2022.09.13

『未来へつながった大神雄子の逆転弾』から現在に至るまで…ワールドカップに挑んだ女子日本代表の歴史

近年のワールドカップにおける女子日本代表の戦いぶりを振り返る[写真]=fiba.com,Getty Images
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 9月22日から「FIBA女子ワールドカップ2022」がオーストラリアのシドニーにて開催される。4年に一度行われるこの大会は、オリンピックと同様に世界一を懸けたビックイベント。昨年の東京オリンピックで準優勝となった日本ももちろん、オリンピックではあと一歩届かなかった金メダルを目指すこととなる。

 ここでは、日本が出場した過去のワールドカップから、直近の3大会での戦いを振り返ってみたい。

文=田島早苗

■語り継がれる大神の逆転シュート。『経験』という財産を得た2010年大会

長年に渡って日本代表の主力として活躍した大神(写真は2011年のもの)[写真]=Getty Images


ヘッドコーチ:中川文一
メンバー:名木洋子、髙田真希、三谷藍、鈴木あゆみ、諏訪裕美、藤吉佐緒里、櫻田佳恵、吉田亜沙美、大神雄子、高橋礼華、石川幸子

▼大会結果:10位
【1次ラウンド】
日本 63●86 ロシア
アルゼンチン 58○59 日本
日本 60●66 チェコ
【2次ラウンド】
日本 59●86 スペイン
ブラジル 93●91 日本
日本 64●65 韓国
【9-12位決定戦】
ギリシャ 59○63 日本
【9-10位決定戦】
日本 79●84 ブラジル

 2006年大会出場を逃していたため、2大会ぶりの出場となった2010年のチェコ大会。16チームによって争われた同大会で、日本は1次ラウンドをロシア、チェコ、アルゼンチンと同グループとなる。当時、国際大会の実績から、1次ラウンド突破にはアルゼンチン戦が山場と目されていた。

 そのアルゼンチン戦は序盤から接戦の様相に。後半には一時リードを広げた日本だったが、アルゼンチンの怒とうの反撃に遭うと、試合終了間際には1点ビハインドと追い込まれてしまう。しかし、ラストチャンスに大神雄子(現・トヨタ自動車アンテロープスヘッドコーチ)のブザービーターのシュートが決まり、59-58と劇的な逆転勝利をおさめた。ロシア、チェコには敗れたものの、1次ラウンドを1勝2敗とした日本は、2次ラウンドへと駒を進めた。

 とはいえ、1次ラウンドの成績が持ち越される2次ラウンドでは、対戦するスペイン、ブラジル、韓国から多くの白星を得ないと8チームによる決勝トーナメントには進めなかった。しかし、スペイン戦で完敗。ブラジル戦でも延長の末に2点差で破れると、アジア対決となった韓国戦では1点差で競り負けてしまう。結局、9-10位決定戦に進み、最終的には10位で大会を終えることとなった。

 だが、この大会では大神と吉田亜沙美(元ENEOSサンフラワーズ)の2ガードが躍動。速い攻めで相手を翻弄し、大神は得点、吉田はアシストでランキング1位に輝いた。

 さらに、久しぶりに戻ってきた世界大会で8試合を戦い、『経験』という財産を得たことも日本にとっては大きかった。これが1次ラウンド敗退であれば3試合のみだったため、大神がアルゼンチン戦で放った逆転シュートは、日本の未来へとつながるシュートだったといっても過言ではないだろう。なお、現在、キャプテンを務める髙田真希(デンソーアイリス)はこのときが初めてのワールドカップ出場であった。

■髙田、間宮、渡嘉敷がそろい踏みも悔しいグループリーグ敗退

渡嘉敷は3試合で平均11.3得点を挙げるも、チームを勝利に導くことはできなかった[写真]=fiba.com


ヘッドコーチ:内海知秀
メンバー:大庭久美子、髙田真希、間宮佑圭、山本千夏、宮元美智子、久手堅笑美、渡嘉敷来夢、栗原三佳、長岡萌映子、大神雄子、宮澤夕貴、王新朝喜

▼大会結果:14位
【グループステージ】
日本 50●74 スペイン
チェコ 71●57 日本
ブラジル 79●56 日本

 2014年のトルコ大会では、渡嘉敷来夢(ENEOS)が初参戦。前年の女子アジア選手権では43年ぶりにアジアチャンピオンに輝いたチームは、ガードの吉田がケガにより不出場ではあったが、Wリーグをけん引する渡嘉敷、髙田、間宮佑圭(元ENEOS /現姓は大﨑)のインサイド陣が3人がそろったことで期待も高かった。

 しかし、結果は14位。グループステージではスペイン、チェコ、ブラジルにいずれも2ケタ以上の点差を付けられての敗戦だった。

 日本は、ハードに当たる相手ディフェンスの前に思うようにオフェンスのでリズムを作れず。不完全燃焼のまま、わずか3試合で姿を消すこととなった。(※この大会より大会方式が変更になり、8位以下のチームによる順位決定戦も行わないこととなった)

■髙田、宮澤がけん引した2018年大会は9位で終える

15.0得点8.8リバウンドとともチームトップの成績を残した宮澤[写真]=fiba.com

ヘッドコーチ:トム・ホーバス
メンバー:長岡萌映子、藤岡麻菜美、水島沙紀、髙田真希、町田瑠唯、本橋菜子、藤髙三佳、馬瓜エブリン、根本葉瑠乃、宮澤夕貴、赤穂ひまわり、オコエ桃仁花

▼大会結果:9位
【グループステージ】
日本 71●84 スペイン
ベルギー 75○77 日本
日本 69○61 プエルトリコ
【ベスト8決定戦】
中国 87●81 日本

 トム・ホーバスヘッドコーチ体制となって迎えた2018年のスペイン大会は、渡嘉敷が不参加となったものの、髙田、宮澤夕貴(富士通レッドウェーブ)の奮闘が光った大会となった。

 大会方式は前回と同じで、まず16チームが4ブロックに分かれ、各ブロック4チームが総当たりのリーグを戦う。その結果、各ブロックの4位は敗退、2、3位はベスト8決定戦へ、そして1位は決勝トーナメントの準々決勝に進むため、日本はメダル獲得のためにも、グループリーグを上位で通過したいところだった。

 だが、初戦でスペインに敗れ、黒星スタートに。それでも、2016年のリオデジャネイロ・オリンピックで8位、2017年には女子アジアカップで3連覇と確実にレベルアップを果たしたチームは、2戦目では前評判の高かったベルギーを延長の末に破る。続くプエルトリコにも競り勝ち、予選ラウンドを2勝1敗と勝ち越した。だが、ベルギー、スペイン、日本の勝敗が並び、最終的には得失点差により、日本はグループリーグを3位で通過することとなった。

 準々決勝進出を懸けてベスト8決定戦に臨んだ日本。相手は同じアジアの中国だったが、中国はこの試合で56.2パーセントという確率で3ポイントシュートを決める。内外とバランス良く攻められてしまい、6点差で涙をのんだ。これで日本は9位に。過去2大会の成績は上回ったものの、2年後に開催が予定されていた東京オリンピックに向けて、多くの課題を得ての帰国となった。

 だが、その後の東京オリンピックでの活躍は周知のとおり。日本はこれまでもワールドカップでは幾度となく悔しい思いをしてきたが、それをバネに強化を図り、さまざまな経験をプラスに変えてきた。

 今や世界のなかでもメダル争いにしっかりと食い込む力を付けた日本。4大会連続出場となる髙田や2大会ぶりの出場となる渡嘉敷といったベテラン勢に加え、主軸を担うまでに成長した赤穂ひまわり(デンソー)ら若手・中堅の選手たちを含めた12人が目指す先は変わらない。東京オリンピックに引き続き、チーム一丸となって金メダル獲得に挑む。

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