Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
東京パラリンピックの初戦でコロンビアを63-56で破り、白星発進した車いすバスケ男子日本代表。この試合が意味していたのは、スローガンである「ディフェンスで世界に勝つ」を実現させるというチームの固い意志だった。
一方でコロンビアを50点台に抑えたことは、ディフェンスが機能していたことの証でもあった。フィールドゴール成功率で下回りながらも得点では上回っていた要因としては、ターンオーバーが9とコロンビアにシュートチャンスを簡単には作り出さなかったことが挙げられる。
後半にはファウルが混み、ディフェンスに定評のある川原凜が珍しく4つとファウルアウト寸前だったことは、今までにないことだった。藤本も第4クォーターの序盤で3つ目をもらっている。
しかし、これは決して日本のディフェンスの技術の問題ではないだろう。むしろディフェンスに自信を持っている日本が、ハードなディフェンスをしようとしている証だったのではないだろうか。そしてお互いが狭いスペースで激しく動くなかで、ほんのわずかなタイミングのズレや角度の違いによって、ともするとファウルを取られてしまう、そのギリギリのところで日本は勝負できるだけのスキルを持っているということの表れでもあったはずだ。
また、もう一つこの試合で感じられたのは、単に1勝を目指したわけではなかったという点だ。象徴的だったのが、藤本のプレーだ。藤本と言えば、アウトサイドのシュート力もある一方、日本では随一の高さを誇り、ペイントエリアでの激しい攻防を制してゴールにねじ込む迫力あるプレーが真骨頂とされる。しかし、この試合では11得点すべてがアウトサイドからのシュートによるものだった。
もちろん、藤本だけではない。スペースを広く使いながら、アウトサイドからのシュートチャンスを作り出すということがチーム全体に浸透されていた。そこには明確な狙いがあった。
「インサイドで攻めるということが、サイズのない日本にとって厳しいことは明確で、それよりもスペースを保ったなかで相手を引き出して崩していくというバスケットをこの1年で作り上げてきました。これまで以上に3ポイントも多く打っているので、それが入ってくれば一気に崩せると考えています。これまではインサイドの次にアウトサイドだったのが、今は逆にアウトサイドを中心とした攻撃をして、入らなければ早く戻ってディフェンスをするというバスケ。それができるという意味で“ディフェンスで世界に勝つ”をスローガンにしています」(京谷HC)
今後はディフェンスはもちろん、いかにアウトサイドのシュートの確率を高めることができるかがカギを握る。まずは2年前のリベンジを果たさなければならない韓国との第2戦に注目したい。
文=斎藤寿子