2020.06.18
2006年の世界選手権は、近代バスケ史の扉を開いた大会だったと言える。
その理由には様々な背景がある。出場国が16チームから24チームに拡大して世界各国のバスケスタイルが披露されたことに加え(2019年大会からは32チームに増加)、NBAがグローバル化したことで、各国のスター選手が集う品評会のような大会になったこと。2000年にショットクロックが30秒から24秒に変更したことで戦術が多様化し、そんな中でギリシャがアメリカを破った戦術として代表されるように、ピック&ロールが世界基準のセットプレーとして有効であることを、より深く広めるに至ったこと。また、スペーシングを生かして大型選手が3ポイントを放つなど、現代バスケにつながる戦術をヨーロッパの強国が示したのだ。そして、バスケットボール大国の復権をかけた臨んだアメリカが敗れたことなどが理由にあげられる。
2006年大会を席捲したのは、日本人がよく知るNBA選手で結成されたアメリカではなかった。
時は流れて2019年。日本は13年の月日を経て、ようやくワールドカップのコートに立つことができた。
2006年の日本はパナマから1勝を上げ、勝負をかけたニュージーランド戦で前半18点のリードから崩れて57-60で屈し、予選ラウンド突破はならなかった。だが、ジェリコ・パブリセヴィッチHCのもと、4年間かけてヨーロッパで高地トレーニングとゲーム経験を積み、強固なディフェンスを作り上げる強化方針は間違ってはいなかった。ただその後は、ホスト国として経験した世界基準も、それまでの積み重ねも継承することなく迷走し、アジアでも低迷してしまったのだ。二度とあってはならない教訓として、日本で世界選手権が開催されたことは忘れてはならない。改めて、『FIBA Classic Games』にピックアップされたゲームから学ぶことはあるのではないだろうか。
Spain 🇪🇸 v Argentina 🇦🇷 – Classic Full Games | FIBA Basketball World Cup 2006 URL:https://youtu.be/lcG0dsGJoGI
スペイン 75-74 アルゼンチン
ワールドカップ史に残る壮絶なゲーム。アルゼンチンは2004年にアテネ五輪で金メダルを獲得した優勝候補の一角。中心メンバーはマヌ・ジノビリ(元サンアントニオ・スパーズ)、ファブリシオ・オベルト(元サンアントニオ・スパーズ他)、カルロス・デルフィノ(元デトロイト・ピストンズ他)、アンドレス・ノシオニ(元シカゴ・ブルズ他)ら4名のNBA選手に、2007年からNBAでプレーすることになるルイス・スコラ(元ヒューストン・ロケッツ他)。そして、これらの強者を操る大会屈指のポイントガード、ペペ・サンチェス(元アトランタ・ホークス他)を擁して厚い選手層を誇っていた。
スペインは215センチのパウ・ガソル(元ロサンジェルス・レイカーズ他)とファン・カルロス・ナバーロ(元メンフィス・グリズリーズ)、ホセ・マヌエル・カルデロン(元デトロイト・ピストンズ他)ら『黄金世代』を中心とし、仕事人のホルヘ・ガルバホサ(元トロント・ラプターズ)、躍動感あふれるルディ・フェルナンデス(元ポートランド・トレイルブレイザーズ他)など脇を固める選手たちも役割に徹していた。どちらも、育成年代から個を鍛え、その精鋭たちが束になったときに発揮するチームプレーの威力で勝ち上がってきた。
スペインがフリースローの2投目を決め、1点リードで迎えた残り19秒、観客が最後の攻防を見守る中、アルゼンチンは思惑通りに逆転をかけてジノビリに託すが……。
結果的にアルゼンチンは1点差で敗北するのだが、最後にアルゼンチンがファウルを選択したことには疑問符がついた。だが、試合後にアルゼンチンのセルジオ・エルナンデスHCは「勝ちに行くために最後のオフェンス機会が欲しかった」と理由を明かしている。同点だったにもかかわらず、あえてファウルをしてリードされてまでも『ラストポゼッション』に賭ける選択は、当時の日本からすれば、見たこともやったこともない『奇妙』な作戦に映った。「僕らはいつもやっていること」というエルナンデスHCの言葉とともに、熱狂と衝撃のラストシーンに驚いた試合だった。
文=小永吉陽子
バスケットボールも
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