2023.07.20
2021年に開催された東京オリンピックでは3x3の日本代表に選ばれた富永啓生だったが、残念ながら新型コロナウイルス感染拡大の影響でオリンピック自体が無観客での開催に。現在、NCAAディビジョン1のネブラスカ大学に所属する富永にとって、日本のファンの前でプレーするのは得点王とベスト5に輝いた2018年のウインターカップ以来。それだけに富永は今大会を心待ちにしていたという。
7月8日、「バスケットボール男子日本代表国際強化試合2023 静岡大会」が浜松アリーナで開催され、男子日本代表はチャイニーズ・タイペイ代表に108-86で勝利。この試合で4本の3ポイントシュート決めた富永が浜松アリーナに詰めかけたファンの度肝を抜いたと言っていいだろう。
富永は第1クォーター残り5分5秒、フリースローを決めた須田侑太郎(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)に替わってコートイン。すると、約1分後、左コーナーで馬場雄大からのパスを受けると、慌ててクローズアウトしてきたディフェンスを1ドリブルでかわしてスペースを作る。そして、この試合で初めて放ったシュートがネットを揺らした。
どよめく会場を知り目に富永の勢いは止まらない。続くオフェンスの場面、川真田紘也(滋賀レイクス)がタップしてつないだボールが馬場に渡る。すると、今度は右コーナーにポジションを取っていた富永に馬場からパスが入った。富永はここでも迷うことなくシュートを放ち、3ポイントシュートを決める。
さらに、まだ続く。今度はディフェンスリバウンドを獲得した富永がそのままボールプッシュ。相手ディフェンスはハーフラインを過ぎたところで富永にファウル覚悟で止めにかかった。そこでバランスを崩した富永だったが、なんとか放ったユートがまたも成功。どよめきはさらに大きくなった。
富永はものの4分の間に、詰めかけたファンの心を鷲掴みにしてしまったのだ。
態勢を崩して決めた3ポイントシュートについて聞かれた富永は、「ファウルをもらうイメージでしたが笛が鳴らず。ただ、前が空いていたので打つしかなかった」とコメント。「打った瞬間に入ったと思った」と付け加え、富永のアイドルであるステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)級のパフォーマンスを解説してくれた。
昨年の7月にオーストラリアのメルボルンで開催されたワールドカップ予選やインドネシアのジャカルタで行われたアジアカップ以来1年ぶりに、日本代表でプレーした富永に対し、ホーバスHCは「1年ぶりの合宿だったけど、うちのバスケを忘れていなかった。久しぶりの代表戦でも迷いはなかった」と評価。「チャンスがあればどんどんシュートを打ってほしい」と、富永のパフォーマンスを手放しで喜んだ。
とはいえ、富永とてワールドカップに出場できる12名を決めるサバイバルレースに身を置く選手の一人だ。しかも、シューティングガードのポジションは最も激戦区と言えるだろう。
そのような状況であっても、「自分の役割をこなし、武器をアピールするだけ」と富永は自信を見せる。一方で、「ディフェンスではもう少し失点を抑えることができれば、自分たちの持ち味であるファストブレイクを出すことにもつながります。相手に3ポイントシュートを少し決められすぎたので、そこは修正していきたいです」と反省の弁を忘れなかった。
チャイニーズ・タイペイとの第2戦ではどのようなシュートを見せてくれるか。“コートに入れば何かが起こる”を期待できる選手だけに、次戦でも目が離せないはずだ。
取材・文=入江美紀雄
写真=伊藤大允
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