2021.12.24

「啓生さんを超えられるように」…桜丘のエース松野遥弥、32得点の活躍も「次は40点」

チームトップの32得点を挙げ、勝利の立役者となった桜丘の松野遥弥[提供]=日本バスケットボール協会
フリーライター

「富永の爪の垢でも煎じて飲ませたい! 富永が帰ってきた時に飲めって言ったんですよ。でも、飲まないんです」

 昨年のウインターカップで洛南高校(京都府)に敗れた後、桜丘高校(愛知県)の江﨑悟コーチは冗談交じりに不満を漏らしていた。

 指揮官が言う「富永」とは、桜丘のOBで現在NCAA1部のネブラスカ大学でプレーする富永啓生。同選手が3年生だった2018年にチームはウインターカップ3位の成績を残しており、その原動力となったのが富永は得意の3ポイントシュートを武器に群を抜く得点力を毎試合披露した。大会を通じて総得点、3ポイントシュートとフリースロー成功数の3部門で1位にも輝いた。

 富永が卒業後、桜丘のエースを継ぐ選手として期待されてきたのが、現在3年生の松野遥弥だ。身体能力に優れる松野は跳躍力を生かして豪快なダンクシュートも叩き込めるが、「3点を決めたい子だから」と江崎コーチが話すように3ポイントシュートを自身の持ち味としている選手だ。

 12月24日、桜丘は初戦となった県立能代科学技術高校(秋田県)との「SoftBank ウインターカップ2021 令和3年度 第74回全国高等学校バスケットボール選手権大会」を95-92で競り勝ち2回戦へ進出。最上級生として冬の全国に戻ってきたエースは、この試合で合計32得点をマークする活躍を見せた。しかし松野は、試合後のミックスゾーンでは浮かない表情で取材に応じた。

「個人的には3ポイントの確率が悪くて、中のシュートも無理に打ってしまってファウルももらえずに終わってしまいました。笛が鳴らなくてもしっかり決め切らなきゃいけないですし、エースとしての仕事があまりできなかったです。数字だけを見たら点が取れているように感じますけど、やっぱり自分的にはまだまだ足りないです」

 この日の松野の3ポイントシュート成功率は、7分の1で約14パーセント。試合開始から2本連続で放ったものの、リングを射抜いたのは第3クォーターでの1本のみに留まった。「自分が入学した時に卒業してしまったんですけど、啓生さんとはつながりを持たせてもらっていて、今日の試合も『頑張れ、期待してるよ』と声をかけてもらいました」と松野は明かしたが、それに応えるようなプレーができず「もっと活躍したかったです」と表情を曇らせた。

 だが、挽回のチャンスはまだある。桜丘は明日、土浦日本大学高校(茨城県)との2回戦に臨む。憧れでもあり目標でもある偉大な先輩を追う背番号15は、チームの勝利を最優先にしつつも、「啓生さんを超えられるようにもっとハッスルしたプレーをして、次は40点」と気を引き締めた。

 文=小沼克年

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