2023.04.14

キャリア14年目を迎えたハーデンが自身を客観視「俺はバスケットボールの達人」

バスケットボールマガジン『SLAM』のインタビューに応じたシクサーズのジェームズ・ハーデン [写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 NBAは年々、ショーやエンターテインメントとしての側面が色濃くなっているあまり、リーグ関係者やファンたちはジェームズ・ハーデン(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)が人智を超えたプレーヤーであることを忘れてしまった、または彼のクオリティに慣れすぎてしまったかもしれない。

 バスケットボールマガジンの権威『SLAM』で最新号の表紙を飾ったハーデンは、同誌のインタビューにおいて、代理人のトロイ・ペイン氏とともに自己分析やこれまでのエピソードなどについて赤裸々に語った。

 今シーズンの驚きは、2013年から10年連続で出場していたオールスターゲームにハーデンの姿がなかったことだ。シクサーズではジョエル・エンビードの制圧力ばかりが取り沙汰されるが、今シーズンのハーデンは1試合平均21得点10.7アシスト6.1リバウンドを記録し、アシスト王を受賞。コート上でタクトを振るった背番号1は紛れもなく、レギュラーシーズン3位の立役者だった。

「オールスター選外については、もう伝えた。敬意に欠けているよ。バスケットボールを理解している人のほとんどが俺の価値をわかってくれていても、俺の数字に飽きてしまう人もいるということだ」

 競争力に溢れるハーデンは今でも落選に対して悔しさをにじませたが、代理人のペイン氏は以下のように補足した。

「彼には落選を糧に、周囲が間違っていることを証明しようと勧めました。彼の感情は、飢えにほかなりません。落選を受け入れることはなく、選出されるに値すると感じていました。ジェームズが高得点を記録することには見慣れている一方、別のやり方で高次元な貢献をしても、それは十分に語られないのです」

 11年連続の平均20得点以上、3年連続の平均2ケタアシスト。これはリーグトップのポイントガードと評されるステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)やクリス・ポール(フェニックス・サンズ)でも成し得たことのない記録である。キャリア14年目を迎え、選手として完成の域に達したハーデンは、プレーヤーとしての自分をどのように客観視しているのだろうか。

「俺はバスケットボールの達人だ。対戦相手がどのようにガードしてきてもアジャストし、正確に対処する術を選択している。シクサーズでの役割は、2017年の頃とは異なる。ただし、アプローチは異なるものの、俺は2017年のハーデンと同様の選手であり、役割が少し変わっただけだ。今シーズンはコートリーダーとなり、みんなを巻き込みながら、自分の積極性を維持することが課題だった。簡単と言えば嘘になるが、チームの勝利のために必要なことは何でもやると心に決めている」

 今でこそ、ハーデンはポイントガードとしてのイメージが定着している。しかし、ヒューストン・ロケッツ在籍時代、指揮官を務めていたマイク・ダントーニヘッドコーチのコンバートに当初は懐疑的だったようだ。

 ペイン氏はハーデンがいかにコーチしやすく、柔軟であるかについて、この実例をもとに説明した。

「ある日、ハーデンは帰宅後、『コーチが俺にポイントガードをやれと言うんだ。ポイントガードだぞ? やるわけないだろう。彼が何をしたいのか、さっぱりわからない』と言いました。ですが、2回の練習を終えた後は『信じられない! 何だかできそうだ!』という感じでした」

「ハーデンのコーチングのしやすさは賞賛に値します。そうした状況に立たされると、彼は言われたことを理解し、チームを成功させる方法、自分自身を成功させる方法を考え出すのです。あとは時間の問題です」

ロケッツ在籍時、ポイントガードとして試合をコントロールするハーデン [写真]=Getty Images

 伝家の宝刀であるステップバックはNBAプレーヤーのシグネチャームーブとなり、率先して行う試合後のワークアウトでは背中でチームメイトを刺激する。試合にも文化的にも影響を及ぼしてきたハーデンには、満場一致で殿堂入りの未来が待ち構えていることだろう。

 ハーデンはキャリアを終えた際、人々の記憶にどのように刻まれたいかという『SLAM』の質問に対してこう答えた。

「プレーヤー史上最大のイノベーター」

 もしも10年後に“NBAに改革をもたらした選手たち”と題した特集が組まれたとすれば、そこには必ずジェームズ・ハーデンの名前があるに違いない。

文=Meiji

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