2023.04.06

2017年以来の全国を見据える育英…期待のルーキーたちが上級生にもたらした効果

Jr.ウインターカップ優勝メンバーを多くそろえる兵庫県の育英高校 [写真]=小沼克年
フリーライター

 2022年の春、育英高校(兵庫県)には期待のルーキーたちがこぞって入部してきた。藤村日向、長田祐聖、馬場瑠音、竹内琉人。今春に2年生となった彼らは、中学3年次に地元クラブ・ゴッドドアの主力として「Jr.ウインターカップ2021-22 2021年度 第2回全国U15バスケットボール選手権大会」で優勝を成し遂げたメンバーだ。

 さらには、Jr.ウインターカップ決勝でゴッドドアと対戦したKAGO CLUBから羽澤要(2年)も育英へ進学。「ライバルだったので、最初の頃はチームとしてうまく戦えるかなって心配だったんです。でも今は、試合を重ねていくにつれてみんなの得意なプレーもわかってきました」と話す羽澤は、インサイドで体を張る中心選手として活躍している。

 誇らしい実績を持つ選手が加わったことで、育英の指揮を執る沼波望コーチは昨年、1年生を積極的に試合で起用してきた。だが、新チームになってからは上級生たちが頭角を現し、4月1日と2日に開催された「埼玉カップ2023」では2、3年生がバランスよくコートに立った。

「今の2年生たちは1年生の頃から試合に出ていたんですけど、ここにきて3年生たちもすごく頑張るようになってきました。やっぱり悔しい思いをしたというか、感化されたんでしょうね。今はプレータイムをなんとか確保したいという子が増えてきて、本当に3年生の力ってすごいです」

 沼波コーチはしみじみと語った。埼玉カップで先発ガードを務めた三井大雅(3年)は、悔しい思いを経験した1人である。三井は2022年の1年間をこう振り返る。

「下の代が強かったので、自分たちの代では誰も試合に絡めなかったです。そこからまた全員で努力して、自分は全員が帰ってからも1人で自主練したこともありました。今の3年生はやっと試合に絡めるようになってきましたし、後輩はライバルでもありますけど、いい関係性でやれていると思います」

下級生の活躍によって刺激を受けたという三井 [写真]=小沼克年

 三井は「2人はスピードがあるので、全国でも通用するドライブをもっていると思います。1対1の能力も高いです」と実力を認める藤村、竹内の後輩ガードとともにコートに立つ。2人が伸び伸びプレーできるよう、自分自身はコート上のバランスを意識していると話す司令塔は「この2日間、兵庫県の高校よりレベルが高いチームと試合をして、勝負どころのリバウンドやルーズボールで負けてしまいました」と埼玉カップを振り返り、「そういった課題をインターハイ予選までに改善したいです」と気を引き締めた。

 2017年を最後に全国大会から遠ざかっている育英にとって、勝負の1年でもある。日本一の経験を持つ2年生、それに負けじと一層努力を積み重ねている3年生たちの相乗効果により、兵庫県内を勝ち抜く力は備わっていると言えるだろう。沼波コーチも「今年は本当に頑張れる子が多いので、狙えるんじゃないかなと思っています」と自信をのぞかせた。

 インターハイとウインターカップ出場へ向け、超えなければならない壁は報徳学園高校だ。育英の選手たちにライバル校を聞いた際にも、真っ先に「報徳」という言葉が出てきた。育英と報徳学園の新チームは2月に行われた「第75回兵庫県高等学校新人バスケットボール選抜優勝大会」の決勝戦で対戦済みで、報徳学園に軍配が上がった。

 埼玉カップを4位で終えた育英だが、予選リーグでは中部大学第一高校(愛知県)、船橋市立船橋高校(千葉県)と互角に渡り合い予選1位突破を決めた。この経験、悔しさを今後の成長につなげ、育英は全国の舞台に戻ってくるはずだ。

勝負の1年で全国大会出場を果たせるか [写真]=小沼克年

文=小沼克年