Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
「早く戻れよ!!」
立て続けに速攻を繰り出される自軍のディフェンスに嫌気がさし、普段はクールな男がコート上で感情をあらわにした。3ポイントシュートを決めても、首をかしげる場面もあった。
「やっぱり勝ちたかったので……。普段は言わないですけど、みんな下を向いちゃってていましたし、自分らしいプレーもできていなかったのでここは1回言うべきかなと思って言いました」
そう振り返ったのは、美濃加茂高校(岐阜県)の後藤宙(3年)。チームは12月26日に行われた『SoftBank ウインターカップ2024 令和6年度 第77回全国高等学校バスケットボール選手権大会』の3回戦で敗れ、日本一の夢が絶たれた。
延岡学園高校(宮崎県)との一戦では第2クォーター中盤から徐々に引き離されると、第3クォーターの10分間も14−24と流れを変えらなかった。最終スコア67−81で完敗。今回のウインターカップは第2シードを獲得したが、わずか2試合で大会を去ることになった。
「もうちょっとやりたかった気持ちはあります。けど、今回は結果よりも最後まで美濃加茂らしいプレーができるかどうかを重視していたので、結果は残念でしたけど良かったと思います」
今大会に臨むにあたり、美濃加茂は203センチ101キロの体格を誇るエブナ フェイバー(3年)の不参加が決まった。「直前だったのでチームとして仕上げる時間があまりなかった」と後藤は悔しさをにじませたが、延岡学園戦では2年生のアブドラ ムハマドがフル出場を果たして12得点18リバウンド。同じく2年生の鈴木陸音は初戦で12得点を挙げて爪痕を残し、後藤は「厳しいチーム状況の中でもベンチメンバーがよく頑張ってくれた」と後輩をねぎらった。
高校最後の大会は不完全燃焼のまま終わってしまったかもしれない。しかし、この1年を振り返れば今夏のインターハイでチーム史上最高の準優勝を成し遂げ、初出場の「U18日清食品トップリーグ2024」でも2位。後藤とフェイバー、そしてキャプテンの藤田大輝らの3年生は、美濃加茂に新たな歴史を作った“歴代最高の代”と言える。
「本当にいろいろありましたけど、最高でした」。この1年の思い出が走馬灯のように頭の中を駆け巡った後藤は、「思い出すだけでも泣きそうなんですけど、とりあえずまだ……」と込みあげるものをグッとこらえた。だが、「ちょっとやばいです……」とすぐに顔と目を真っ赤にした。
それでも次第に吹っきれたような笑顔を見せ、「とりあえず楽しかったです。辛いこともありましたし、うれしいこともありました。多分辛いことの方が多かったですけど、それも全部踏まえて楽しかったなって」と美濃加茂での3年間に思いを馳せた。
後藤がコートでプレーするうえで大事にしてきたことは、「見ている人を楽しませること」。美濃加茂の歴史を引き継ぐ後輩へ向けては、こんなメッセージを送った。
「結果を残していろんな舞台に立たせてあげることができました。今年はチーム間の仲が良かったので、コミュニケーションの大切さも後輩たちに残せたかなと思います。やっぱり楽しんでプレーすれば自分たちに流れを持って来れますし、観客の方々も自分たちのこと応援してくれるかもしれないので、来年も見ている人を楽しませられるように頑張ってほしいですね」
文=小沼克年