2023.05.01

『SLAM』が史上最高のスニーカートップ100を選出…1位は不朽の名作

『エア ジョーダン 11』はジョーダン氏が2度目のスリーピートの幕開けを飾った一足 [写真]=Getty Images

 バスケットボールはスポーツの垣根を越えて、文化として世界に多大な影響を及ぼしている。とりわけ、ファッションやヒップホップとは蜜月関係にあり、三者の化学反応は1990年代以降、エンターテインメントのメインストリームとして注目を浴びてきた。

 スニーカーは、三者をつなぎ合わせる上で重要な役割を担ってきた。また、NBAの歴史的瞬間や後世まで語り継がれるスーパープレーにおいて、バスケットボールシューズは選手たちの足元を支えた存在として記憶され、スニーカーはバスケットボールの美学の象徴として認識されている。

 バスケットボール誌の権威『SLAM』が展開する『SLAMKICKS』のスペシャルコレクション号では、史上最高のスニーカートップ100と題して、アイコニックなスニーカーをアーカイブ化。そして、数ある名作の中から栄えある頂点に輝いたのは『エア ジョーダン 11(AJ1)』だった。

 マイケル・ジョーダン氏(元シカゴ・ブルズほか)の登場は、NBAのあり方を一変させた。コート上では2度のスリーピートによる6度のNBAチャンピオンと2度のオリンピック金メダリストに輝き、個人の記録を挙げれば枚挙にいとまがない。また、コート外では自身の名を冠したブランドの展開で約40年もの間、消えることのない足跡を残し続けている。

SLAM』が最高傑作に選出した『AJ11』は、2度目のスリーピートの幕開けを飾った一足として知られている。1995-96シーズンに誕生した同モデルは、「フォーマルシューズのようなシンプルな一足」というジョーダン氏のリクエストを基に設計され、デザイナーのティンカー・ハットフィールド氏も「ベストデザイン」と胸を張る不朽の名作だ。

 ジョーダン氏は最初の引退前から、ナイキのデザインチームに輝きを放つシグネチャーをリクエストしていた。『AJ11』は彼の希望を忠実に汲み取りながら、スニーカーデザインの常識を覆す大胆なアップデートが施されており、その処女作としてベールを脱いだのがほかでもない“コンコルド”である。

ジョーダン氏の足元を支えた『エア ジョーダン 11 コンコルド』 [写真]=Getty Images

 当時としては革新的なパテントレザーの採用は、洗練された芝刈り機のボディや疾走感溢れる車のボディをイメージしてデザインされた。車とバスケットシューズは美しさとパフォーマンスという共通項を持ち、同氏は「シューズのランドが車のボディのように輝き、簡単に汚れを落とせるようにしたかった。車を何台か描いて、このシューズはまるでボディが輝いている車のようだと思った。ただし、トップが布でできたオープンカーだけどね」とのコメントを残した。

 また、『AJ11』のために開発されたフルレングスのカーボンファイバー製プレートは、ハットフィールドがアスリートの映像を確認した際、一部のシューズにオーバーフレックスを発見したことで考案されたアイデアだ。

 アッパーは、従来のレザーからナイロンコーデュラへと置き換えられた。これはキャンプ用のバックパックに長年使われている素材で、堅牢性に優れながらも、エナメルと並ぶ高級感を保つためにデザインチームが調達したものだと言われている。

 そして、シューレースの構造にも改革がもたらされている。ナイロンのウェビングループを搭載した独自のスピードレーシングは「靴紐を瞬時に結べるようにしたい」というジョーダン氏の提案を採用したもので、特徴的なシューレースはバスケットボールのネットに着想を得ている。

 以上のように、『エア ジョーダン 11』はジョーダン氏の希望やアイデアと、ハットフィールド氏の観察眼が集約されたシリーズ屈指の意欲作である。そしてこの年、ジョーダン氏は『AJ11』とともにブルズで72勝10敗というレギュラーシーズン歴代2位の記録を打ち立て、チームを優勝に導くとともに、個人としてオールスターゲームMVP、レギュラーシーズンMVP、ファイナルMVPの3冠を達成した。

 なお、同ランクにおいて、スニーカーの王様として君臨する『エア ジョーダン 1』は第4位にランクインした。

文=Meiji