2021.02.12

皇后杯優勝の立役者・ENEOSサンフラワーズの中村優花…Wリーグ後半戦も「自分らしく頑張ります」

皇后杯では得点のみならずリバウンドなど献身的なプレーも光ったENEOSサンフラワーズの中村優花[写真]=加藤誠夫
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

 歓喜の皇后杯優勝から約2カ月が経とうとしている――。

 ケガにより主軸が軒並み戦線離脱となったENEOSサンフラワーズ。大会中には大黒柱の渡嘉敷来夢を欠くアクシデントに見舞われながらもつかんだ日本一だったが、その勝利に大きく貢献したのが178センチのセンターフォワード・中村優花だ。8シーズン目を迎えた彼女はどのような思いで皇后杯を戦ったのか。そして2月13日から東地区も再開するWリーグレギュラーシーズン後半戦に向けての意気込みを聞いた。

覚悟を決めた後に迎えた皇后杯「怖いものは何もなかった」

――例年、(中村選手の)1月3日の誕生日は皇后杯前や最中でしたが、今年は12月に皇后杯が終了。優勝して誕生日を迎えました。
中村 年末も今までにはなかった大晦日に元旦と連休だったので、幸せな休みでした。誕生日も練習だったけれど、これからの1年に対してワクワクしながら当日を迎えましたね。いつもならトーナメントという一発勝負の戦いの前なのでピリピリした雰囲気なのですが、今年は8年ぶりに気楽な誕生日が迎えられました。

――ファンの方をはじめ、周囲からも皇后杯の反響は大きかったのではないですか?
中村 『感動した』『涙が出た』といった言葉が多く、すごくうれしかったです。

――皇后杯の活躍は記憶に新しいですが、その大会では梅沢選手のケガも影響して大会前からスタートで出る予定でした。どのような思いで大会に臨んだのですか?
中村 皇后杯より前、まだケガの選手が多くなる前のことなのですが、個人的に『どんな状況であろうと自分の力を出し切る』という覚悟を決めたタイミングがあったんです。

 もちろん、コート上で力を出すのがベストですが、そういったことに関係なくというか。そんな時にジュナ(梅沢カディシャ樹奈)がケガをしてしまいスタートから出ることになりました。これは「やれよ」と言われているような、何かのサインかなと感じましたね。「やったる」ではないけれど、皇后杯では力を出すこと以外、怖いものは何もなかったです。

――シーズン序盤で覚悟を決めるようなキッカケがあったのですね。
中村 はい。正直、今季はプレータイムをあまりもらえていなくて、腐りかけるギリギリみたいなところがあったんです…。でも、スポットライトを浴びている人がすべてではないと、捉え方というか、考え方を変えて。

 なんか自己嫌悪に陥っている自分がかわいそうだなと思ったんですよね。それで、今できること、自分ができることをどんな状況でも出し切ろうと覚悟を決めました。そう思う前までは精神的に結構苦しい時期もありましたけど。

 ただ、出し切ると覚悟は決めたものの、スタートになってからも自分の力をうまく出せないなど、自分の不甲斐なさを感じていました。そんな時にタクさん(渡嘉敷来夢)が「代わりだからニニ(中村)なんじゃなくて、ニニがいいからニニなんだよ。ニニが自信がなくても、私はニニと一緒にできることに自信を持ってるよ」と言ってくれて。私が思っている以上に周りの人が自分のこと分かってくれていると背中を押されました。

 もう感謝しかないのですが、そういうことがあって、練習などでも純粋に楽しいなと感じることもありました。タクさんとは息の合うプレーもしていたので、それを見せるのが楽しみだなと思っていました。だからタクさんがケガをしてしまった直後は…。あまり考えないように、試合に集中するようにしていました。

 タクさんは、自信がなかったり、うまくいかなかったりした時に一番声を掛けてくれた人だったので、その人がいなくなるというのはきつかったですが、自分のやることをやらないといけないとも思っていました。

「『負けてはいけない』というより、『負けるわけがない』と思っていました」

――皇后杯では準決勝、決勝ともに中村選手がチームで最初にシュート決めています。
中村 自分の良さは勢いを付けることだと思っていて、苦手なプレーで力を出し切れなくなるのなら、自分の良さを出そうと意識していました。そこに気持ちもプラスされてのプレーだったのかなと思います。変に「絶対にやってやる」と思っていたわけではないけれど、強気だったし、チャンスがあったらいつでも行くぞという気持ちでした。試合では冷静でいられるように。『心は熱く、頭は冷静に』と考えていました。

――皇后杯では林咲希、梅沢選手がケガで不出場、渡嘉敷選手も準々決勝でケガという状況でしたが、それでも『負けてはいけない』という思いがチームみんなにあったのではないですか?
中村 『負けてはいけない』というより、『負けるわけがない』と思っていました。周りからは大変な状況に見えたかもしれませんが、ENEOSは、例えばメイさん(大﨑佑圭)やリュウさん(吉田亜沙美)がいた時は宮崎(早織)や私はもちろん、アースさん(宮澤夕貴)ですらセカンドチームで練習していました。

(日本代表選手を多く擁し、その選手たちが不参加のことが多い)サマーキャンプでも『負けない』という気持ちで戦っていたので、(スターターのケガが続いて)皇后杯ではああいったメンバーになったけれど、別にそれが今回だけだったわけではなくて。皇后杯の時も試合に出ていた人もいれば出ていない人もいましたが、そういったことは関係なく、全員が日々の練習から一生懸命やっているからこそ、誰が出てもチームとして戦う。私自身、そう考えていたので気持ちは熱かったですね。

――サマーキャンプの経験や練習では渡嘉敷選手を相手にしてきたという自信もあったのですね。
中村 皇后杯では髙田(真希:デンソーアイリス)さんをはじめ、日本代表の選手を相手にプレーもしましたが、タクさんは大きいし、体も強い。そういった選手を相手にずっとやってきていたこと、それとセカンドチームの時にもスタートの選手が『あのプレー良かったね』と声を掛けてくれていたのですが、あれは本当に良かったと思って言ってくれてたんだなというのを今回で実感しました。それも自信につながりました。いろんな人のおかげでみんなとつながって勝てたのだと思います。

――さて、Wリーグ後半戦ですが、ENEOSの所属する東地区は緊急事態宣言の影響で1月は中止。一方、西地区は試合を行っていました。
中村 (西地区の)試合は見ていました。今までにないことで不思議な感じがしましたね。半分のチームだけ試合をすることが起こるなんて。でも、できないことに何を言っても始まらないし、チーム練習はできていたので、今できることをやるしかないと思っていました。無理に試合をして、それこそ感染が拡大しても良くないので、中止も前向きにとらえていました。

 もちろん、あると思っていた試合が無くなったことは残念でしたよ。富士通レッドウェーブ戦に向けて富士通対策の練習をやっている時に中止と聞いたので。

 それにストレスもあります。先が見えないというか、こうやってまた頑張っても(感染拡大で試合が)中止になるのではないかとか。でも、今は外に出られない分、自分と向き合うチャンスだと思って自分を内観しています。

――皇后杯チャンピオンとしてWリーグの後半戦を迎えます。
中村 自分のいいところやスタイルを曲げるつもりはないので、それをいかに通用するようにやるか。その準備はしていますし、個人的にはマークに対しての怖さは感じていません。どれだけ楽しめるかだと思っています。

 やるべきことをやって、抑えられたら抑えられたでどうすればいいかを対応する。体を張って、走って“らしく”やるのは変わらないし、相手がアジャストしてきても、マークが厳しくてもそれを越えて決めるぐらいでありたいですね。

――ブレずにあくまでも自然体というわけですね。
中村 はい。逆に言えばそれでずっと悩んできたので。(後半戦も)自分らしく頑張ります。

 

仲間の思いを背負って戦った皇后杯。中村優花はWリーグでの飛躍も誓った[写真]=加藤誠夫

ENEOSサンフラワーズ試合情報
2月13日(土)、2月14日(日)
vs.新潟アルビレックス BBラビッツ(ウイング・ハット春日部)

2月20日(土)、2月21日(日)
vs.日立ハイテククーガーズ(トッケイセキュリティ平塚総合体育館)

2月27日(土)、2月28日(日)
vs.シャンソン化粧品シャンソンVマジック(川崎市とどろきアリーナ)

※試合の日程は変更になる場合がございます。
詳しくはWリーグ公式HPにて→ https://www.wjbl.org/pc_index_html

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