2018.12.23

富岡東の小さなキャプテン田中志「キャプテンという立場が自分を成長させてくれた」

富岡東の小さなキャプテン田中志は「通用した部分もあった」と満足げな表情を見せた [写真]=伊藤大允
バスケットボールキングプロデューサー(事業責任者)。学生バスケをテーマにしたCM制作に携わったのがバスケに関する初仕事。広告宣伝・マーケティング業務のキャリアが一番長いが、スポーツを仕事にして15年。バスケどころの福岡県出身。

 12月23日、武蔵野の森総合スポーツプラザにて「SoftBank ウインターカップ2018 平成30年度 第71回全国高等学校バスケットボール選手権大会」が開幕。女子1回戦で、県立富岡東高校(徳島県)は山形市立商業高校(山形県)と対戦した。

 2年ぶり8回目の出場となる富岡東はオフィシャルプログラムに「身長も能力も低いチームですが、ディフェンスを徹底し、粘り強く戦います。1回戦突破を目指します」と謙虚なコメント。29年連続29回目の出場、大会ベスト4入り4度を誇る山形商業に挑んだ。

 各ポジションで高さの不利がある富岡東は大会抱負で語ったとおり、粘り強いプレーを随所で披露。ゴール下のリバウンド争いに何度も飛び込み、体を張って相手の得点機会を阻止。高い集中力でリバウンドで負けた後でもルーズボール争いに何人もの選手が顔を出すなど、素晴らしいディフェンスを披露した。攻めても157センチのキャプテン田中志(3年)、小林海輝(3年)を中心に思いきりのいいドライブで相手ディフェンスを引きつけてからのアウトサイドシュートで得点を加算。突き放されそうになれば追いすがる好ゲームを展開した。

 前半を終えて28-34と何とかついていった富岡東だったが、チーム自慢の運動量も徐々に低下、心身の疲労が見え隠れする。富岡東は第3クォーターに入るとディフェンスバックの遅れが目立ち、山形商業が繰り出す速攻を止めることができず、立て続けに失点。加藤遥菜(3年)、斎藤梨奈(3年)らに次々とドライブからのシュートを決められると、徐々に点差が開き始める。ジワリジワリと離れる点差を埋めるだけの体力、気力を残すことができなかった富岡東は最後の最後まで粘ったものの、61-73で敗戦。大会初日で姿を消した。

山形商業のスタミナと高さに次第にスタミナを削られた富岡東 [写真]=伊藤 大允

 チームを30年率いた木下博順氏の後任として、今年の春から富岡東の指揮をとる西田良裕コーチは、試合後の取材に応じ、「力不足です。身長の差があるので、リバウンドを取られ続けることで疲れてしまった。途中で気持ちも切れてしまいましたね」と敗因を語った。加えて、「徳島県には大きな選手がいないので、もっともっとディフェンスとかトランジション(攻守の切り替え)とか小さな人間がやらなければいけないことを、もっともっとしっかりとやらなければいけないですね」とこの敗戦を糧としつつ、引退をする3年生へ向けて「全員が残ってくれて……。出場機会の少ない子もいたし、辛いこともあったと思うけど、ご苦労さんと声をかけてあげたい」と謝意を示した。

 小さな体でチームを引っ張ったキャプテンの田中は「もっとできたと思いますし、悔しい気持ちはもちろんですが、自分としてはドライブも積極的に仕掛けられて通用した部分もあるし、満足しています」と清々しい笑顔を見せた。また、大きな選手との対戦について「たとえミスマッチでも、ディフェンスのときに、相手の足元に入って相手の体力を削ることなどを地道に続けることで、身長が低い選手でも勝ち目があると思っています」と述べて、サイズに劣るプレーヤーへのアドバイスを送った。この大会で幕を閉じる高校バスケに対する思いを問うと、「小中とバスケはプレーしていましたが、それまでは前に立つタイプではなく、高校で初めてキャプテンをやって、とっても辛いし、しんどいし、辞めたいこともありました。ただ、やはりキャプテンという立場を通じて日頃の生活の中でも姿勢や挨拶など学ぶことも多かったです」とバスケを通して、キャプテンという立場を通しての成長や得がたい経験への感謝を口にした。
 
 男女合計100校が出場するウインターカップ。一斉に試合が行われる大会の様子は壮観ではあるが、試合の分だけ敗者が存在し、高校バスケの幕を閉じるプレーヤーも大勢いることになる。富岡東の田中のように自分の持てる力を精一杯出し切って、武蔵野の森での40分間が、少しでも悔いのない形で次のステージへつながる大きな糧となることを期待したい。

文=村上成

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