2021.12.24
相手はアジア屈指の強国である中国。厳しい戦いになることはわかっていたものの、黒星が2つ付いた、というだけでなく内容的にも課題、修正点が数多く残る出来だった。
まずオフェンス面で言えば、1戦目で63点、2戦目で73点と当初目指していた80点台に乗らず、低調だった。
ホーバスHCは日本女子代表でも採用した、5人の選手がアウトサイドから攻める「ファイブアウト」のスタイルを男子でも採り入れている。
この戦法では中に大きく空いたスペースに対してペイントタッチを仕掛けることで相手ディフェンスを収縮させ、そのままリングをアタックしたりキックアウトパスからの3ポイントシュートによる得点が基本となるが、今回は中国の高さとガード陣による前からのプレッシャーによりなかなか中に切り込むことができなかった。また3ポイントも本数こそ打ってはいる(2試合平均で33.5本)が、良いリズムで打てたシーンは少なかった。
2戦を通してのフィールドゴール成功率は37.4パーセント、3ポイントのそれは22.4パーセントだったが、この確率では当然、勝利を遠くしてしまう。
日本のやろうとしていたことは中国も当然、スカウティング等を通じてわかっていたと思われる。中国は日本のガード陣に対してのオンボールプレッシャーをかけ続けることでリズムを崩し、ペイントアタックや速いパス回しといった日本がやりたい展開に持ちこませなかった。
中国がそうしたことをしてくること自体は想定内だったとホーバスHCは話したが、出だしから相手に翻弄された1戦目の後には、自軍の選手たちがそこに対応できていなかったことがその原因だったと振り返った。
ディフェンスも、2戦目には相手に106点も与えてしまうという屈辱を味わい、現段階では穴の多いところを露呈した。
ジョウ・チーやワン・ジェーリンといった210センチ以上の選手を数人抱える中国に高さの利があることは、戦前から(というよりもこれまでも常にそうだったが)わかっていたが、今回の2試合ではむしろグォ・アイルンやジャオ・レイといった向こうのガード陣に苦しめられたことが、衝撃的だった。
2戦ともに出だしが悪くなってしまった原因を、ホーバスHCもそこに求めた。
「我々は中国のガード陣に対して正面から守りきることができず、度々、ペイントに侵入され、ディフェンスの形が崩れてしまうともう彼らのやりたいようにされてしまいました。こちらも異なるオンボールディフェンスを試みましたが…結局、向こうのガード陣を止められなかったことが痛かったと言えます」
このディフェンスでの苦戦が、オフェンスにも影響した。本来、日本は積極的なディフェンスで相手からボールを奪い、そこから速攻へつなげたいところだった。ところがそれがなかなかできずに、走るゲームが展開できなかった。
実際、ファストブレークからの得点は、中国が2試合合計で36点だったのに対して日本はわずか21点にとどまった。
比江島慎(宇都宮ブレックス)は、ホーバスHCのバスケットボールについて「恐らく誰もやったことのないスタイル」で「習得が難しい」と述べた。同HC自身も選手たちがこのスタイルに順応するのに時間がかかることは織り込み済みで「我慢しかない」と話している。
「このスタイルのバスケの練習が必要かもしれません。スタッフもこれから(何ができるか)考えて、選手たちとコミュニケーションを取っていきます」
我慢、というところでは、今回はホーバスHC自身がまずは最初の試合だったということで随分と自分を抑えたに違いない。
ただ、それも技術的な話しにおいてであって、覇気のないプレーをした者には――まだ東京オリンピックでの女子代表ほどではないにせよ――厳しい言葉を投げかけた。
例えば中国との2戦目。前日、出だしの悪さから相手にペースをつかまれ敗戦に至った日本だったが、この試合でも同様に相手の攻守でのプレッシャーに圧されてしまった。
まだ抑えていたとは思うが、ホーバスHCはそこに不満を覚えた様子だった。
「今日、我々は1時間ほどのシュート練習の時に、1試合目のどこが良くなかったのかを十分に話し合ったと思っていました」
今回、キャプテンに指名した富樫勇樹(千葉ジェッツ)や比江島慎(宇都宮ブレックス)といった東京オリンピックを経験し年齢も上の部類である選手たちには、プレーでだけではなく声を出して鼓舞してほしいと苦言も呈した。
こうしてホーバスHCの初陣は、惨敗という形でスタートした。ただ、万全に近いメンバーをそろえ同じヘッドコーチの指揮のもと、ともにプレーしてきた時間も長い中国と、新たなプレースタイルで多くがA代表のユニフォームに初めて袖を通した日本を比較して、即座に後者に「だめだ」と烙印を押すのは酷だ。
中国のトゥ・フォンHCも日本代表はホーバスHCへと移ったばかりで「転換の時期にある」と、今回の結果だけで判断をするのは公平ではないとし、時間を経て「もっと良い結果が得られるはず」と話している。
惨敗だと記したものの、両試合とも最悪の出だしの後、とりわけ後半はドライブも出てボールをフロントコートに運ぶ速さも増し、日本のやりたいテンポでできている時間帯もあった。
選手たちが課題として強調したのはむしろ精度についてだった。連動の精度、パスの精度、シュートの精度……。普段は異なるチームでプレーする選手同士であるだけに阿吽の呼吸を築くのは容易ではないが、女子代表はそれができたからこそオリンピックでの偉業をなし得た。
Window2は2月下旬。日本はチャイニーズタイペイとオーストラリアとの試合が予定されている。
「自分たちがやりたいバスケをするためにはこの2敗から学ばねばなりません。遠回りしている暇はありません」
ホーバスHCは、そう語気を強めた。
リーグ戦をこなしながら、再び短い事前合宿を経て突入することとなるが、その時にはどんな“アカツキファイブ”が見られるのか、お手並み拝見だ。
文=永塚和志
写真=伊藤 大允
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