2024.05.08

ヒートの名物社長がバトラーに公で説教「コートに立てないなら他球団の批判を口にするな」

コート外での発言を問題視されているバトラー[写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 マイアミ・ヒートの名物であるパット・ライリー球団社長が、『カセヤ・センター』で行われたプレスカンファレンスに登壇し、その会見のなかで球団のスター選手であるジミー・バトラーに苦言を呈した。

 ヒートはプレーオフ1回戦でボストン・セルティックスに敗れ、シーズンを終了した。有識者やファンの中には、もしバトラーがいれば、結果は変わっていたかもしれないと考える人も少なくないのではないだろうか。“プレーオフ・ジミー”の愛称でも親しまれるバトラーは、ヒートに移籍以来、優勝経験こそないものの、チームを2度、NBAファイナルに導いている。昨年のプレーオフ期間中は得点、リバウンド、アシストの全てでレギュラーシーズンよりも高い数字を記録し、巧みな勝負術で数々の勝利を手繰り寄せた。しかし、今年はプレーイン・トーナメント中に内側側副靱帯(MCL)を捻挫し、シリーズを欠場。セルティックスと激突したシリーズは終始苦戦を強いられ、第3戦以降は90得点以上を記録できず、エース不在の影響を感じさせた。

 バトラー自身もそう感じていたのか、先日撮影された動画内で自身がプレーしていたらセルティックスも、ニューヨーク・ニックスも退けていたと発言。ライリーはこのコメントがお気に召さなかったようだ。

「彼があの発言をしたとき、『ジミーは煽っているのか?それとも本気で言っているのか?』と思いました。ボストンやニューヨークとのシリーズでコートに立ってプレーしていないのであれば、それらのチームに対する批判を口にすべきではありません」

ヒートのパット・ライリー球団社長[写真]=Getty Images


 現地メディア『The Athletic』は、この一件を題材に、ヒートとバトラーの交渉にもスポットライトを当てている。

 ヒートとバトラーには現行契約が2年残されており、2025-26シーズンには5200万ドル(約80億7600万円)のプレーヤーオプションが控えている。ヒートは今夏、バトラーに対して新契約をオファーできるが、同選手は今年9月で35歳を迎え、キャリアはすでに折り返し地点を通過。より将来を見越したチーム作りにシフトするのであれば、5年連続のオールディフェンシブ選出が確実とされているバム・アデバヨを中心とした新たなデュオを形成するビジョンも構想しているに違いない。

 しかし、ライリーは今回の会見でバトラー放出の可能性を明確に否定した。

「我々のチームで最も影響力のある選手はジミーで間違いありません。彼は信じられない選手です。変化について私が最初に言ったのは、このチームが彼に望んでいること、そして私が望んでいること、そしてオーナーのミッキー(・アリソン)や他のみんなのために、彼自身が少し考えなければならないということです。この5年間、我々は素晴らしい成功を収めてきました。 私たちがタイトルを獲得できていないことが、みんなを悩ませていると思うのです」

『The Athletic』でヒートのレポートを担当するウィル・ギロリーは、上記のライリーの発言を“透明性の表れ”と解釈し、バトラーの今後の素行と健康が契約交渉の鍵を握ると分析している。

最後は右ヒザの負傷で戦線離脱したジミー・バトラー[写真]=Getty Images


 ライリーはこの会見中、何度も選手たちの欠場数の多さを嘆いていた。ロスターには絶対的な自信を示す一方、選手たちが毎晩プレーしないことを球団の「最大の課題」と強調。シーズン中フル稼働したと言えるのは、アデバヨとルーキーのハイメ・ハケスJr.の2人だけであり、タイラー・ヒーローテリー・ロジアートーマス・ブライアントテリー・ロジアーらの不在は、エリック・スポールストラ監督の頭を悩ませたことだろう。

 ヒートは来シーズン、先に言及したバトラー、ヒーロー、ロジアーの3選手で約1億ドル(約155億3300万円)のサラリーが発生する。金額面での計算に過ぎないが、これらの選手を全員手放せば、年俸5000万ドル(約77億6600万円)級のスター選手2名をアデバヨの横に配置するプランも実現可能なのだ。

 果たして、選手時代から通算9度の優勝経験を持つヒートの長は、今夏にどのような類の交渉をまとめるのだろうか。

文=Meiji

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