2021.07.27

飛龍をけん引する山本愛哉…“小さくて大きい”162センチのPGがコート上で輝きを放つ

勝負強さが光る飛龍の山本[写真]=伊藤 大允
フリーライター

 身長は162センチ。けれど試合を見れば、その存在の大きさが一目でわかるくらいコート上で輝きを放つ選手がいる。飛龍高校(静岡県)の山本愛哉(3年)だ。

 7月24日に開会式が行われた男子の「令和3年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」。飛龍は25日、駒澤大学附属苫小牧高校(北海道)との初戦を68−67でものにすると、続く2回戦では柴田学園高校(青森県)を10点差で破り3回戦進出を決めた。

 キレキレのドリブルに相手のブロックをかわすフローターシュートやダブルクラッチ、ステップバックから3ポイントシュートもある。たとえボールを持っていなくても、空いているスペースや味方を指差しながら指示を送って攻撃をコントロールする。

 山本は身長のハンディをものともしない得点力とテクニックに加え、気持ちの強さでもチームを引っ張り2試合連続で26得点をマーク。初戦では決勝点を挙げて熱戦に終止符を打ち、柴田学園戦でも幾度となくチームのピンチを自らの得点、アシストで救ってみせた。

 指揮を執る原田裕作コーチは、山本のすごさをこう語る。

「今年の中心は間違いなく山本です。去年から試合に出ているのは彼だけですし、気持ち、負けん気も強い。“小さい”ということをずっと背負って戦ってきているので、弱気になったら戦えないというのがもう体に染み込んでいるんだと思います。それが彼の精神的な強さになっていますし、『今年は絶対自分が決めるんだ』という気持ちもある。持って生まれたものに加え、自覚も出てきたと思っています」

山本は抜群のスピードとテクニックを持つ[写真]=伊藤 大允

 山本は毎試合のように自分より大きい相手とマッチアップし、さらには司令塔としての役目も担う。162センチの自分がコート上で中心になるためには、練習を重ねるだけでなく、常に工夫することも重要である。

「小さい選手がどうやって相手をかわしているのか、いろんな選手のプレーを見て、真似して、実際にやってみてという感じで日々練習しています。その中でもフローターシュートは1つの武器だと思っていますし、背が低い分スペースを見つけることも大事かなと。これからもっとシュートのバリエーションを増やして、ハンディを補っていければと思っています」

 プレー中は気持ちの強さがひしひしと伝わってくる山本だが、いざコートを離れれば思いのほか大人しい雰囲気だ。原田コーチによれば、コートにいるときといないときでは別人だという。

「実は普段はおっとりしています。教室ではいるのかいないのか分からないですし、クラスの生徒がプレーを見たらビックリするんじゃないかなと思います」(原田コーチ)

「バスケになれば切り替わります」。当の本人は笑って答えた。

 次の八王子学園八王子高校(東京都)との試合も接戦になるかもしれない。それでも、今のチームには2日連続で競り合いを勝ち抜いた確かな自信と、スイッチをONにした頼れる存在、山本がいる。

写真=伊藤 大允
取材・文=小沼克年

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