2021.03.10

「一緒にスポーツ界を盛り上げていけたら」を有言実行。大河正明元チェアマンのスポーツ界への恩返し

現在は日本のスポーツ界の未来を担う人材の育成に尽力する大河正明氏(写真はご本人提供)
バスケットボールキングプロデューサー(事業責任者)

 2020年6月末にBリーグをけん引するバトンを島田慎二チェアマンへとつなぎ、同年7月からびわこ成蹊スポーツ大学副学長と大阪成蹊大学スポーツイノベーション研究所所長に就任した大河正明氏。現在は、新たなステージにおいて、これまでの知見を活かし、日本のスポーツ界の未来を担う人材の育成に尽力している。

 京都市出身の大河氏は洛星中学、洛星高校バスケットボール部に所属し、中学時代は全国ベスト4も経験。大学卒業後に三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。在職中に、Jリーグに出向の後に2010年に退行してJリーグ入り。混迷を極めたバスケット界の改革を断行する川淵三郎氏に請われ、2016年秋のBリーグ開幕に向けた実務を担うと、そのままチェアマンに就任した。チェアマン在任時を一言で言えばどうかと問われた大河氏は「夢中で走った5年でした…」と笑顔を浮かべる。

 大河氏は銀行員出身、Jリーグ常務理事という経験を活かしリーグ、クラブの経営基盤強化に辣腕をふるい、クラブライセンス制度の導入などにより、スポーツ界において課題としてあがることの多いガバナンスの強化を推進した。Bリーグで5年、常務理事などを務めたJリーグと合わせ、プロリーグの運営を10年以上経験した大河氏。JリーグとBリーグを比較してどのような違いを感じたかとの問いに対し、「BリーグはJリーグ開幕ほどのロケットスタートを切ることはできませんでしたが、(現在はコロナ禍の影響を受けているものの)スタートして4年目も右肩上がり」と、その確実な成長を実感した。

 続けて「日本代表も強くなりました。あの2018年6月29日、千葉ポートアリーナで行われた格上のオーストラリア戦にも勝ちました。日本のバスケットボール事業規模の進展とともに日本代表も強くなったと言っても良いでしょう。駆け上がるスピードはサッカーよりも早い」とその成長スピードの違いにも言及した。サッカー界、バスケ界と異なる競技の発展に貢献してきた大河氏は「これまでに培った知見を活かして還元したい」と現在の目標を口にする。

 大河氏が所長を務める大阪成蹊大スポーツイノベーション研究所では、社会人向けのスポーツビジネス講座『スポーツイノベーションアカデミー』を開講。スポーツビジネスに関わる経営人材を育むことを目的に人事・組織ガバナンスや経営戦略、財務・ファイナンス、マーケティングなどこれからのスポーツビジネスに必要な要素をしっかりと踏まえ、次世代を担う人材育成を行う内容となっている。2021年1月~3月期の募集は既に終了し、現在多くの受講生が、日本のスポーツの未来のために多彩な講師のナレッジを共有している。

大河氏は社会人向けのスポーツビジネス講座『スポーツイノベーションアカデミー』を開講(写真はご本人提供)


 大河氏は退任時のあいさつ「一緒にスポーツ界を盛り上げていけたらと思っております」の言葉どおり、スポーツ界の発展に寄与したその手腕を、次世代の育成に注いでいる。大河氏と、その人脈で集まった多士済々の面々の薫陶を受けた次世代のスポーツ経営人材が、日本のスポーツビジネス発展に寄与することを期待したい。

文=村上成