2023.12.27
2022年7月、京都ハンナリーズが新たなスタートを切りました。クラブ創立以来初のオーナーチェンジがあり、松島鴻太氏が京都ハンナリーズ運営会社であるスポーツコミュニケーションKYOTO株式会社の代表取締役社長に就任しました。京都ハンナリーズはどのように生まれ変わったのか。松島代表取締役社長、ホームタウン推進部の田中裕一氏に話をうかがいました。※本インタビューはB.LEAGUE HOPE(https://www.bleague.jp/b-hope/about/)に掲載された記事を転載したものです。
【インタビュー対象者】
・スポーツコミュニケーションKYOTO株式会社:代表取締役社長 松島 鴻太氏
・スポーツコミュニケーションKYOTO株式会社:ゼネラルマネージャー 渡邉 拓馬氏
――スペシャルオリンピックス日本とは知的障がいのある⼈たちに様々なスポーツトレーニングとその成果の発表の場である競技会を、年間を通じて提供し、社会参加を応援する国際的なスポーツ組織ですが、京都ハンナリーズはスペシャルオリンピックス日本・京都と連携した取り組みを実施しています。
渡邉 私はスペシャルオリンピックス日本のドリームサポーターを務めていますが、クラブでは松島社長がリーダーシップを取り、ホームタウン推進部の田中(裕一)さんをはじめクラブスタッフの方々が動いてくれて、要望があればすぐに応えられるような体制を常に準備しています。コミュニケーションをしっかりと取って、京都のためになることであれば動けるようにしています。
――参加者の反応はいかがでしょうか?
渡邉 私にはスペシャルオリンピックスの経験がありましたが、アスリートの緊張した顔やうれしそうな顔、ご家族の反応を見ると、やはりクラブとして取り組む重要性が伝わってきます。そういったシーンを選手やスタッフ、クラブスタッフの皆さんにも目の前で味わってほしいですね。見るだけではなく、その場にいて、その温度感を知ってもらうことが重要です。参加することで自分の価値観や考え方、人生のビジョンが変わると思っています。
――もともと松島社長はラグビー、渡邉GMはバスケットボールをプレーしてきました。現役のスポーツ選手が社会的活動に取り組むことについてはどのように感じていますか?
松島 クラブとして社会的活動に取り組むことは当たり前だと思っています。地域の皆さまの支えがあって、我々は存在していますから。そのことを認識すれば、地域の皆さまに感謝して、恩返ししていくことは当たり前の考え方です。プロスポーツ選手としてもバスケットボールをプレーすることと同じぐらい重要な取り組みだと思っています。
今になって振り返れば私自身は選手時代、オフコートで真のプロフェッショナルではなかったのかなと。競技に関わる部分では胸を張って言えるほどの努力を積み重ねましたが、家族や友人など身近な人以外の応援してくれている方への恩返しはできていませんでした。クラブを経営する現在の立場になると、本当に多くの方に様々な形で支えていただいていると改めて気づかされました。
プロスポーツ選手として競技に向き合うのは当たり前ですが、真のプロフェッショナルは応援してくれる方々に感謝して、次世代の子どもたちに夢や感動、明日への活力をお届けできる人だと思っています。勝利を追い求めるのは大前提ですが、オフコートも同じような位置づけで取り組む。こういったことに気づいている選手と気づいてない選手では、これからのキャリアの歩みが変わってくると思います。競技を引退してから気づくのでは遅いので、京都ハンナリーズでは私が様々なアプローチで伝え、カルチャーを醸成し、選手達が真のプロフェッショナルになれるように導いていきたいです。
渡邉 私も若い時は周囲のことより自分のパフォーマンスを優先していました。ただ、年齢を重ねていくと、毎年応援してくれたり、アウェーの試合にも来てくれたり、最悪のパフォーマンスでも声を掛けてくれる。そういったことを経験して、自分1人でやっていけるわけではないんだなと痛感しました。
キャリアの終盤に差し掛かると、立ち振る舞いや、チームへどのように貢献できるのか考えるようになると思います。ただ、それにいつ気づくのか。周囲の人が言っても理解できることではないと思っています。私が選手たちに言うより、気づけるような環境を提供して、考える時間が少しでもできればいいのかなと。今シーズンは若い選手が多く、言いたくなることはありますが、自分で気づいて、自分のものにしていってほしいです。
――渡邉GMは現役引退後、多方面で活躍してきました。社会的活動で思い出に残っているエピソードはありますか?
渡邉 2つあります。1つは特別支援学校を訪問し、障がいがある子どもたちとバスケットボールをプレーした時、受け入れる気持ちでいれば人に伝わるということを感じました。僕の顔や髭を触ってくるような子もいましたが、そういったことを受け入れながら接していたら、バスケットボールのことを好きになってくれます。実際、試合を観戦したいという子もいましたからね。
もう1つはスペシャルオリンピックス日本で世界大会に行った時、ご家族が観客席ですごく喜んでいる姿を見たこと。これまでご家族は子どもたちが表舞台に立つことをあまり想像していなかったと思いますが、表舞台に立ち、ご家族が心の底から喜んでいる姿を見て、こういった活動を日本も積極的に取り組んでいかないと、スポーツが盛り上がっても文化として染みつかず、形だけのものになってしまうのかなと思います。
自分が思うことはもちろん大切ですけど、そういった思いを持つ人を見つけて、共に取り組んでいくことが大事です。その輪が大きくなっていけば、バスケットボールだけではなく、スポーツ界、地域全体にも伝わると思っています。
――社会的活動に取り組むようになったきっかけを教えてください。
渡邉 子どもたちと接する機会があった時、自分のことを知らない子でも、サインをもらいに集まったりして、「自分にも何かできることがあるんじゃないか」と気づかされました。前所属チームでは主に東京での活動だったので、そこを飛び出して、全国で取り組んだら何かきっかけを与えられると思い、バスケットボールの楽しさ、スポーツの魅力を伝えられる活動に取り組み始めました。
――自分自身で一番大事にしていることは何ですか?
渡邉 まずは勘違いしないこと。自分が特別ではないということをすごく意識しています。様々な人がいて、様々な考え方があるので、批判されることもあれば、文句を言われることもある。そういった時は自分から一歩下がったり、距離を置いたりしがちなんです。できるだけ歩み寄って、自分の考えと違うことを言われても本気で話すように意識しています。
――地域を盛り上げることもプロスポーツの役割です。選手、フロントの両方を経験した渡邉GMは、スポーツが持つ力についてどのように感じていますか?
渡邉 スポーツはきっかけを与えられる唯一のものだと思っています。試合を見て、バスケットボールや選手のことを好きになってもらうのはもちろんですが、皆さんの人生に影響を与えられるのがスポーツであり、バスケットボール。そういった意味ではバスケットボールに対しても、人に対してもより真剣に向き合わなければいけません。
今後も京都ハンナリーズの活動に、是非ご注目ください。
※「NEKONOTE PROJECT」については特設サイトをご覧ください。https://hannaryz.jp/report/detail/id=18920
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