2024.06.07

『BELIEVE 日本バスケを諦めなかった男たち』のナレーションを担当した広瀬すずさん「勇気をもらいました」

ナレーション収録直後の広瀬すずさんに話を伺った[写真]=野口岳彦
フリーライター

 あの夏の感動が蘇ってくる——。

 幾度となく訪れたピンチにも強い気持ちとチーム力を武器に戦い、「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」で目標であったパリオリンピックの出場権を見事獲得した男子日本代表。その激闘を収めたドキュメンタリー映画『BELIEVE 日本バスケを諦めなかった男たち』が、6月7日から4週間限定で全国の劇場で公開となる。

 大会でのプレーシーンはもちろん、トム・ホーバスヘッドコーチや男子日本代表の選手インタビューを新たに収録したこの作品。ナレーションを務めるのは、俳優の広瀬すずさんで、ワールドカップ中は中継局のSPブースターとして現地で男子日本代表の戦いを見守った。

 大会中、日本の試合には必ず赤いものを身に付けていたという広瀬さん。ナレーション収録時も白を基調としながら赤の模様が入った服装で臨んでいた。その広瀬さんにワールドカップのことや映画、またバスケットについて話を聞いた。

取材・文=田島早苗
写真=野口岳彦

--ナレーションのオファーを受けたときの心境を教えてください。
広瀬
 私がよりバスケットを好きになり、(今まで以上に)試合を観るようになったのはワールドカップの影響が大きかったので、映画制作に参加させてもらうことになって、一人の日本代表ファン、そしてバスケットファンとして、とてもうれしかったです。どのようなことでも力になりたいと思っていましたが、普段から映画のお仕事をさせていただいているからこそ、劇場に映像が流れる、あの空間に携われると思うと、それもまたうれしいことだと感じています。

--「ワールドカップ」で印象に残っていることはありますか?
広瀬
 ほぼ全試合、息をすることすら忘れるような試合だったと思います。大逆転勝利など面白い試合が多くて、試合後はいつも疲れていました(笑)。そして、このままだと寝れないような状況だったので、勝利の乾杯も。バスケットだけでなく沖縄のことも大好きになりましたし、本当に楽しい、楽しい時間でした。

--プレーやインパクトのあった選手などはいましたか?
広瀬
 河村勇輝選手や富永啓生選手といった私より若い選手が先頭になって会場をコントロールしていて、あの爆発力は衝撃的でしたし、心から尊敬します。それと、全選手すばらしかったのですが、メンタルと“体力お化け”はジョシュ・ホーキンソン選手だと思っていて、長い時間試合に出ているけれど、インサイドでもアウトサイドでもプレーし、リバウンドも全部取りに行く。日本はサイズのハンディをどうしても現実として突きつけられることが多いのですが、ホーキンソン選手は経験からくるのか、(プレーに)ブレないものを感じました。3ポイントシュートを連続で決めたときは驚きましたね。

現地で日本代表の躍進を見届けた広瀬さん[写真]=Getty Images


--試合を重ねるごとにトム・ホーバスヘッドコーチ率いる男子日本代表が何かやってくれるのではないかという期待感も増していったのではないですか?
広瀬
 増しすぎて。『このドキドキ、止めて!』みたいに言いたくなってしまうほどでした。でも、絶対に裏切らないからすごい。スポーツ選手って圧倒的にメンタル、精神面が一般の人とは違うと思うし、それを目の前で見たので、勇気をもらいましたし、勇敢な姿を見せてもらえたと思っています。

--刺激も受けたのではないですか?
広瀬
 人の心を動かすというのはすごいことですよね。自分のことではないことで、あれだけ叫んだのは、人生で初めてぐらいでした。私も、映画やドラマの仕事に頑張ろうと思っていますけど、スポーツには勝てないなと思ったほどで、ここまで人のことで感情が動くって、「何というドラマを見ているんだろう」と感じました。

--そのような中で今回のナレーション。どういったところを伝えたいと思って臨みましたか?
広瀬
 現地で観ている分、(当時を思い出して)勝手に興奮してしまうところがあったので、淡々とやろうと。興奮を抑えたというか、一人で、「ふーっ」っと息を吐きながらナレーションをしました。ある意味冷静な目で観ることができました。

--ナレーションをして、多くの人に映画を見てもらいたいという思いは強くなったのでは?
広瀬
 私、昨日も今日も(映像を)観ているのですが、もう観たいですもん。ただ、私のナレーションは選手のみなさんに見られたくないというか、少し恥ずかしいですね。尊敬しているからこそ。だから、選手のみなさんは見ないでいただけたら…(笑)。もちろん、バスケットファンのみなさんには観てもらいたいなと思っています。あの戦いを映像に残してもらえたことは、私もバスケットファンの方たちにとってもうれしいことだと思います。

--ワールドカップを見て、バスケットをまたやりたいとは思いませんでしたか?
広瀬
 (ワールドカップのあと)何回かやりましたが。私も、「自分は河村選手だ」と思っていましたが全く動けなくて。周りも「自分は馬場雄大選手だ、渡邊雄太選手だ」と思ってやっていたけど、残念な感じに…。でも、やっぱりバスケットは楽しいですね。それと疲れます。こんなに走っていたっけ? なんで昔は走れていたのだろうと思いますね。

--シュート決めた後のセレブレーションは?
広瀬
 やっている人もいましたけど、ただやりたいだけで、顔が疲れていました(笑)。比江島慎選手のようにかっこよくはできないですね。

--改めて感じるバスケットの魅力とは
広瀬
 他のスポーツも含め、個人的にはスポーツ観戦はとても好きなのですが、バスケットは波のあるスポーツで、最後まで結果が分からないほど(試合の中で)戦況が変わっていくのは見ていて楽しいです。その中で一人の選手に神が降臨したような瞬間は圧倒的なものを感じますね。1クォーター10分をずっと走り続け、神経も研ぎすます。リアルな体と体のぶつかり合いやスピード、バスケットは人間の究極を見ているような気がします。3ポイントシュートも、ディープスリーが入ると気持ちがいいですよね。私は、これからも日本のバスケットを一ファンとしても応援していきたいと思っています。

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