2024.01.13

『DREAM HOOP PROJECT in 沖縄』が開催…トップアスリートが“夢”をテーマに中学生へ授業

[写真]=Hamataro
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 1月12日、中城村立中城中学校で日本生命保険相互会社主催の『ALL BASKETBALL ACTION DREAM HOOP PROJECT in 沖縄』が開催された。DREAM HOOP PROJECTではトップアスリートが特別授業とバスケットボールクリニックを実施。夢を持つことの大切さや仲間との支え合いなどをテーマに、子どもたちが将来を考えるきっかけを提供する。

「B.LEAGUE ALL-STAR GAME WEEKEND 2024 IN OKINAWA」を記念し、2023年8月に続いて沖縄県での開催。今回はプロジェクトのレポーターを務めた麒麟・田村裕氏が1日の模様をお伝えします。

◾️3つのグループに分かれて夢授業、バスケットボールクリニックも開催

[写真]=Hamataro

 プロジェクトには今村佳太琉球ゴールデンキングス)選手、桂葵(Düsseldorf ZOOS)選手、堀内翔太(伊丹スーパーフェニックス)選手が参加。今村選手が学校を訪れると、その情報を聞きつけた生徒たちが続々と控え室の前に集まってきました。「さすが、キングスのエース!」。1年生が3つのグループに分かれ、「10年後の自分」をテーマに夢授業が行われました。

 まずは桂選手の授業に参加。彼女は名門桜花学園高校出身で、早稲田大学4年次にインカレで優勝とMVPに輝いた“超エリート”です。大学卒業後は一般企業に入社しましたが、2018年に3年のブランクを経て、3x3で競技に復帰しました。

 授業の挨拶では中城中学校出身で、彼女の後輩にあたる砂川夏輝(アイシン ウィングス)選手の名前を挙げていたのが印象的でした。生徒たちと同じ中学校からプロ選手が誕生していて、その選手と大学時代に一緒にプレーしたのが自分なんだと。桂選手のすごさがわかるというか、生徒は最初に距離感をつかめたと思います。生徒に対してありのままの自分を出していて、すごく好感を持っただろうと思いながら見ていました。

[写真]=Hamataro

 今村選手は今でこそ国内屈指の選手ですが、長岡工業高校、新潟経営大学と、学生時代に全国のトップレベルを多く経験した選手ではありません。ただ、今は言わずもがな琉球ゴールデンキングスをBリーグ初優勝に導いたエース。生徒たちにとっては地元のスターですから、琉球ゴールデンキングス、今村選手の人気の高さがうかがえました。

 また、授業を通じて、彼は人と話すのが好きなんだろうなと感じました。自分から積極的に話し掛けて、その受け答えがすごく上手でした。もともとなのか、それともプロバスケットボール選手になり、エースとしてチームを引っ張るようになって変わっていったのか。すごく気になりました。

 堀内選手は大学時代に負ったケガの影響から車いすバスケットボールを始めた選手。日本代表強化指定選手に名を連ね、「杭州2022アジアパラ競技大会」では金メダルを獲得しました。「パリ2024パラリンピック」を目標に努力を続けています。

 堀内選手の授業では、前に出て自身の夢を語った女子生徒も。「Bリーグのマネジメントに関わりたい。そのためにバスケットボールを頑張りたい」と誓った彼女に拍手が送られました。堀内選手はすごく面白く、3人の中で一番ボケていた一方、僕が出演した番組の名前を挙げてくれて、すごくやりやすかったです。言葉のチョイスがうまく、説得力があって、生徒たちも真剣に耳を傾けていました。

[写真]=Hamataro

 夢授業を終えると、次は男女バスケットボール部と希望者が参加したクリニックへ。2人1組で行うウォーミングアップ、速さを競うドリブルなど、アスリート3人が基礎を中心に教えていきました。一番盛り上がったのは男女分かれてのシュート対決。規定の点数を早く決めたほうが勝つというミニゲームで、ハンデを受けた女子チームが男子チームに勝利しました。敗れた男子チームは体育館を3往復ダッシュの罰ゲーム。今村選手、堀内選手になぜか僕まで…。44歳なのに全力ダッシュでした。短い時間でしたが、参加した生徒にとっては貴重なひとときになったでしょう。

◾️プロジェクトを終えて子どもたちへメッセージ

 すべてのプロジェクトを終えた選手、生徒(クリニックのみ参加)、先生の声も紹介します。

「夢授業を通じて、生徒たちがお互いの夢を共有する姿も良かったです。バスケットボール選手になるだけではなく、バスケットボール関係の仕事に就くという子もいました。琉球ゴールデンキングスや沖縄アリーナの影響もあって、沖縄ではバスケットボールに関わる仕事が想像できているんだろうなと。夢や自分が思い描く未来は、毎日の積み重ねでしかないと思います。自分が好きなこと、自分が頑張れることを探しつつ、自分の得意なことをどんどん伸ばしていってほしいし、それが夢につながってくると思います」(桂選手)

「(このような機会は)すごく新鮮でした。夢を持っている子が多く、それは素晴らしいことだなと。僕自身は学生時代に無名で、キャリアがない中でプロバスケットボール選手になりました。それでもキャリアは関係なく、置かれた環境でのアプローチ次第で、夢や目標をつかめることを見せたいと思っています。自分のプレーでいい影響、夢や希望を与えられるようにこれからも頑張っていきます」(今村選手)

「このようなプロジェクトに参加するのは初めてでした。僕自身は昔、消極的な人間でした。そういった子たちも何かをきっかけに、夢を追いかけてほしいです。(子どもたちには)知っている世界をなるべく広げ、いろいろなことにチャレンジして、夢の実現に向けて頑張ってもらいたいです」(堀内選手)

[写真]=Hamataro

「すごく緊張しましたけど、選手の皆さんがすごく優しく、フレンドリーに教えてくれたことで楽しくプレーできました。(私の夢は)テレビ局で働くことです。家族や友だちとテレビを見るとすごく楽しいし、人を笑顔にする仕事に関われるのはいいなと思っています」(2年・玉城果鈴さん)

「皆さんと交流できたのはすごく貴重な経験でした。(私の夢は)ウェディングプランナーになることです。結婚式の雰囲気がすごく好きで、そこに自分も関わって、人を幸せにしていきたいです」(2年・比嘉珠鈴さん)

「今日は楽しくプレーできました。今村選手は琉球ゴールデンキングスで一番好きな選手なので、学校に来てくれてとてもうれしかったです」(2年・上江洲生樹くん)

「(往復ダッシュには)自信があったのですが、今村選手がとても速くて驚きました。今村選手はみんなに優しくて、笑いもありました」(2年・糸数優助くん)

「今日は生徒の目がキラキラと輝いていました。トップアスリートの素晴らしい話を聞くことができ、生徒たちにとっては意味のある講話になったはずです。クリニックに参加した生徒は雰囲気を知るという意味でも貴重な経験になったと思います。教員の立場として、子どもたちが夢を叶えられる環境を作っていきたいです。(1年学年主任・宮里忠先生)

「学校だけでは限られたことしかできませんが、日本生命さまの協力もあってトップアスリートの方々に来ていただきました。子どもたちが喜ぶ姿を見て、今回のプロジェクトを実施できてとても良かったです。私は教頭という立場ですので、職員がより快適に働ける環境にしていくことが今後の目標です」(教頭・那覇史人先生)

 今日は1日を通じて、子どもたちからパワーをもらいました。トップアスリートに対するテンションで接してもらったので、僕もスーパースターになった気持ちで楽しかったです(笑)。僕は子どもが好きなので、子どもたちと触れ合って、彼らの人生において少しでも意味のある時間になれば、という思いでした。僕ができることは少ないですけど、子どもたちに話せることは話そうと思っていました。

[写真]=Hamataro

 子どもの時、身近でない人に会うのは印象に残ることです。今日のプロジェクトで出会った子どもたちはバスケットボールに関わらなかったとしても、何かの分野でトップアスリートのような存在になりたいと思うはずです。いい刺激しかないと思うので、できることならこのメンバーで全国各地に行ってあげたいくらいです。トップアスリートと触れ合った子どもたちがいいエネルギーを持って、同世代の子たちにそれを伝えていき、広まっていくといいですね。

 僕は苦しい人生を過ごしてきて、夢を持つことだけが心の支えだったというか、「いつかこの状況を変えてやるんだ」という思いで生きてきました。若い子たちにはいろいろなことに挑戦して、いろいろな経験を積んで、失敗も成功もしながら人生を送ってほしいです。

[写真]=Hamataro

取材=麒麟・田村裕
構成=酒井伸