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河村勇輝はクリッパーズに残れるのか…待ち受ける“茨の道”、契約争いを徹底整理

ペイサーズの一員としてサマーリーグに参加した河村[写真]=Getty Images

 NBA挑戦3年目のシーズンを迎える河村勇輝の行き先が、ロサンゼルス・クリッパーズに決まった。

 クリッパーズは8月10日、公式SNSを通じて河村とエグジビット10契約を結んだことを発表した。言うまでもなく、クリッパーズは今夏、八村塁が移籍したチームでもある。日本人選手2人が同時期に同じNBA球団の契約下に名を連ねるのは、NBA史上初の快挙。NBAでの夢を追い続ける河村の側に八村の存在があることは、これ以上になく心強い。

 もっとも、今回の契約は河村のNBA生活を安泰にするものではない。むしろ、現実的には“茨の道”の入口に立ったと見るべきだろう。この時期のエグジビット10契約は何を意味するのか。河村の現状と、今後の見通しを整理してみる。

■エグジビット10契約を与える意図

NBA3年目へ向けて挑戦が続く河村[写真]=Getty Images


 河村の状況は、「エグジビット10契約」の意味を理解すれば見えてくる。

 エグジビット10契約とは、NBAの最低年俸ベースの無保証契約に付けられる条項であり、開幕前に2way契約へ転換できる可能性や、ウェイブ後に傘下のGリーグ球団へ加入した場合のボーナス制度などが含まれる。

 球団はオフシーズン期間中、最大21人まで選手を保有できる。エグジビット10の契約枠は最大6人となっており、河村にはその1席が与えられた形だ。

 オフシーズンのエグジビット10契約は、開幕ロスター15枠や2way契約3枠をすぐに与えるには至らない選手に対し、トレーニングキャンプで評価するために用いられるケースが多い。2024年、インディアナ・ペイサーズから富永啓生に提示された契約も、このエグジビット10契約だった。キャンプやプレシーズンで強い印象を残せば、スタンダード契約や2way契約への昇格の可能性があり、仮にウェイブされたとしても、球団は傘下のGリーグチームで成長を見守ることができる。

◼︎クリッパーズの2way契約は現状満席

(左から)ピケット、シャープ、マルティネッリ[写真]=Getty Images


 河村には、トレーニングキャンプを経て、契約のアップグレードが期待されている。しかし、そのチャンスを自力で勝ち取るためには、かなりのインパクトが必要な状況だ。なぜなら、クリッパーズの2way契約はつい数日前に、3枠全てが埋まってしまったばかりだからだ。

 最大のライバルは、26歳、身長188センチのポイントガード、ジェイレン・ピケットだろう。8月6日(現地時間5日)に2way契約が発表された同選手は、過去3シーズンをデンバー・ナゲッツで過ごし、昨シーズンは50試合に出場。そのうち18試合でスターターを任され、シーズン平均5.2得点、2.3アシスト、3ポイント成功率38.6パーセントを記録している。

 また、残りの2枠は、ジャマリオン・シャープニック・マルティネッリに与えられている。

 前者はリーグ最高の身長226センチを誇る、24歳のビッグマン。昨シーズンはGリーグのテキサス・レジェンズでプレーし、ブロック王と最優秀守備選手賞を受賞したリムプロテクターの有望株で、こちらも数日前にクリッパーズとの2way契約が発表されたばかりだ。

 後者のマルティネッリは、今年のNBAドラフトで全体55位指名を受けたルーキー。スモールフォワードを主戦場とし、大学ラストイヤーとなった昨年はノースウェスタン大学で平均23.0得点、6.2リバウンド、3ポイント成功率41.7パーセントを記録していた。同選手については、7月上旬の段階で2年間の2way契約が発表されており、サマーリーグでも平均14.8得点、6.4リバウンドという好成績を残している。

■ロスター&2way契約を勝ち取る可能性は

昨季はブルズと2Way契約を結んでいた河村[写真]=Getty Images


 現在、クリッパーズのロスターは14名だ。ただ、カワイ・レナードを巡るトレードが停滞したことでブランドン・イングラムグレイディ・ディックの加入が延期。このトレードが成立すれば、クリッパーズのロスターは綺麗に埋まる計算となっている。

 その傍らで、クリッパーズはベネディクト・マサリンとの間で、制限付きFAの状況も維持。昨シーズン、ベンチから平均17.4得点を記録したマサリンについては、クリッパーズとの再契約が有力視されているが、関心を示す他球団とのサイン&トレードが実現することも想定される。

 クリッパーズのガード陣の奥行きも確認しておこう。ポイントガードは一番手にダリアス・ガーランド、その控えには守備力のあるクリス・ダンが待機。状況によっては今年のドラフト5位指名キートン・ワグラーがコンボガードを担う設計で、キャム・クリスティと2wayのピケットが、序列の末端争いにいる。

 さらに、フレッチャー・ロイヤーの存在も忘れてはいけない。同選手はドラフト外からクリッパーズとエグジビット10契約を結んだパデュー大学出身のガードであり、カレッジでは4年間で大学歴代最多となる309本の3ポイントシュートを成功させた実力派シューターだ。
 

ドラフト外からエグジビット10契約を結んだロイヤー[写真]=Getty Images


 河村が2way契約を勝ち取るためには、実質的なライバルであるピケットとの比較で“残す価値”を証明する必要がある。サイズ面の懸念は、どのチームでも避けて通れない。それでも、ゲームメイク、ペースの変化、ピック&ロールでの創造性、トランジションでの判断、ベンチから流れを変える力において、河村には独自の魅力がある。

 実際、2way枠は決して固定されたものではない。昨シーズンもクリッパーズは、開幕前にトレンティン・フラワーズをウェイブし、エグジビット10契約だったジャミル・テルフォートを2way契約へ昇格させた。また、ボストン・セルティックスのロン・ハーパーJr.や、マイアミ・ヒートのジャミア・ヤングらも、キャンプを経てエグジビット10契約から2way契約にアップグレードされた選手たちである。河村自身も、昨シーズンはシカゴ・ブルズで2way契約を勝ち取った経験があり、チーム事情やキャンプでの評価次第で、状況が動く可能性は十分に残されている。

「人生で一番きつい夏にする」

 河村は強い覚悟のもと、新たなチームでの挑戦に臨む。八村がいるクリッパーズで、もう一人の日本人選手がNBAへの道を切り開けるのか。ここからのキャンプが、本当の勝負になる。

文=Meiji

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