2019.01.29

【連載】篠山竜青の「おかげ様です」第8回 富士通フロンティアーズの中村輝晃クラークと異競技対談

互いに学生時代、日本大学文理学部で学んだ篠山竜青と中村輝晃クラーク(写真右)[写真]=山口剛生
バスケットボールキング編集部。これまで主に中学、高校、女子日本代表をカバーしてきた。また、どういうわけかあまり人が行かない土地での取材も多く、氷点下10度を下回るモンゴルを経験。Twitterのアカウントは @m_irie3

篠山竜青川崎ブレイブサンダース)と同じ日本大学の同級生ということもあり、以前から気になる存在だったというアメリカンフットボールエックスリーグ、富士通フロンティアーズの中村輝晃クラーク選手。今回、本人たっての希望で対談が実現しました。フロンティアーズのワイドレシーバーとしてライスボウル(日本選手権)3連覇に貢献した中村選手とのお話は、学生時代から今に至るまで、初めて会ったと思えないほどの盛り上がったものになりました。

インタビュー・文=入江美紀雄
写真=山口剛生

プロとして考えること、アマチュアとして思うこと

中村選手との対談を楽しみにしていた篠山選手 [写真]=山口剛生

――今回は篠山選手のたっての希望で対談が実現しました。でもお二人は同じ大学の同じ学部、しかも年齢も同じですよね? それでも面識はなかったのですか?
篠山 直接はありませんでした。同じ学科でも、クラスがいくつか別れていて、授業もあんまり被ってなかったようです。
中村 バスケ部とアメフト部では寮や練習場所も違ったので、交流することもあまりなかったと思います。たまに八幡山にあるトレーニング施設をアメフト部が借りにいきましたが、なんかよそ者扱いだったし(笑)。
篠山 こちらから見ればカッコよかったですよ。みんなメッチャ鍛えられてた体をしてたし、ムッチャ短い短パンにピッチピチのTシャツ着てたし。
中村 それ俺じゃないな(笑)。
篠山 アメフトのことはあまり知らなかったですが、同じクラスにアメフト部の友達がいて、100を超えるセットプレーを覚えなきゃいけないとか、頭脳スポーツだなというのが第一印象です。
中村 僕は同じポジションで大学からアメフトを始めたやつがいて。そいつは鳥取でバスケをしていたんですけど、「バスケ部はめちゃくちゃ強くなるぞ」って言っていたのを覚えています。

――篠山選手はお母さんがバスケの指導者で、お兄さんもお姉さんもバスケをしていたのでバスケを始めるのは自然に思えるのですが、中村選手におうかがいしたいのですが、なぜアメフトをやろうと思ったのですが?
中村 僕の場合、両親がフランスで仕事をしていたので、パリで生まれました。フランスには11年住んでいましたが、父が亡くなったのをきっかけに日本に帰ってきて。でも自宅では話をしていましたが日本語が難しくて、中学では勉強に苦労しました。高校進学の時、それから始められるスポーツがないかなってことで、アメフトを勧めてもらったのがきっかけですね。
篠山 え? お父さんも日本人?? ハーフじゃないの?
中村 もちろん両方日本人(笑)。
篠山 今回2ショットの撮影は控えてくださいね。引き立て役になってしまう(笑)。

取材を前に篠山選手のことをネットで調べてきたという中村選手 [写真]=山口剛生

――お二人とも大学を卒業後、企業チームで競技を続けられました。篠山選手の場合、今ではプロになりましたが、中村選手はアマチュアとしてプレーされています。
中村 企業チームなので、選手たちは富士通グループで仕事をしながら、富士通フロンティアーズでプレーしています。シーズン中でも勤務体系は水土日が練習と試合、その他の月火木金は終日仕事です。
篠山 東芝時代より大変だ。僕らは午前勤務で午後練習でした。
中村 でも今は24時間、バスケのためだけに使える。少し憧れる部分はあります。専念できたらって僕も考えたことあるんですよね。もっとトレーニングできれば、もっとうまくなるんじゃないかと思うこともありますが、ただリスクもありますよね。僕たちは引退しても会社に残ることもできる。しかし、プロになればそうはできません。例えばケガをしてプレーできないとなれば、自分どうするんだろうと思うこともあります。ただそれがハングリーにさせる一つの要因だと思うので、アメフトのプロリーグが日本にあれば、僕もその道を選んだかもしれません。
篠山 確かにプロになって生活は全く変わりましたよ。だけど、僕は手放しでプロ化を喜んだかというと、実はそうではなくて。大学を卒業した当時のJBL(日本バスケットボールリーグ)はプロアマ混合で、そこで僕は社員を選びました。彼が言ったようにリスクのところはすごく恐れていたし、バスケをやっていたことで東芝という大企業に就職できたというのは、それこそ大成功だと思っていたわけです。それが27歳の時にプロ化が決まって。プロになるしかバスケを続ける手段がなかったので、やっぱりプロになりました。当時は結婚もしてたので、かなり悩んでいたのも事実です。いざ、こうやって社員選手を目の前にして思い返すのは、メリットとデメリットがあって、どっちが絶対正しいっていう答えは出ないなと。ただ、両方経験しているというのは、いい経験をさせてもらっているのかなとは思います。
中村 実はモチベーションの部分ではちょっと悩んでいます。僕らは5年間で4度日本一になっていますが、勝って得られるのはお金ではなく名誉。でもそれを喜んでくれる人たちがいればこそ頑張ることもできました。でも、勝ち続けるとやっぱり周りもそれに慣れてしまう。それこそオリンピックやワールドカップがあれば違うのでしょうが、ご存じのようにアメフトはオリンピック競技ではない。今年、世界選手権が行われる予定だったのですが突然延期になってしまって。実はその4年前のワールドカップの時は代表落ちしていたんですね。だから年齢的にも今回が最後だと思って、自分としてもコンディション調整をしっかりしていた中での延期でした。
篠山 チームは何人ぐらいいるの?
中村 選手は75人。登録枠は65人なので、10名カットされるけど。それにスタッフを入れれば100人ぐらいかな。
篠山 自分はキャプテンをしているけど12、3人でもきついのに。そんなにいたら大変だ。
中村 自分はキャプテンはやったことがないけど、いっちょ前に文句だけは言うんだよね。でもやっぱりやれる自信はないな。代表でもキャプテンなんでしょ?
篠山 チームではもう5シーズンぐらいやってる。しかし、100人をまとめるとなると、ストレスで禿げそう(笑)。

スポーツの街、川崎をもっと盛り上げたい

――ブレイブサンダースもフロンティアーズも川崎に本拠地があります。川崎と言えばJリーグの川崎フロンターレをはじめとして、スポーツのチームが多い印象があります。
篠山 富士通なら女子のバスケットボールもあるし、バレーボールでは女子のNECがとても強いですよ。
中村 アメフトはBリーグと比べれば露出も少ないし、できることと言えば優勝することで地域の活性化につなげられればと思っています。それに川崎市からもバックアップをいただいています。市長さんが試合や祝勝会に出向いてくれますし、その点ではとても感謝しています。でも、Bリーグに比べれば、やはり市民の方からの認知度は低いと思います。
篠山 とはいえ、Jリーグやプロ野球に比べれば僕らだってまだまだ。影響力はそちらの方がかなり大きいと思います。バスケの認知をもっともっと広めたいっていう思いもあるし、川崎をスポーツの街として一緒になって全部引き上げられれば一石二鳥じゃないですけど、何か色々できるのかなと思っていて。こんな同級生もいるので、対談してもらってブレイブサンダースのファンにフロンティアーズを知ってもらって。逆にフロンティアーズのファンにバスケを観に行こうかなって少しでも思ってもらえるようになれば。これにもっと女子のバスケやバレーを巻き込めたら面白いと思うんですよ。そうすれば、子どもたちの選択肢も広がるしね。だからもっともっと普及には努めたいと思います。
中村 フロンティアーズにはフロンターレさんがとても協力してくれたりしてて。応援にも来てくれました。今回こうしてバスケとつながることができたので、これをどんどん広めていきたいですね。
篠山 うん、そうだね。

――先程アメフトでは100ぐらいのセットプレーがあるという話でしたが…。
中村 同じプレーでも体系が違うものもあるので、ベースで言うと15ぐらいですね。
篠山 ベースで15かよ(笑)。
中村 その15がいろいろと派生していくわけ。それぞれに×3とか、×4となっていくのですが、ベースがわかっていればうまくプレーできるようになっています。反対にバスケは自由に動ける分大変そう。
篠山 確かに。
中村 でも最初に描いた作戦どおりにはいかないことがほとんどです。
篠山 その中で相手のチームの戦術にアジャストするわけですが、反対に教科書どおりでやろうとすると負けてしたりします。相手もわかっているので、今まではこう動いていたものを逆の動きをしたりして、それに合わせるようなプレーがないと厳しいですね。
中村 アメフトの場合、80~90パーセントぐらいは描いたどおりのプレーをします。しかし、残りの部分でアドリブが効く選手がやっぱりすごい。それまでと違う動きがパッとできて、周りもそれに合わせることができればアメフトでも負けません。
篠山 バスケと同じだね。
中村 アドリブがメインではないけど、本来の絵(トレースされた戦術)を守りつつ、自分のアドリブをちょっと入れられる選手がすごく良かったりするね。

――改めて初めて会った感想を最後に教えてもらえますか?
篠山 もう印象どおりの好青年でした。
中村 (笑)。
篠山 悔しいです。
中村 でもSNSを見ても人気が抜群で、うらやましいですよ。
篠山 まずはお互いの試合観戦から始めましょう。あっ、でもアメフトはシーズンが終わってしまっているので、ぜひとどろきアリーナに来てください。ただうちのスタッフが放っておかないだろうな。スポットライトを当てて、ビジョンにバッチリ映し出されると思うけどね(笑)。
中村 今は試合を見に行けるのでぜひ。
篠山 その前にLINEの交換をしましょう。
中村 ぜひぜひ(笑)。

すでに意気投合し、現役選手ならではの悩みも語り合った [写真]=山口剛生

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