2024.02.04
2021-22シーズンをBリーグのアースフレンズ東京Zでプレーした山ノ内勇登が、全米大学体育協会(NCAA)1部のラマー大学から同1部(以降DⅠ)のポートランド大学への転校を決め、2年生の今シーズンから新天地でプレーする。ラマー大の1年生だった昨シーズンは、出場した28試合中24試合でスターターを務め、1試合平均21.4分の出場で6.9得点、7.1リバウンド。 “ダブルダブル”を6度達成するなど活躍した。
新たな大学も決まり、6月に行われた味の素ナショナルトレーニングセンターでのディベロップメントキャンプ(将来的な男子日本代表チームの強化を目的に行うキャンプ)に向けて、ロサンゼルス近郊で練習していた山ノ内にDⅠでの1年目、転校を決意したことやポートランド大に決めた理由、また自身が描く未来図について聞いた。
インタビュー・文=山脇明子
――アンダーカテゴリー時から日本代表に名を連ねていますが、バスケットボールを始めたのはいつ頃ですか。
山ノ内 7歳の時です。父に勧められたのがきかっけです。僕は13歳まで日本にいて、その後ハワイに引っ越し、15歳の時にロサンゼルスに来たのですが、真剣にバスケットをするようになったのは13~14歳の時です。とても背が高かったからで、8年生(日本の中学2年生)の夏には身長が190センチから206センチに伸びました。父は昔フットボールをしていて、身長は190.5センチです。
――ひと夏で16センチぐらい伸びたのですか?
山ノ内 あの時は動けなくなりました。練習すると体中が凄く痛かった。背中も痛かったですし、ゆっくりしか動けなくて。あまりにも急に成長したので体がバラバラという感じでした。
――バスケットボール選手として恵まれた体型となり、上達を目指して練習を続け、アンダーカテゴリーでの日本代表やBリーグでの経験を経てDⅠの大学にたどり着きました。その1年目をどのように振り返りますか?
山ノ内 まあまあでした。でも1年目は学びのシーズン。次のシーズンはもっと良くなりたいと思っています。今(オフ期間中に)外角ショットの練習をしていますし、インサイドの練習としては、ジャンプ力を上げる練習をしています。もっと体を強くするための練習も重ねています。これまでよりもずっといい選手になって次のシーズンをプレーするつもりです。
――とはいえ、ラマー大での1年生のシーズンも素晴らしかったです。なぜ1年目からあれだけ活躍できたと思いますか?
山ノ内 リバウンドはよく取れたと思います。自分のポジションのプレーをしっかり行い、ディフェンスをし、コーチに言われたことはしっかりとやるようにしました。でももっといいプレーができたと思います。最初の数試合はまだどうやってプレーすべきかを学んでいて、慣れようとしていました。そのあと段々自分の力が発揮できるようになりました。シーズン前半からもっといいプレーができれば良かったと思います。
――特にどういう面をもっとうまくできたら良かったと思いますか?
山ノ内 スピードに慣れることです。もっと早く動かなくてはなりません。あとは、もっと強くなること、そして焦ってショットを打たないことです。
――ラマー大は、進学を決めた時はシーズン2勝のチームで、あなたも加わった昨シーズンは9勝まで伸ばしました。
山ノ内 2勝だったシーズンは(アルビン・ブルックス)ヘッドコーチ(以降HC)にとってはじめてのシーズンだったんです。だから(2勝したチームは)彼がリクルートした選手たちではなかったんです。僕が1年生の昨シーズンからが、コーチが実際にリクルートした選手が加わったチームでした。だから若い選手にはいい選手がたくさんいます。ただみんなまだ大学で経験もありませんし、大学でやるのに十分に成熟した選手ではなかったので、あまり勝てませんでした。
――1年生からスターターに定着していたにもかかわらず、転校を決めたのはなぜですか?
山ノ内 もっといい環境の中でプレーしたいと思ったからです。施設の面でもそうですし、あと食事の面もそうです。ラマー大は、そういうのがあまりよくありませんでした。でもポートランド大はそういったことが充実しています。僕自身も学校を訪問しましたが、いろいろ設備が整っています。NBAのポートランド・トレイルブレイザーズが(今シーズンから)持つGリーグチームもポートランド大で練習や試合をするそうです。新しい施設もまたできると聞きました。だから楽しみです。
――転校する意思があることを示すトランスファーポータルに登録したあと、他の大学からも連絡はありましたか?
山ノ内 たくさんありました。(U19アメリカ代表のアシスタントコーチ、リオン・ライスがヘッドコーチを務める)ボイズ・ステイト大学、(ハイ・メジャーのサウスイースト・カンファレンスに属する)バンダービルト大学、パシフィック大学、ペパーダイン大学などいろいろありました。
――その中でポートランド大に決めたわけですが、同大のシャンテイ・リガンズHCとはどんな話をしましたか?
山ノ内 彼が僕をリクルートしてくれたポートランド大の主なコーチでした。普通リクルートしたり、連絡を取ってきたりするのはアシスタントコーチですが、ポートランド大はリガンズHCから直接連絡が来ました。ヘッドコーチがリクルートの時点で電話をくれたのは、ポートランド大だけでした。僕のことを本当に必要としてくれていると感じました。どんなプレーをするか、どういう計画をたてるか、それらを決めるのはヘッドコーチの彼なので、彼が僕に話してくれたことも本当のことだとわかりましたし、とてもうれしかったです。
――ポートランド大といえば、ウエストコースト・カンファレンスに属するチームであり、八村塁選手がかつてプレーした強豪ゴンザガ大学も所属しています。
山ノ内 ゴンザガ大とプレーできることにワクワクしています。でもポートランド大もいいチームだと思いますし、勝てるかもしれません。
――先ほど、連絡を貰ったと言っていたペパーダイン大もパシフィック大も同じウエストコースト・カンファレンスですね。このカンファレンスについてはどのように思いますか?
山ノ内 とてもいいカンファレンスだと思います。塁もそうですし、多くのNBA選手を輩出したカンファレンスです。だからこのカンファレンスでプレーすることで、僕に何ができるかを見せるチャンスがあると思います。僕の次の目標であるNBAにつなげたいと思います。
――マイアミ・ヒートのエリック・スポールストラHCもポートランド大出身ですよね。
山ノ内 彼は僕等のコーチにヒートが “ヒート・カルチャー”を育むために何をしているか、ワークアウト・プランを伝授してくれているらしくて、この夏、僕らはヒートがやっていることをやるそうです。だからとても楽しみです。
――来シーズンに向けて、どの部分を伸ばしたいですか?
山ノ内 外角ショット、ドリブルからのシュート、そしてドリブルです。
――あなたの口から「塁」と出たので八村選手のことを聞きたいのですが、あなたにとって八村選手はどのような存在ですか?目標にしている選手なのでしょうか?
山ノ内 僕は、彼よりももっといい選手になりたいです。彼は素晴らしい選手です。でも彼を超えられるようになりたいです。
――今シーズン彼はレイカーズでプレーしましたが、あなたは中学の途中からロサンゼルスに住んでいたのにレイカーズファンではないのですよね(笑)?
山ノ内 ノー。レイカーズファンではありません。
――どこのファンなのですか?
山ノ内 ペリカンズです。僕の父がニューオーリーンズ出身なので、僕はペリカンズのニックネームがホーネッツだった時からずっとペリカンズを見てきました。
――高校を卒業したあとBリーグのアースフレンズ東京Zで1年プレーしましたが、その時の経験について話して貰えますか?
山ノ内 とてもいい経験でした。僕よりも年上の選手たちから多くを学びました。大変なこともありましたが、最高の経験学習ができました。僕には、あの1年の経験のようなことが必要でした。1年間で選手として進歩できました。コーチもとても厳しくて、そのお陰で成長できました。
――メンタル面でもそうですか?
山ノ内 メンタル面では本当に多くを得ることができました。フィジカル的なことよりも、よりメンタル面を学んだと思います。それらの経験は、今の僕のバスケットの助けとなっています。
――U19の日本代表でともにプレーした仲間たちが、あちらこちらで活躍しています。あの経験はいかがでしたか?
山ノ内 とてもいい経験でしたが、僕はいい調子で臨むことができなくて、戦う準備が全くできていませんでした。その前に足を骨折していて2カ月戦列を離れており、2週間で準備をしなければなりませんでした。そのために万全な状態でできなかったんです。(インタビュー時で6月13日から始まる)ディベロップメントキャンプでは、しっかり準備して臨むことができます。
――まだU19の時にインスタライブをし、その時進路が決まっていなかったあなたにケイン・ロバーツ選手がBリーグを勧めるコメントをしていましたね。ロバーツ選手はそのあとあなたからDMを貰ったと言っていました。
山ノ内 彼は僕にBリーグにトライするべきだと言ってくれました。彼にとってBリーグで1年やったことは、その後のバスケの大きな助けになったからだと言っていました。
――大学に行く前にBリーグでプレーしたことは、正しい決断だったと今でも思いますか?
山ノ内 最高の決断でした。
――将来、どのような選手になりたいですか?
山ノ内 オフェンスもディフェンスもすべてができる選手になりたいですし、今はそのために練習をしています。
――そうなるまであと何年かかると思いますか?
山ノ内 できれば2年かそれ以下でそうなりたいです。今シーズンからはいいカンファレンスでプレーできますし、NBAに近づいていると感じています。コーチもそう言ってくれています。もし良いシーズンを送ることができたら、(富永)啓生がやったように、ドラフトをテストしてみたいと思っています。
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