2022.12.26
11月3日、満員に膨れ上がったアクシオン福岡でライバルを倒すべく、福岡大学附属大濠高校は1-3-1のゾーンディフェンスを敷いた。
「(福岡)第一さんをリスペクトしたうえでいかに戦うかってことを考えた時に、それが自分の中の答えでした」
声の主は福大大濠の片峯聡太コーチ。福大大濠は試合開始から194センチの湧川颯斗(3年)、2メートルの川島悠翔(2年)、204センチの渡邉伶音(1年)の3人が170センチに満たない轟琉維(3年)の視界を狭めるようにプレッシャーをかけた。
この日、福大大濠はライバルとの結果のみならず、選手間のパフォーマンスでも明暗が別れた。まず、福岡第一を脅かす原動力となったのが広瀬洸生(3年)だ。
鋭いドライブを武器とするシューティングガードは、果敢にリングへアタックし続け、前半だけで20得点をマーク。「相手の前からくるプレッシャーに対して切っていく勇気が必要だと思っていましたし、彼には試合前から『お前の役割だぞ』と伝えていました」という片峯コーチの期待に応え、計31得点の活躍を見せた。
広瀬(洸)の得点を影で支えたのが、センターの副島成翔(3年)だ。広瀬(洸)がペイントエリアに切り込んだ際、副島は相手のインサイド陣と身体をぶつけ合い、広瀬(洸)のシュートコースを作る役目を担った。「副島がしっかりとコンタクトをしてくれていたので、偶然ではなく必然的な得点を生み出すことができました」と指揮官が称えれば、広瀬(洸)をマークした城戸賢心(3年)は試合後、唇を噛んだ。
「本当は1対1で守る予定だったんですけど、やっぱりドライブが速かったですし、センターがブロックしていたのでヘルプにも行けない状態で……。ずっとやられてしまいました」
一方、片峯コーチが辛口の意見を述べたのは「13番のガードと14番のエース」に対してだった。前者は湧川、後者は川島である。
「まだまだ13番のガードと14番のエースがね。もう少しドッシリと構えてやってもらわないと。そういう意味では、やっぱり轟(琉維)くんの方がドッシリしています」
昨年のスモールフォワードからポジションアップを図り、今年はポイントガードを務める湧川は、まだまだボール運びや状況判断、ゲームコントロールに難がある印象を受ける。この日の第1クォーターではバックコートでスティールされると、相手を抑えこんでアンスポーツマンライクファウルを宣告された。そのあとにもバックビハインドパスを狙ってミスを犯し、「ハヤト!」と片峯コーチから呼ばれ、注意を受けた。
「ポイントガード・湧川」について、片峯コーチは「メンタル面でまだムラがあるというか、“お披露目したい感”があるのがすごくもったいない」と指摘し、こう続ける。
「今日もビハインドパスとかしていましたけど、そんなプレーは日頃していないです。相手からするとラッキーですよね。逆に小さい選手たちの方がそういうプレーは上手いですし、反応できる。湧川の良さは縦に切っていくことなので、それを相手に応じてドリブルでいくのか、パスをして自分の足で中に入っていくのかという判断ができないといけませんし、彼だったらできるのではないのかなと」
エースナンバーを背負う川島も、福岡第一のディフェンスを前に得点とリバウンドで存在感を放てず、せっかくもらったフリースローもポロポロと落とした。2メートルを誇る身体が、この日は小さく見えた。
「今日はドリブルでしかプレーの選択をしてなかったです。パスをして中に入っていくとか、あるいは他の選手がシュートを打った時にオフェンスリバウンドに行っていませんでした。そういったボールの絡み方ができないと、ただ能力のある選手で終わってしまう。その辺がまだまだですし、本人とまた話をして見極めたいと思います」
昨年優勝したウインターカップを振り返れば、湧川と川島は下級生ながらそろって大会ベストファイブに選出されている。アンダーカテゴリーの日本代表として国際舞台も経験し、すでに世界を見据えている2人は今年、福大大濠の柱にならなければいけない存在だ。
他の強豪校相手であれば、自身のポテンシャルを発揮できるかもしれない。ただ、最大のライバル相手にもそれができなければ、ウインターカップ連覇は夢で終わるだろう。
ウインターカップ本番までの約1カ月半で、福大大濠の2大エースが“漢”になれるか。今年の冬も日本一カッコいいチームになるためには、そこが最大のポイントになりそうだ。
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