Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
昨年ハンガリー・デブレツェンで行われた「FIBA U19バスケットボールワールドカップ2023」の日本代表メンバーとして、日本男子史上初となる世界ベスト8入りを果たしたロロ・ルドルフが、全米大学体育協会1部(以降DI)のカリフォルニア州立大学フラトン校で大学バスケのキャリアをスタートさせた。
初戦こそ、試合最後の35.4秒出場しただけだったが、続く2戦目はベンチから25分出場してフリースローを4本すべて成功させ、大学初得点を記録。開幕3連敗スタートしたチームにあって「いいスタートを切りたい」とのデドリク・テイラーヘッドコーチの考えの下、4戦目からはスターターに抜擢され、5戦目では5アシストするなどでチームの今季初勝利に貢献。この結果、テイラーHCは同校の指導者として最多勝利記録を更新し、ルドフルの活躍が記念の試合に華を添えたと言えるだろう。
チーム練習が始まってから数カ月。その過程には、精神的な変化もあったという。チームが初勝利を挙げた11月18日のホーム開幕戦、対アイダホ州立大学後に話を聞いた。
文=山脇明子
――大学のシーズンが始まりましたが、ここまでを振り返っていただきますか?
ルドルフ ローラーコースターのように浮き沈みがありました。簡単ではありませんが、なんとかやっています。前から簡単ではないことはわかっていましたし、これからも簡単にはいかないと思います。高校でプレーし、(U19)日本代表も経験させてもらいましたが、まだまだ学ぶことは多いと思います。「学ぶこと」。それが僕の大学1年目を意味します。賞だとか、そういった個人的なことはどうでもいいこと。テイラーHCは今日の試合で、ボールをハンドルすることや相手のベストプレーヤーを守ることを僕に任せてくれました。そういったことを一生懸命にやっていきます。自分のスタッツや得点は全く気にしていません。今日も(シュートを打たず)無得点(5アシスト、2リバウンド1ブロックショット1スティール)でした。得点はいつでもできます。でも今は得点するためにコートに立っていません。自分に任されたプレーをするためにコートに立っています。
――得点すべきときに得点する準備はできているようですね。でも今は1年生の司令塔として、コーチに言われたことを全うし、もっとチームメートを知って生かしていく方を重んじているのですね。
ルドルフ そうです。コートに誰がいるか、コートにいる一人ひとりのことをしっかり把握しているか、彼らが得意なこと、どの位置でボールを持ちたがっているか、それぞれの特徴を知って、最大限に生かすことが大事なことです。でもそれができるには、時間や経験が必要です。
また相手チームは僕がパスをする選手だとわかると僕についてくることがあるので、そのときは自分が得点しなければなりません。そうなったときには、決められるようしっかり準備しておきたいと思っています。
メンタル的には、DIのバスケットボールは、どんなレベルであっても簡単なことではないということです。その中で、友達と出かけたいとかオフコートのことにとらわれることなく、勉強を怠らず、自分にとって最も大切なことにしっかり集中することです。その気持ちをぶらさず、一生懸命練習に取り組み、それをゲームで発揮しなくてはなりません。
――大学に入って変わったことはありますか?
ルドルフ 「僕ら」をより大切にできるようになったことです。シーズン前の僕はあまりいいチームメートではありませんでした。それを認めることに恐れていないとは言いません。でもそんな僕にみんなが「信じている」「認めている」と言ってくれました。僕も彼らのことを尊敬していましたし、お互いに思いは一致しました。それで少し大人になりました。
僕は自分の考え方を「得点したい」「あれをしたい」「自分がしたい」ということから「『僕ら』でやるためにどうすればいいか」ということに切り替えることに決めました。ジェイソン・ウェルズコーチは、いつも「お前は『僕ら』か?」と言います。それは、自分が良くなれば、君も良くなり、僕らみんなが良くなるという意味です。その言葉に心を打たれました。彼がそれを僕に言ったとき、「僕はもう子どもじゃないんだ」と気づき、自分の態度をポジティブでチームメートの励みになるものに変えていかなければならないと思いました。
でも自分の能力も見せていかなくてはなりませんし、矛盾の中でプレーするのは難しいことになるかもしれません。しかし、僕はまだ1年生ですし、一番大きな選手でなければ、一番力強い選手でもありません。時には、最も速い選手でもないかもしれませんが、マッチアップの相手に思い通りにプレーさせないつもりだし、僕とのマッチアップで得点させるつもりはありません。今日は相手のエースを抑えることができました。だから今は、自分がやるべきことをやり、どんどん積み上げていこうと思います。
――大学最初の試合は最後に少し出ただけでした。そういう経験は、初めてだったのではないですか?
ルドルフ これまで経験したことがありませんでしたし、とても屈辱的でした。僕は最後の40秒ぐらいで試合に入りました。でもウェルズコーチが僕を脇に引っ張り、「この時間は、とても大事な時間だ。しっかりプレーしろ」と言ってくれました。そして、(最初のプレーでインバウンズパスを受けた相手選手の手から)ボールを外へ叩きました。いずれにしても相手のボールでしたし、小さなことですが、最低でも何か貢献するようなことができました。そして、次の試合では25分のプレー時間を貰え、その後スターターを任してもらえました。
――同じポジションでもあるメンフィス・グリズリーズと2way契約を結んだ河村勇輝選手をどのように見ていますか?
ルドルフ 大好きです! 彼の活躍はうれしいです。U19日本代表でチームメートだった(ジェイコブス)晶(ハワイ大学)とは、仲がいいのでよく話しています。おそらく一番喋っているのが晶で、(小川)瑛次郎(白鷗大学)ともよく話します。勇輝選手の次に続くのは晶だと思いますが、よく話す連中は僕に「次に続くことができる!」とインスピレーションを与えてくれます。八村塁選手(ロサンゼルス・レイカーズ)と渡邊雄太選手(元グリズリーズ、現千葉ジャッツ)のNBAでの活躍は勇輝選手のNBAへの道を開き、勇輝選手からまた次に続いていきます。アメリカや世界の舞台で日本が知られるようになるのは素晴らしいことです。