2021.07.29

仙台大明成を下した帝京長岡…エース島倉欧佑が攻防にわたってチームを初の決勝に導く

「長岡に優勝をもたらしたいです」と静かに闘志を燃やす島倉欧佑 [写真]=伊藤 大允
フリーライター

 試合終了まで残り16.7秒、スコアは74−73。

 1点のビハインドを追う仙台大学附属明成高校(宮城県)は、サイドスローインからの再開で逆転のシュートを狙った。託されたのはエースの山﨑一渉(3年)。左45度付近でボールを受けた背番号8は、ドリブルで1対1の態勢に入りミドルシュートを選択。放たれたボールは、リングに弾かれ205センチのコネ ボウゴウジィ デット ハマード(2年)がリバウンドをもぎ取った。

 7月29日の「令和3年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」男子準決勝、帝京長岡高校(新潟県)は最終スコア75−73で試合を制した。

「すごく嬉しいです。明成さんに勝てたことは自分たちにとって大きな一歩をもたらしてくれたと思います」

 仙台大明成との激闘を終え、そう喜びを口にしたのは帝京長岡の島倉欧佑(3年)。島倉の言葉どおり、この勝利はチームにとって“大きな一歩”と言える。

 昨年のウインターカップ王者でもあり、「格上だと思っていた相手」(島倉)に勝ったという事実だけでなく、帝京長岡はこの勝利で全国初の決勝進出を果たしたのだ。

「『胸を借りる』というか、全員が挑戦する気持ちで臨みましたし、緊張することもなく試合に入れました。明成さんの高さに臆することなく突っ込んでいけたのが大きかったと思います」と振り返る島倉は、得点源の1人としてチームを引っ張るエース的存在。この試合の第2クォーターでは相手にタイムアウトを取らせる連続得点や3ポイントを沈め、計23得点中前半だけで17得点をマークした。

 島倉はディフェンスでの貢献度も高い。平面の守備に加え、181センチながら制空権を握ってリバウンドを奪うことができ、準決勝を含めた4試合で「17」のオフェンスリバウンドを記録している。仙台大明成戦では、冒頭に記した場面で山﨑のディフェンスに入っただけでなく、勝負どころのリバウンド争いでボールをティップし、大月舜(3年)の逆転3ポイントを生み出した。

「ディフェンス、リバウンドともに選手たちが粘り強く戦ってくれました」と柴田勲コーチが言うように、全員の強い気持ちが強敵撃破と初の決勝進出をもたらしたと言える。ただ、その中でも40分間コートに立ち、計27得点21リバウンド8ブロックを叩き出したコネの存在は脅威であった。

「自分としては、本当に今日はコネがチームを支えてくれたと思っています。リバウンドを取ってくれたり、シュートもしっかりと決め切ってくれたりして本当に欠かせない活躍でした」と、島倉も後輩のパフォーマンスについて、やや興奮気味に話した。

「優勝して、長岡に優勝をもたらしたいです」。明日の最終戦へ向け、帝京長岡のエースは静かに闘志を燃やす。

 地元開催での初の偉業達成へ――。最後の相手は、同じく初優勝がかかる中部大学第一高校(愛知県)だ。

オフェンスだけでなく、粘り強いディフェンスも島倉の持ち味 [写真]=伊藤 大允

取材・文=小沼克年