2020.03.31

ケガ人続出と選手・指揮官による信頼関係構築に苦しむブルズ/2019-20NBA通信簿チーム編⑥

ボイレンHC(左)の判断に不満をあらわにしていたラヴィーン(右)[写真]=Getty Images
フリーライター

新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019-20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。シーズン再開は早くても6月中旬から下旬にかけてと現地メディアが報じている中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階

2019-20シーズンNBA通信簿チーム編⑥シカゴ・ブルズ

イースタン・カンファレンス(セントラル・ディビジョン)
総合評価:D

■ここまでの戦績
今季戦績:22勝43敗(勝率33.8%/イースト11位)
ホーム戦績:14勝20敗(勝率41.2%)
アウェー戦績:8勝23敗(勝率25.8%)

■主要チームスタッツ(カッコ内はリーグ順位)
平均得点:106.8(26位)
平均失点:109.9(17位)
平均リバウンド:41.9本(28位)
平均アシスト:23.2本(23位)
平均スティール:10.0本(1位)
平均ブロック:4.1本(27位)
オフェンシブ・レーティング:105.8(29位)
ディフェンシブ・レーティング:108.9(13位)

フル出場したサトランスキー(右)と15試合以上を欠場したマルッカネン(中央)とカーターJr.(左)[写真]=Getty Images

■主要スタッツリーダー
平均出場時間:ザック・ラヴィーン(34.8分)
平均得点:ザック・ラヴィーン(25.5得点)
平均リバウンド:ウェンデル・カーターJr.(9.4本)
平均アシスト:トーマス・サトランスキー(5.4本)
平均スティール:クリス・ダン(2.0本)
平均ブロック:ダニエル・ギャフォード(1.3本)

■主な開幕後の選手またはコーチの動き
特になし

チームトップのブロックを記録するなどインサイドで奮闘したギャフォード[写真]=Getty Images

黒星先行が続き、エースと指揮官による考え方の相違が話題に

 開幕2戦を終えて1勝1敗となってからというもの、ブルズはここまでずっと負け越している。昨季まで2年連続でプレーオフ進出を逃しており、今後シーズンが再開されたとしても、その流れは今季も変わらないだろう。

 1月末から悪夢の8連敗を喫すると、そこからは1勝してまた連敗という黒星先行の流れ。昨季途中から就任したジム・ボイレンHC(ヘッドコーチ)を「解雇しろ!」という野次は会場内やSNSでファンが連呼するなど、チームケミストリーという面で見ても今後に不安を感じてもおかしくはない。

 もっとも、ボイレンHC自身は「自分の個人的な記録や勝敗は気にしていない。私は(フロント陣から)プレースタイルの確立や(試合への)取り組み方に規律をもたらすこと、チームにいる若いグループを成長させることについて聞かれてきた。私の中で、それはできていると思う」と2月下旬に『Forbes』へ語っており、チーム側から解雇されることはないだろうというスタンスでいる。

個人成績の面では自己最高の数字を残したラヴィーン[写真]=Getty Images

 ただ、2月23日のフェニックス・サンズ戦で、残り30秒で10点ビハインドという敗戦濃厚な試合終盤にボイレンHCがタイムアウトをコールしたことで「10点差で負けている試合でタイムアウトを取る必要はあるのか?」とエースのラヴィーンがツイートするなど、選手たちと良好な信頼関係を構築できているかという点で見ると、首を縦に振ることはできないだろう。

「チームとして最後まであきらめずに戦う姿勢を示すためだった」というボイレンHCの説明は、チームの方向性を考えれば理にかなっているのかもしれない。だが選手たちにその意図を理解させるべく、コミュニケーションの機会をもっと増やすべきだったのではないだろうか。

 今季を含めた直近3シーズンにおいて、勝率だけで見れば今季が最も高いとはいえ、4割にも届いておらず、プレーオフ返り咲きまでにはまだ時間がかかりそうだ。

主力選手たちがケガに泣かされる中、ラヴィーンとホワイトが活躍

 とはいえ、今季のブルズはケガに泣かされ続けた。65試合にフル出場しているのはトーマス・サトランスキーコービー・ホワイトのみで、主力として期待されていたオットー・ポーターJr.やラウリー・マルッカネン、ウェンデル・カーターJr.などが長期欠場に見舞われ、ベストメンバーで臨むことがなかなかできなかった。もし主力選手たちが健康を保った状態で今季を戦うことができていれば、10勝前後の上積みができていたかもしれない。

 その中で、ラヴィーンは今季キャリアハイの平均25.5得点を記録しており、3ポイント(平均成功数3.1本)にも磨きをかけた。昨年11月24日のシャーロット・ホーネッツ戦、残り45.4秒で8点ビハインドという窮地から決勝弾を含む3本の長距離砲を放り込み、大逆転劇の主役を演じたラヴィーンは、その試合でNBA歴代2位タイの1試合13本を決め切る超絶パフォーマンスを見せつけた。

 シーズン中盤まで好不調の波に悩まされてきたホワイトも、2月下旬からステップアップ。ベンチスタートながら3試合連続の3ポイント5本以上成功で30得点オーバーというNBA新記録を樹立。オールスターブレイク後はルーキー全体で2位の平均24.7得点と大暴れ。

 2月26日のオクラホマシティ・サンダー戦ではキャリアハイの35得点をマークし、ラビーン(41得点)と合わせて76得点をたたき出した。これにはラヴィーンも「彼はスペシャルな男だ。他とは違うやり方で得点できるし、(シーズンが始まってからも)成長し続けているよ」と試合後のロッカールームインタビューで称えていた。

 ここまでの戦績は決して称賛できるものではないが、ポジティブな面もいくつかあったことは事実。選手たちが健康を取り戻し、ボイレンHCとの信頼関係を構築することができれば、白星を増やすことができるのではないだろうか。

ケガ人続出の中、新人ホワイトが徐々に存在感を発揮していった[写真]=Getty Images

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