Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
「NBAプレーオフ2024」は1回戦の大部分が消化された。レブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)、ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)、ケビン・デュラント(フェニックス・サンズ)というリーグの顔が不在で行われる今後のラウンドでは、新時代を担う選手たちが極上のプレーの応酬を繰り広げることだろう。
一方で、敗退したチームはすでに2024-25シーズンに意識を切り替えているはずだ。ただ勝者たちの戦いを傍観するのではなく、オフの時間を有効活用し、来シーズンの課題を洗い出さなければならない。
『ESPN』は、オフシーズンガイドと題し、惜しくもトーナメントを後にした球団の現状と今後の課題を分析。本稿では過去にブルックリン・ネッツでアシスタント・ゼネラル・マネージャーを務めたこともある同メディアの名物インサイダー、ボビー・マークス氏の見解をご紹介したい。
ダークホースのインディアナ・ペイサーズにアップセットを喫したバックスだが、今シーズンの結果は不運だったと言わざるをえない。なぜなら、シリーズの全試合でヤニス・アデトクンボをケガで欠き、頼みの綱であったデイミアン・リラードも第4戦と第5戦を欠場したからだ。
だが、表向きにはエース陣の欠場による敗退に見えるものの、水面下の課題は決して小さくない。その最大の問題が膨大なサラリーキャップである。マークス氏によると、アデトクンボ、リラード、クリス・ミドルトン、ブルック・ロペスの4選手のサラリー合計は1億5200万ドル(約232億5900万円)にもおよぶといい、ラグジュアリータックスの限界値を1200万ドル(約18億3600万円)も超過。第2エプロンを超えると、トレードでの現金送金やサイン&トレードが許可されず、チーム作りをする上で大きな足枷となるのだ。また、シーズン途中に指揮官に就任したドック・リバースヘッドコーチとの相性も疑問。同HC就任以降、バックスは勝率5割を下回り、オフェンシブ効率は18位、ディフェンシブ効率は15位と低調で、数字はオンコートでの課題も浮き彫りにした。
財政状況により、バックスは今夏にフリーエージェントとなるマリーク・ビーズリー、ジェイ・クラウダー、パトリック・ベバリーという信頼できるベテランたちと別れを告げなければならないだろう。この課題を解決する手段は2つ。1年契約のベテランミニマムでロスターを埋めてシーズンをやりくりするか、アンドレ・ジャクソンJr.やAJ・グリーンをはじめとする若手をロールプレーヤーレベルまでに育てあげるかだ。
これまでジョエル・エンビード頼みだったシクサーズだが、大切に育成してきたタイリース・マキシーの本格化により、球団は十分に優勝を狙えるステージまで上り詰めた。バスケットボール運営部門の代表であるダリル・モーリー氏は、ジェームズ・ハーデン(ロサンゼルス・クリッパーズ)のトレード以降、キャップスペースの確保を優先し、新たな“ビッグ3”形成の下ごしらえを整えている。
最優先事項は、昨夏に先延ばししていたマキシーとの新契約締結だろう。今シーズンで契約満了となるフランチャイズプレーヤーは、5年2億450万ドル(312億9500万円)、年俸3500万ドル(53億5600万円)程度の契約で、フィラデルフィアに残留すると思われている。そして、最大6500万ドル(99億4700万円)のサラリーキャップを活かして、2枚看板に並ぶトップクラスの選手を獲得したいところだ。
だが、トバイアス・ハリス、キャメロン・ペイン、ロバート・コビントン、バディ・ヒールド、ケリー・ウーブレJr、カイル・ラウリー、ニコラ・バトゥームなど、ロスターの多くがフリーエージェントとなるため、彼らの取捨選択も強いられている。ポール・ジョージ(クリッパーズ)、デマー・デローザン(シカゴ・ブルズ)、クレイ・トンプソン(ウォリアーズ)、マリーク・モンク(サクラメント・キングス)など、今夏の市場に登場するビッグネームは少なくなく、どのようなロスターを構築するのかが楽しみな球団の一つだ。
ヒートは非常にテコ入れの難しい球団のように思える。2019年にジミー・バトラーが加入して以来、NBAファイナルに2度進出。不幸にも今プレーオフは膝の故障で支柱を欠き、ボストン・セルティックスに屈したが、名将エリック・スポールストラHCと背番号22が作り上げた基盤はまぎれもなく、令和の“ヒートカルチャー”として賞賛されるものだ。
しかし、そんなバトラーも9月には35歳の誕生日を迎える。プレーオフで並々ならぬ勝負強さを発揮する彼だが、直近の4シーズンでは65試合以上の出場がなく、今シーズンはリム周りのフィニッシュで苦戦を強いられ、フィールドゴール成功率が50パーセントまで低下した。現状では大胆な改革こそ噂されていないものの、彼をエースに据えられる時間は限られており、2025-26シーズンにプレーヤーオプション、7月に2年の契約延長の権利を所有していることから、今夏の動向は球団の未来を示すものとなるだろう。
そのなかで優先されるべきが、バム・アデバヨとの契約延長だ。アメリカ代表のインサイドは5年連続でオールディフェンシブに名を連ねることが予想されており、今夏には3年1億6500万ドル(252億3600万円)の契約延長の資格がある。年齢もまだ26歳と先は長く、彼とバトラーの存在によって、ヒートは有望選手のトレード先としても非常に魅力的な球団であることに代わりはない。
ケビン・ラブ、ヘイウッド・ハイスミス、ケイレブ・マーティンなど、仕事人たちの契約の動向も気になるところ。毎年のように移籍が取り沙汰されるタイラー・ヒーローやダンカン・ロビンソン、さらには3番手を担うテリー・ロジアーなど、魅力的なアセットも豊富なだけに、立ち回りの自由度は高そうだ。
ペリカンズは、ザイオン・ウィリアムソンがついに本領を発揮したことで、今後数年が楽しみな球団の一つとなった。しかし、現在のロスターにどのような評価を下すべきかは、とても難しい。ペリカンズはフランチャイズ史上2位の記録となるシーズン49勝を挙げ、ザイオンはキャリアで初めて70試合出場を達成した。しかし、結果的にはオクラホマシティ・サンダーにスウィープで退けられ、ザイオンの悔しさを滲ませる様子からも、決して満足のいく結果ではなかったはずだ。何より、チームの主軸となるザイオン、ブランドン・イングラム、CJ・マッカラムは737分の時間をコート上で共有したが、この際のネットレーティングは「-3.2」、オフェンシブ効率はリーグ24位のトロント・ラプターズよりも低い「111.2」となり、数字的にはお世辞にも機能していたとは言い難いという。
このトリオを見直す上でまず注目すべきが、イングラムである。イングラムは2024-25シーズンが契約最終年となり、今夏に最大4年2億800万ドル(約318億1100万円)の契約延長にサインする資格を有している。今シーズンは得意の2ポイントショットでキャリアハイとなる53パーセントの成功率を記録し、ミッドレンジのフィールドゴールでリーグ5位の成績を残した。しかし、彼は常にケガがつきまとい、過去3シーズンの平均出場試合数は54試合にとどまる。
こうした状況下で検討すべきは、トリオの維持または解体となる。2025-26シーズンには3選手のサラリー合計が1億1500万ドル(約175億9400万円)にまで膨らむことから、フロントはオフに大きな決断を下す可能性がある。また、球団のインサイドを支えたヨナス・ヴァランチューナスも今夏にフリーエージェントになるため、彼との新契約締結またはインサイドの入れ替えは必須任務。貴重な戦力に成長したトレイ・マーフィー3世のルーキー契約延長にも対処が求められ、課題は山積みだ。
ポテンシャル的には“ビッグ3”と呼べるペリカンズのコア。ウィリー・グリーンHCとトラジャン・ラングドンGMの意向に注目したい。
文=Meiji
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