2023.11.21

桜花学園は大一番に敗れ準優勝…ラストプレーを悔やむ田中こころ「ここぞという時は自分が…」

桜花学園のエースを務める田中こころ [写真]=伊藤大允
フリーライター

 試合終了残り1秒、スコアは59-60。逆転を狙ったジャンプシュートは、無情にもリングに弾かれた。

 11月18日に国立代々木競技場 第二体育館で「U18日清食品トップリーグ2023」の最終戦が行われ、桜花学園高校(愛知県)と京都精華学園高校(京都府)が激突。勝った方が優勝を手にする大一番は、熱戦の末に京都精華学園に軍配が上がった。

 最後のシュートを放ったのは、2年生の阿部心愛。桜花学園がフロントコートに入ってラストオフェンスを仕掛けたとき、残り時間は10秒以上残されていた。相手のチームファウルは4つ。陣形を整えてからシュートまでのプレーをデザインできる時間だったが、最後は阿部が個でドリブルを仕掛けてジャンプシュート。試合後、長門明日香コーチは悔しそうに振り返った。

「相手をしっかり守って最後にチャンスが巡ってきましたけど、そこで『誰が行く?』という感じで探り合いになっている中で、そのまま試合が終わってしまいました。あの場面については試合が終わってからすぐにコーチ陣とも話しましたし、選手たちにも相手のファウルが溜まっていたし、誰かが強気で攻めなければいけなかったという話をして全員で反省しました」

 桜花学園は勝負の分かれ目で意思疎通を図れなかった。「ここぞという時は自分がボールを持ってプレーしなければいけないんですけど、マークが強くなったときに受け身になってしまって、最後は阿部に打たせてしまいました」。そう口にしたのは、ラストプレーで阿部にパスを出した田中こころ。自身の選択を悔やんだ彼女は、この試合でチーム最多の16得点7アシストを挙げた。しかし、3ポイントシュートの成功率は9分の2と精度を欠き、ターンオーバーも「6」を数えた。

「負けたのは自分のせい」。自らを責めた田中は、桜花学園の4番を背負う自覚と責任がある。昨年から持ち前のテクニックと得点力でスコアラーとして主力を担い、「自分は去年から試合に出ているので経験もあります。その分プレーで引っ張ることはもちろん、黒川と一緒に声でもチームを引っ張ることを意識しています」と、今年は黒川心音とともに二人三脚でチームの先頭に立つ。

 大会2連覇を逃した以上に、今夏のインターハイ決勝で敗れた相手にリベンジできなかったことが悔しくてたまらない。けれど、65ー88と大差をつけられた夏からの手応えを感じられたことも事実だ。6勝1敗で今大会を終えたが、失点数は最も低い397点(1試合平均56.7点)。桜花学園は大会を通じて高い守備力を見せつけた。

「勝つためにみんなで頑張ってきたので悔しいです。ただ、夏からの成長は見せられたと思うので、選手には下を向いてほしくないですね」

 長門コーチと同じように、田中も7試合を通して自分たちの強みを発揮できたことについては胸を張った。「夏からディフェンスの部分をレベルアップできるように全員で取り組んできたので、そこはすごくよかったと思っています。下級生も含めて全員が桜花学園というプライド持って戦えたと思うので、この経験をしっかり糧にしてまたウインターカップに向けて頑張りたいと思います」

ウインターカップに向けて、チームの成長に手応えを感じているという [写真]=伊藤大允


 夏のインターハイに続き、今回のトップリーグも準優勝。タイトル獲得には、あと1勝が重くのしかかった。「3度目の正直、本当に勝つしかないです」(長門コーチ)。桜花学園は1年を締めくくる「SoftBank ウインターカップ2023 令和5年度 第76回全国高等学校バスケットボール選手権大会」に照準を合わせ、死に物狂いで日本一を獲りにいく。

文=小沼克年