2023.12.30

エンビードがウェンバンヤマを啓蒙「KDになりたいのか、俺になりたいのか」

エンビードが若き“怪物”にアドバイス[写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 新時代の黒船として、NBAの看板を背負うことが期待されているビクター・ウェンバンヤマ。新人特有の波はあるものの、18.3得点、10.6リバウンド、2.8アシストの平均ダブルダブルは十分すぎる成績であり、驚異的なウイングスパンを活かして1試合あたり3.0ブロックをマークしており、リムプロテクターとしてディフェンス面でも存在感を放っている。

 サンアントニオ・スパーズを率いる老将グレッグ・ポポビッチは、ウェンバンヤマの可能性を狭めないよう、コート上でさまざまな役割を与えている。『The Athletic』は、この可能性に満ち溢れた才能について、NBAオールスターたちに意見を求めた。中でも同じビッグマンとして長年鎬を削るであろうジョエル・エンビードの見解は、先輩選手らしい啓蒙的な内容だった。

「現在、彼は大変な期待を寄せられているが、彼はその期待に応えようとしている。僕にはそう見えている。たくさんの試合を観戦しているけれど、まず第一に、彼はどこでプレーしたいのかを見つけなければならない。ガードになりたいのか、ビッグマンになりたいのか、その他なのか。そして、彼がどうなりたいか、これが大切なんだ。KD(ケビン・デュラント)のようになりたいのか、それとも僕のようになりたいのか。はたまた、それらのすべてを組み合わせたような選手になりたいのか。今の彼のプレーは、すべてが少し強制されているように感じる。それは悪いことではないよ。なぜなら、上達する唯一の手段は、プレーから学ぶことだからだ。たくさんの間違いを犯して、そこから学ぶものだ」

「僕がうれしく思うのは、彼ら(スパーズ)が彼に間違いを犯させ、そこから学ぶことを許容していること。ただし、それには良い面と悪い面が存在する。ポジティブなのは、間違いから学べること。一方で、ネガティブなのは繰り返しになるけれど、若干の強制力を感じてしまうこと。いくつかのショットが良い例だね。彼はもっと気楽に、より簡単にプレーできるはずだ。身長が224センチもある。僕も学んでいる最中だけど、時には突っ込んでいって、誰かの上からショットを撃てばいい。場合によっては、そこまで一所懸命にプレーしなくても済むはずだ。まだまだ、修行の身。僕らは皆、同じような課題に直面しているんだ」

 ウェンバンヤマが前例のないユニークな存在であることは、リーグの誰しもが認めていることだろう。しかし、エンビードは、仮に類稀なスキルセットがあっても、成功につながるとは限らず、どのような選手になりたいのか、明確なビジョンを描くことがトップまで駆け上がる秘訣と考えており、時には自分のストロングポイントを活かしたイージーなプレーがストレスを緩和することを、身をもって体感しているようだ。

 エンビードは、NBA入りから2年間を休場し、今シーズンで実質8年目を迎えた。そのパフォーマンスは年々向上しており、現在は1試合平均35.0得点でリーグの得点ランキングで首位に立っている。2年連続のシーズンMVPも現実的な目標となった同選手は、未来のライバルに塩を送るかのように、アイデンティティがキャリアを手助けするとアドバイスを送ったのだ。

 また、怪物としての地位を確立したヤニス・アデトクンボは、ケアの重要性を説いている。

「身体をケアしろ。健康維持は、本当に重要なことだ。なぜなら、リーグでは多くの試合をこなさないといけず、同時に練習もしなければならないからだ。いろいろな消耗があるからこそ、身体をケアし、メンタルをケアする必要がある。君のスタイルを磨き続けてほしい。これらを守り、一貫性をもって取り組めば、きっと成功するはずだ」

 スパーズは現在、数年後の復権に向けて目の前の勝利よりも、成長に比重を置いている。ウェンバンヤマが先輩プレーヤーの声に耳を傾けて、選手としてのスタイルを確立したその日には、手のつけられないリーグ最大のトラブルになっているかもしれない。

文=Meiji

BASKETBALLKING VIDEO