2025.08.03

「自分がやらないといけない」…仲間の無念を胸に、地元・岡山で最後の夏に挑んだ岐阜女子・三宅香菜

ウインターカップでのリベンジを誓った岐阜女子の三宅香菜 [写真]=田島早苗
フリーライター

「令和7年度全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会(インターハイ)」の女子準決勝、岐阜女子高校(岐阜県)は日本航空高等学校北海道(北海道)に敗れ、2年連続の決勝進出はならなかった。

「点を取り切れなかったり、少しイージーなミスがあったりしたので、そこを含めてまだ勝ち切る力がなかったと思います」と、試合を振り返った安江満夫コーチ。さらにこう続けた。

「東海大会で小松美羽がケガをしていなかったことが…。でも、そういう状況であってもほかの選手があきらめず、4つ(ベスト4)に残れたことは、選手を本当に誇りに思います。よくやってくれたと思います」

 昨年大会で準優勝の岐阜女子は今年、小松、三宅香菜、杉浦結菜(いずれも3年)と、昨年から主力を担っていた選手たちが残り、新チーム発足時から全国大会での優勝候補の一つに挙げられていた。しかし、6月の東海大会決勝戦終盤に小松が負傷。それによりインターハイは不出場となり、チームも約1カ月という期間で小松のいない新たな布陣でのチーム作りを余儀なくされた。

「過ぎたことを言っても仕方ないので、1年生を起用するなど、いろいろと手を変え品を変え、チームをもう一回立て直そうとやってきましたが、まだ立て直しきれない状態でインターハイに入ったと思います。下級生は(試合で)計算できないところが当然出てくる。でもその中で下級生たちがこういう場所で悔しい思いをしてくれたことは、必ずチームの財産になると思っています」と、安江コーチは言葉を残した。

安江コーチは奮闘した選手たちにねぎらいの言葉を残した [写真]=田島早苗

 絶対的司令塔としてゲームを組み立て、自らの得点力も持ち合わせる小松は、ディフェンスにも定評のある選手。チームにとっては大きな存在だったからこそ彼女の戦線離脱は計り知れない痛手であった。それでも前を向き、わずかな期間でチームを作り直して挑んだインターハイでベスト4。そこにチームとしての価値があるのではないか。

「そのとおりです。もうそれで十分です」と、指揮官は静かに言葉を紡いだ。そして「何より小松本人が一番悔しい思いをしているはず。その思いをみんなが共有して、よくやってくれたと思います」と選手たちをねぎらった。

 その小松の無念を胸に、さらには自身にとっても特別な大会となったのが三宅だ。

 三宅は今年のインターハイ開催地である岡山県出身。岡山市立竜操中学校時代にはポイントゲッターとして全国中学校大会で3位に入り、活躍を見せた。高校進学に際しては「日本一になりたい」と、岐阜女子の門を叩いた。

 昨年からポイントゲッターとしてチームの勝利に貢献し、昨年大会の決勝戦でも京都精華学園高校(京都府)を相手に20得点を挙げた三宅は、今大会でもエースとして要所で得点を重ね、幾度となくチームを救った。ディフェンスでも大きな選手を相手に体を張るなど献身的なプレーを見せた。

 それでも準決勝敗退に「私は昨年から試合に出させてもらっているので、勝負どころは絶対に自分がやらないといけないし、先輩方にも日本一になったよ、成長したよと報告したかったのですが、それができなくてまだまだ力が足りないなって思います」と、肩を落とした。

「(小松が)インターハイに出られないということが決まったときから“自分がやらないと”という気持ちは強く持っていました。練習中から勝ちにこだわる姿勢を全員に声を掛けて共有してきました。今までは小松が助けてくれていたので、その穴は大きいですが、声掛けでもプレーでも絶対に自分がやってやるんだという気持ちでした」という三宅。地元の岡山で迎えた高校最後のインターハイについては、「最後は勝たないと意味がないのですが、今大会は岡山開催ということもあって、たくさんの人が応援してくれたので、その応援を力に変えてプレーできたと思います」と、心境を語った。

 準決勝後、応援席の小松と三宅、杉浦らが互いに涙を流しながら会話するシーンがあった。

「自分はもう“ごめん”としか言えなくて…。でも、小松は“よく頑張ってくれたよ、ありがとう”って声を掛けてくれて。絶対次は日本一取ろうねって話をしました」

 こう語ると堪えていた三宅の目は涙でにじんだ。

 2017年以来となる夏制覇は達成できなかった。「留学生の選手が試合に出る時間が少ない中で、しっかり5人が足を動かしてディフェンスできたことは今日の試合でも感じられたので、そこは自信になります」(三宅)と、収穫も多かった。

「ここで止まらずにもっと進化していかないと。冬はいろいろなチームが強くなってくるので、自分たちはディフェンスのチーム。もっとディフェンスを強化していきたいです」

 岐阜女子をけん引するエースは、ウインターカップでのリベンジを誓った。

文・写真=田島早苗

BASKETBALLKING VIDEO