2022.08.04

「今の力」と現状を受け止め、冬の日本一へと挑戦を続ける大阪薫英女学院

「ノーマークのシュートを決め切ること」(安藤コーチ)も冬への課題となった [写真]=伊藤 大允
フリーライター

決勝戦ではエースが痛恨のファウルトラブル

「今回の負けはチーム現状、今のチームの力だと思っています」

「令和4年度全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会」で準優勝となった大阪薫英女学院高校(大阪府)。指揮を執る安藤香織コーチは、決勝戦を終えてにこう語った。

 京都精華学園高校(京都府)との決勝戦は、前半こそ緊迫した試合展開となったが、後半に入ると、エースの都野七海(3年)が4つ目のファウルを犯してしまいベンチへ。「都野のファウルトラブルがすべてでしたね」(安藤コーチ)と振り返るように、都野の4つ目のファウル後、京都精華学園に連続得点を許すと、そこから緊張の糸が切れたかのように、ズルズルと後退し、敗戦を喫した。

 今年の大阪薫英女学院は、抜群の1対1の能力を誇る都野と、3ポイントシュートを得意とする熊谷のどか(3年)のダブルガードが中心。2人ともに158センチと高さこそないが、スピードとシュート力が持ち味で、「2人で50点」(安藤コーチ)を取る得点力がある。そこに177センチの仲江穂果(3年)、175センチの島袋椛(2年)、木本桃子(2年/167センチ)を加えた5人がスターターだ。インサイドを担う仲江もアウトサイドシュートを得意としており、全員がどこからでも得点ができ、機動力も持ち合わせている。

 全国の上位には、大型の留学生センターを擁するチームも多いが、そういったチームと比べれば大阪薫英女学院は小さい方。それでも、今年は大型チームに対しても「点を取られても取り返す」スタイルで対抗し、インターハイでもそのスタイルを貫いた。

 だが、チームが目標としていた優勝には及ばず。「結局、都野に頼り切りというところを脱却しないと冬も同じなのかなとは思います。都野が4つ目(のファウル)をしたところで、チームが崩れてしまった。熊谷が何とかしようとはしていたけれど、都野がいなくなった時に、踏ん張ることができなかったですね」と安藤コーチは語った。

 もちろん、都野に関しても「3つ目、4つ目のファウルはいらなかったと思います」と言い、直感で動くのではなく、感情のコントロールを指揮官はエースに求めた。

指揮官は個々のレベルアップと『都野頼み』からの脱却を求めた

エースとしてチームを引っ張った都野。それだけに決勝でのファウルトラブルが悔やまれた [写真]=伊藤 大允

 その都野は試合後、「いらないファウルをしないようにと思っていたのですが……。チームを勝たせないといけないのに、40分間コートに立てなかったのが……」とコメント。さらに「私がいない間もみんなが頑張ってくれていたので、コートの中で自分自身がもっとやらないといけないと思いました」と言葉を絞り出した。

「個々のレベルアップと『都野頼み』から脱却すること。一人ひとりのディフェンスやオフェンスのレベルがもう一つ上がらないことには、チームのレベルも上がってこないと思います。それと、センター陣で(スターターの)代わりとなる選手も必要だと思います」と安藤コーチは冬に向けた課題を語った。

 粘りのディフェンスを見せながらも、小さいがゆえに最後の最後で相手に高さを生かしたシュートを決められてしまうことも多々ある。それでもすぐに攻撃に転じ、ブロックショットも怖がらずにリングに向かった大阪薫英女学院の選手たち。また、どの試合も日頃の練習で身につけたスタミナを武器に40分間足を動かし続けた。しかし、それでもなお優勝には、今まで以上にプレーの精度の高さを求められる。

「冬はしっかり決勝まで勝ち上がって、自分たちがやるべきことをやり続けて日本一を取れるように頑張りたいです」と都野は前を向いた。

 不屈の精神で夏を戦い、見る者の胸を熱くした大阪薫英女学院。決勝後は悔し涙に明け暮れたが、選手たちは止まることなく、これからも日本一への挑戦を続けていく。

ウインターカップでのリベンジを目指す [写真]=伊藤 大允

文=田島早苗