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『B MY HERO!』
日本航空高校(山梨県)vs東山高校(京都府)。
この決勝カードを、一体どれくらいの人が予想できただろうか。
7月29日に行われた「令和5年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」の男子準決勝は、2試合ともに大方の予想を覆す“大荒れ”となった。
日本航空は今シーズン無敗の第1シードに土をつけ、東山は前回大会優勝校の第2シード相手に公式戦初勝利。日本航空は初めて、東山は2016年以来の決勝の舞台へ駒を進めた。
しかし、チームはここから勢いに乗り、第4クォーターで27-14と突き放して開志国際を撃破。ジェラマイアは4ファウルから踏ん張って“トリプルダブル”を達成し、なかでも12本記録したアシストは相手の守備とリズムを大いにかく乱させた。
大道一歩(2年)らのガード陣も一歩も引かず、4人の日本人選手が2ケタ得点をマーク。優勝候補から会心の勝利を収めた山本裕コーチは、「自分もびっくりしています」と笑みを浮かべ、強敵を退けた要因をこう分析した。
「相手が強いのは十分わかっていたので、選手には『楽しんだもん勝ちだよ』という話をしていました。緊張するのかなと思っていましたが意外とそうでもなく、会場の雰囲気にも呑まれることなく本当に楽しんでプレーしていました。それが一番だと思います」
初戦から3試合連続で70失点以下の相手に対しても、自慢の攻撃力を存分に発揮。東山はまず、セカンドユニットを送り出した第2クォーター中盤に10点リードを作り、前半で早くも49得点をマークした。
第3クォーターには相手を10点に抑え、攻めては瀬川琉久(2年)、佐藤凪(1年)のガードコンビが躍動。第4クォーターを前に70-47の大差をつけ、合計93得点を奪って福岡第一の連覇を阻んだ。
「公式戦で勝ったのは初めてですね。特に対策を練ってきたわけではないですけど、こっちが本来やらなければいけないことをしっかりできたことが勝因だと思います」
大澤徹也コーチの言葉どおり、東山は攻撃の3本柱である佐藤友が23得点、瀬川が28得点、佐藤凪が19点を記録。相手エースの崎濱秀斗(3年)には27得点を許したが、守備では小泉広翔(3年)を中心に崎濱以外の日本人選手を1ケタ得点に抑えた。
「ディフェンスからのブレイク」(福岡恭輔/3年)をスタイルに掲げる日本航空は、ゾーンディフェンスを織り交ぜた守備で相手の70点台に抑えたいところ。ゴール下では、準決勝で15リバウンドを記録した佐藤友への警戒を強めたい。守備から流れを手繰り寄せ、ジェラマイアを軸に多彩なオフェンスを披露できるか注目だ。
キャプテンの福岡は、「初めて決勝なので、楽しむことを忘れずに自分たちが持っている力を全部ぶつけて日本一を獲りたい」と意気込む。
対する東山は準決勝同様、一人ひとりが役目を全うして悲願の日本一をつかみたい。最大の武器である攻撃でカギとなるのは、アウトサイドからのシュート力か。ペイント内にはジェラマイアが君臨するため、瀬川、佐藤凪を中心に効率よく3ポイントを沈められるか。
攻守のキーマンとなる佐藤友は、「攻めの中心は瀬川と凪なので、自分はリバウンドや泥臭いことをやり続けたいです。相手にはジャンプ力もある留学生がいますけど、ひるまずに積極的にチャレンジしていきたいと思います」と奮起を誓った。
どちらが勝っても初優勝。試合終了のブザーが鳴ったとき、高校バスケ界に新たな歴史が刻まれる。
文=小沼克年
写真=伊藤大允