2018.12.17

藤井祐眞(藤枝明誠卒)が語るウインターカップ「楽しくプレーすることを学んだ」

川崎の藤井が高校時代を回顧
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12月23日から29日の期間、武蔵野の森総合スポーツプラザにおいて、「SoftBankウインターカップ2018 平成30年度 第71回全国高等学校バスケットボール選手権大会」が開催される。全国高等学校総合体育大会(インターハイ)、国民体育大会(国体)、そしてウインターカップを高校バスケ界の3大タイトルとしているが、ウインターカップは最も注目度が高い大会でもある。

今回は冬の大舞台を経験し、現在トップリーグで活躍する選手たちを直撃した。第1回は、藤枝明誠高校在籍時に3年連続で出場した藤井祐眞川崎ブレイブサンダース)。1試合最多得点記録更新で歴史に名を刻んだ男の高校時代に迫った。

インタビュー=酒井伸
写真=Bリーグ

80点に届かなかった悔しさが強い

――地元の島根県を離れて静岡県の藤枝明誠高校に進学しました。
藤井 高校はどこでもいいかなと感じている中、3年の全中が終わったあとに藤枝明誠から声を掛けてもらいました。他の高校にも練習参加させてもらいましたが、雰囲気が良くて楽しくて、「ぜひ来てくれ」と熱心に誘ってくれた藤枝明誠に決めました。

――入部してから大変だったことはありますか?
藤井 学校が厳しく、かなり勉強をさせられました(苦笑)。あとは朝練が5時30分くらいから行われていてコートを走るんです。テストの成績によって走る周が変わったので、テストをがんばらないと朝からかなり走ることになって、入学当初はチームで1番、2番目に多い体育館40周くらい。今の走力に活きているかはわかりませんが……。走り終わった選手からシューティングやゲーム形式の練習をやっていました。

――平日の練習ではどのようなことをやっていましたか?
藤井 僕たちはオフェンス主体のチームだったので、速攻や1対1の練習がとても多かったですし、試合形式もよくやっていました。チーム練習時間はそこまで長くなく、アップ、練習、ゲームのような。

――ウインターカップでは1年次から先発で出場しました。
藤井 入学してから試合に絡んでいましたが、東海大会後くらいからスタメンで試合に出場させてもらいました。ウインターカップでは2回戦(vs県立大分舞鶴)に勝って、3回戦で福岡第一に負けましたね。福岡第一を倒そうという意気込みでプレーしていて、前半はいい勝負でしたが最後に力の差を見せられました。

――初めての東京体育館で緊張しませんでしたか?
藤井 会場には多くのお客さんが入っていて、緊張よりも楽しかった思い出があります。

――2年次のウインターカップは1回戦で106得点、2回戦で162得点と攻撃的なバスケを展開し、自身は2回戦で元日本代表の北原憲彦氏が持っていた大会史上最多得点記録の58得点を上回る79得点を記録しました。
藤井 100点取られても101点取って試合に勝つようなオフェンス主体のスタイルで、とにかく走って得点を取るというバスケでした。やっぱり得点を取るのは楽しいですし、僕自身は調子の波もありましたが、僕がダメでも一個上の藤井佑亮さんが得点を取って、藤井さんがダメな時は自分が得点を取るような。1回戦の自分はめちゃくちゃ調子が悪くて16点で、藤井さんが39点取っていました。記録のことは全然知らず、試合が終わってから知りました。行きのバスで西塚(建雄/現藤蔭高校)先生に呼ばれて、「80点狙ってこい」と。最初は冗談で、何言っているんだろう、ふざけているのかなと思ったら本気だったんです。試合が始まったら「本気で狙え」、各クォーターが終わったあとも「足りないぞ」と言われていました。

――当日は調子が良かったんですか?
藤井 前からプレスを掛けて、レイアップを打つパターンが多かったので、調子というよりも勢いというか。ガンガンアタックして、シュートを狙っていましたね。

――試合が終わったあとの反応は?
藤井 試合直後は取材を受けましたが、その後あまり騒がれることはなく。先生からは「(80点に)1点足らなかったぞ。それじゃ抜かれるぞ」と言われて、「うわー、80点に届かなかった」という悔しさが強かったです。

――3回戦ではまたも福岡第一に敗れましたが、20得点を記録するなど手応えもあったと思います。
藤井 通用する部分と通用しない部分があって。チームメートに中国人の留学生がいましたが、相手にはセネガル人の留学生がいて、高さや強さが全然違いました。普通にレイアップを打ってもブロックされたり、止められたりして。もっともっと練習してバリエーションを増やさないと、得点を取れないと感じました。

あの雰囲気を味わえたことは大きい

3年次は準々決勝敗退で「試合後は今までで一番悔しかった」

――3年次はインターハイで3位入賞を果たしています。
藤井 どの大会でも優勝を掲げていて、最後のインハイなので気持ちも入っていました。2回戦で関東1位の京北を倒して弾みをつけ、大濠(福岡大学附属大濠)にも勝ちましたが、準決勝で福岡第一に負けてしまいました。また、静岡県選抜の一員として参加したインハイ後の国体は福岡、宮城を破ったことで自信になって。決勝で京都に負けてしまいましたが、あと一歩で優勝できるという自信をつかむことができましたし、いい形でウインターカップに臨むことができました。

――ウインターカップの初戦(2回戦)はベンチスタートでした。
藤井 実は大会前に腰を痛めていて、思うように動けない状態でした。整骨院に通いながら練習できない日々が続いて、大会開幕の1週間切ったタイミングで復帰しました。痛みはなかったのですが、違和感が残っていて万全ではなかったです。

――3回戦から先発に復帰し、準々決勝で福大大濠に敗れました。
藤井 3回戦で洛南と大濠が対戦していて、僕たちは国体で京都に負けたので洛南を倒したい気持ちが強かったです。結果的に大濠が勝ち進んできましたが、インハイで勝っているからやりやすいと思っていました。第2クォーター途中に20点差くらいまで広げたことで勝てると思ってしまって、そこから一気に追いつかれ、逆転されてしまいました。

――初のメインコートで緊張もあったんでしょうか?
藤井 1年次からウインターカップに出たことで、メインコートに立ちたいと思っていました。あの舞台でプレーできたことはうれしかったですし、とにかく楽しもうという気持ちで緊張しなかったです。ただ、試合後は今までで一番悔しかったですし、漠然と終わってしまった、優勝を目指せるチームだったのに、という思いでした。

――ウインターカップで一番印象に残っていること、プロの世界で活かされていることを教えてください。
藤井 メインコートでの試合は、シュートが入ったら会場がとても盛りあがるんです。みんなが見ている中でプレーできたこと、あの雰囲気を味わえたことは大きいと思います。

――コート外での思い出はありますか?
藤井 僕たちは品川プリンスホテルに宿泊したのですが、バイキングのクオリティの高さに驚きました(笑)。高校生の僕たちからしたら「やべぇ。カニ食べ放題じゃん」みたいな。島根、静岡だったので都会のことを全然知らず、東京タワーを見に行った記憶もありますね。

――高校3年間、バスケットボールを通じて学んだことを教えてください。
藤井 自分の好きなことをやっているので、一番はバスケを楽しむということです。勝ち負けがあり、悔しい時もうれしい時もある中、楽しくプレーすることを学びました。大会に出場する選手にもウインターカップという大舞台を楽しんでもらいたいです。また、元気さやがむしゃらさを見ると応援したくなりますし、プロ選手の僕らも見習わなくてはいけないと思います。観客の皆さんには、選手たちの最後まで諦めない姿に注目してほしいです。

現在は川崎で活躍 [写真]=B.LEAGUE

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