2018.02.15
「B.LEAGUE TOKAI HOKURIKU EARLY CUP 2017」でアップセットを演じてから3カ月弱。11月25日に行われた「第93回天皇杯・全日本バスケットボール選手権大会」3次ラウンドで再び顔を合わせた注目の一戦は、92-72で新潟アルビレックスBBの貫録勝ち。信州ブレイブウォリアーズはここで姿を消すこととなった。
アーリーカップでB1チームから2勝を奪い、ファンを驚かせた信州。B2リーグでは中地区の混戦を抜けだせず、8勝9敗と黒星が先行してはいるものの、わずか14勝で最下位に沈んだ昨シーズンと比べて数段レベルアップしたことは確かだ。チームは確実に自信をつけ、今回もアーリーカップの再現を狙っていたと小野寺龍太郎ヘッドコーチは言う。
「2つ勝つつもりで来た。負けてしまったことは残念で、準備が足りなかったという思いもある。ただ、この時期にB1中地区2位のチームにチャレンジできたのは大きな経験だと思う。自分たちにはまだまだ足りない部分があるなと感じた」
格上が相手でも臆することなく本気で勝ちにいっていたのは小野寺HCだけではない。新潟のOBでもある寒河江功一アソシエイトコーチにとっては、アップセットが最大のモチベーションだった。
「アーリーカップの時もそうですが、対戦が決まった時は興奮しましたよ。自分たちのほうが弱いとは思っていない。ここまでやってきたことを突き通せれば十分勝てると思っていた」
そもそも信州が昨シーズンの低迷から脱皮したのは、寒河江ACの存在によるところが大きい。もちろん、琉球ゴールデンキングスで4度のbjリーグ優勝を経験したアンソニー・マクヘンリーを獲得したことが躍進の要因であることは間違いないが、昨シーズンアシスタントコーチを置かずにすべてを1人でこなしていた小野寺HCにとっては、寒河江ACの加入が最大の補強だったと言っても過言ではない。
「昨シーズンは土日の試合の後、月曜になってやっと次の相手のビデオを見始めるという状況だった。それが、今は寒河江コーチが日曜の夜にはビデオを用意してくれている。試合中も、僕が的確な判断をできるようにいい言葉をもらっていると感じる」
試合を見ていても、随所で寒河江ACが選手に声を掛け、アドバイスを送る姿が目立つ。大局的に試合の流れを見る必要がある小野寺HCを、技術面などの細かい部分でサポートしているのだ。
寒河江ACは、昨シーズンまで11シーズンにわたって名古屋ダイヤモンドドルフィンズでコーチを務めていた。その経験を今、寒河江ACは信州に還元しようとしている。
「強いチームが何をやっているかということを、選手たちがもっと知る必要がある。チームとしてそれをスタンダードにしていけるように今取り組んでいるところ。僕も強いチームを知らないし、僕にないアイディアを出してくれて勉強になっている。寒河江コーチから学ぶことは多い」(小野寺HC)
「このチームはまだ伸びしろがある。僕はこのチームをB1に上げることしか考えていないし、本当はこういうことを言ってはいけないんですが、結果的にB1に上がれなかったとしてもB1のチームから声が掛かる選手を出すくらいのことをしたい。彼らは今まで高いステージを経験してきていないが、僕はたかだか国内とはいえ上のレベルを見てきているので、選手にはいつも『まだまだ物足りない』と言っているんです」(寒河江AC)
チーム変革に意欲を見せる小野寺HCと寒河江AC。リーグ戦はまだ43試合も残っている。その43試合を消化した時、チームがどこまで変貌を遂げているかは2人の手腕に懸かっている。アーリーカップで示したその可能性を証明するのは、これからだ。
文=吉川哲彦
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