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『B MY HERO!』
前回王者の明成高校(宮城県)が敗れた。「SoftBankウインターカップ2018 平成30年度 第71回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子準々決勝で帝京長岡高校(新潟県)に60-69で敗れたのである。
帝京長岡のケイタ・ガンディオウラ(3年)に制空権を握られ、そちらに注意を向けると神田龍一のドライブや品川廉椎(ともに3年)の3ポイントシュートを決められる。明成も田中裕也(3年)の3ポイントシュートなどで追いあげようとするが、明成らしくないミスを繰り返し、点差を大きく縮められないままゲームを終えた。
そのなかでいぶし銀の活躍をしていた選手がいる。スモールフォワードの木村拓郎(2年)だ。
持ち前のフィジカルなディフェンスとリバウンド、要所でアーチの高いジャンプシュートを決めて、得点をつないでもいた。本人も「自分はドライブとか体を使ってチームを活気づけて、リズムを作ったり、勢いづけていくプレーヤーだと思っているので、ディフェンスとかリバウンドとか影のことをがんばっていきたい」と言っている。そういう意味では彼は自分のプレーを全うしていたと言っていい。一方で誰か1人が自分の仕事を果たしたとしても、試合に勝てなければその意味は薄れる。そう考えれば、彼も今日の結果には満足していないだろう。
「チームが大変な時に支える選手が強い選手だと思います。自分はチームが大変な時にがんばって、みんなを助けたいんです」
この負けはきっと木村をさらに大きくする糧になるはずだ。
派手なプレーヤーではない。得点を量産するタイプでもない。ただチームメートが攻めやすいよう絶妙なフロアバランスを取り、ドライブでチームの得点シーンを演出し、積極的にリバウンドに絡んでいく。いわば“玄人好み”の選手だが、だからこそ今の明成には欠かせない存在なのだ。帝京長岡戦でも4つ目のファウルをコールされるまでベンチに下げられることがなかったのは、佐藤久夫コーチに信頼を置かれているからだろう。
青森・藤崎町立藤崎中学校から明成高校に進路を決めたのは、中学生の時に見た明成の試合で佐藤コーチの情熱的なコーチングに触れたからだ。情熱的なコーチングはすなわち温かくも厳しい指導にもつながるのだが、木村はそれを歓迎している。
「先生が厳しく指導してくれているのは自分たちのため。だから素直に受け止めて、もっと強くなりたい」
187センチのスモールフォワードは体も心も強くして、来年こそはチームを再びの頂点に導きたいと考えている。
文=三上太