもぎ取っている。

 また映像からもわかるとおり、会場であるスペインのセビージャに駆けつけたフィリピンファンの熱狂は大会を通して話題になり、もっとも価値あるファンに贈られる『MVFベストカントリーアワード』を受賞。一方、アルゼンチンはこの大会では振るわず11位に終わっている。

「開催国のプレッシャーか。中国、土壇場のミスで痛恨の逆転負け」2019年ワールドカップ グループラウンド ポーランドvs中国

ポーランド 79−76 中国
https://youtu.be/I-tZTTBt3rc

 リードチェンジすること13回の大接戦の中、勝利をつかみかけた中国。だが、土壇場で犯したミスが響き、ポーランドが延長にもつれ込む激闘を制した。

 第2クォーターから一進一退でゲームが進む中、中国はメインガードのグオ・アイルンが第3クォーター中盤にファウルアウトするアクシデント。ここから一時はポーランドに流れが傾く。だが大黒柱のイー・ジャンリャン(元ニュージャージー・ネッツほか)が起死回生の3ポイントを決めて逆転。残り13.8秒で3点リードした中国は、ポーランドに3点を与えないように、“逆”ファウルゲームを仕掛けて、加点をフリースローでの2点以内に抑える作戦に出る。試合全体ではターンオーバーが目立った中国だが、この作戦においては巧妙に遂行し、あとは1点リードで迎えた残り7.2秒のラストポゼッションを乗り切るだけだった。

母国の大声援に後押しされ、中国のエース、イー・ジャンリャンはリングを目指したが [写真]=fiba.com

 しかし、中国は最後のオフェンスで痛恨のスローインミスを犯し、ボールをスティールしたポーランドをファウルで阻止。フリースローの2投目を決めたポーランドが同点に追いつき、試合は延長へ。中国にしてみれば、自らのミスで首を絞めながらも逆転されなかったことに命拾いしたと言うべきか、目前で勝利を逃したと言うべきか。延長での中国はスローインでまたもミスを犯すなど明らかに動揺しながら戦っていたが、それでも、首の皮一枚のところで最後のポゼッションを得て、3点差をかけて最後のシュートに望みを託すが……。

 試合中、コートサイドで応援する中国女子代表や中国協会のヤオ・ミン(元ヒューストン・ロケッツ)会長が何度も映し出され、ホームを埋め尽くすファンの熱狂は凄まじく、これが開催国の背負うプレッシャーなのかと思わずにはいられなかったが、ベンチでヘッドダウンしている選手がいるようではビッグゲームを勝ち切ることはできないだろう。

 この後、失意の中国は下位ラウンドに回ってアジア最上位が獲得する東京五輪の切符までも逃し、自信をつけたポーランドはベスト8へと駆け上がることとなる。まさに両者にとっては明暗を分けた試合になった。

「前半18点リードから敗れたイラン。アンビリーバブルなラスト1分間の攻防」2019年FIBAワールドカップ グループラウンド プエルトリコvsイラン

プエルトリコ 83−81 イラン
https://youtu.be/6uAmtUmb9RQ

 2019年FIBAワールドカップでのイランは、日本がアジア予選で2勝した時のメンバーとは大きく異なっていた。218センチのハメッド・ハダディ(元トロント・ラプターズほか)とチームリーダーのサマド・ニックハ・バハラミといったベテランが合流したことに加え、アジア予選時にはいなかったイギリスとのハーフで214センチのアーロン・ジェラミプールが加入。さらには次世代のエース、ベフナム・ヤクチャリ(191センチ)をメインのポイントガードとして起用。サイズも選手層も厚くして大会に臨んだ。

 イランはハダディの高さが効き、前半で18点、第3クォーター終了時にも14点のリードを奪う。第4クォーターにプエルトリコがターンオーバーを誘発するプレスをかけても、イランは残り3分で11点、残り46秒で4点のリードを死守。それでもプエルトリコが逆転できたのは、ディビッド・フェルタスの驚異的な3ポイント(5/7本)があったからだが、イランも残り4秒に信じられないようなシュートが決まって同点に持ち込む。そんな大激戦の幕切れは、実況が絶叫しながら連呼していた「アンビリーバボー!」な展開なので、ぜひ映像を見てほしい。

この試合でハメッド・ハダディは22得点をゲット [写真]=fiba.com


 イランはグループラウンドで3連敗を喫するが、下位ラウンドではアンゴラとフィリピンに連勝。中国と2勝同士で並ぶものの得失点差で上回り、アジア最上位として東京五輪の出場権を獲得した。ベテランのハダディとバハラミの合流に加え、アジア予選時よりバージョンアップしたメンバーで東京五輪に乗り込んでくるだろう。