2022.02.04
今シーズン、テキサス州のレンジャー短大からNCAA1部・ネブラスカ大へ編入した富永 啓生。ここまで全11試合に出場し、平均20分の出場で平均7.7得点、得意の3ポイントは33.9パーセントの成功率を挙げ、直近の3試合ではスターティングラインナップにも名を連ねている。将来のNBA入りも狙う20歳のサウスポープレイヤーに新天地での生活やNCAA屈指の強豪カンファレンスのビッグテンで戦うことなどについて聞いた(取材は日本の12月16日)
取材・文=永塚和志(Kaz NAGATSUKA)
――なるほど。一方で、自身が活躍することや数字を挙げることがチームを助けるとも言えると思います。現在の平均7.7得点、3ポイント成功率33.9パーセントというスタッツも含めたパフォーマンスについて、ある程度、満足しているのかそれとももっともっと上をと思っているのか、いかがですか。
富永 全然、満足はしてないですね。昔から言ってる3ポイントのパーセンテージを50パーセントにというのは目指して行きたいところで、それに比べたらまだまだ全然入ってないので。シーズン最初のほうでアジャストメントができてなかった部分もありましたけど、これからはほんとに練習したものをそのまま出して、自分のタイミングでシュートを打ってという感じでやっていきたいなと思っています。
――ここ3試合はスタメン出場をしています。プレータイムもシーズン序盤から徐々に伸ばしてきています。これについてはHCやチームの信頼が得られているからこそだと感じていますか。
富永 そうですね。コーチからの信頼はどんどん勝ち取っていけてるかなという実感はありますし、それがプレータイムに直結していると思います。自分は練習中からエネルギーを出して、声を出してっていう感じでやっています。(ネブラスカ大に来てから)1日もだらけた日はないので、そういうところはコーチからも褒められているところです。
練習中からシュートも決め続けてますし、それが試合で出始めたというところが今、スタメンで出させてもらっている理由かなと思います。ここは本当に続けていきたいですし、英語がそんなに得意じゃないので声を出してチームをまとめるようなことはできないですけど、(コーチ陣からは)声を出すリーダーのような感じでやってほしいとは言われてますし、それはやろうとしています。
――最初にスタメンになった際は直前に言われたのですか、それとも前もって言われたのですか。
富永 最初にスタメンになったのがインディアナ大戦だったのですが、その2日前くらいに言われました。その前の試合でノースカロライナステートと対戦したのですが、帰ってきからの練習で「次の試合、スターティングメンバーで行くからな」と言われました。
――なぜスタメンなのかの説明も受けたのですか。
富永 説明はされてないんですけど、その直近の試合でポンポンと調子が上がってきたというのもありましたし、あとはそれまでスタメンで出ていた子の調子が悪かったというのもあると思います。
――せっかく得たスタメン。今後もそこは譲りたくない。
富永 それはもちろん、そうですね。守り抜きたいです。
――エナジーという話が先ほどありましたが、富永選手のプレーぶりをみていると3ポイントだけではなく、ディフェンスでもハッスルしながらやっているという印象です。
富永 そうですね。練習中からハッスルしています。この高いレベルではすべての選手が1対1も強いですし、その中で「絶対に止めてやる」という気持ちで毎日練習していて、それが試合でも出ているという感じになっています。コーチ、スタッフ陣からもディフェンスのところの成長は褒められていますし、自分でも今、一番成長ができている部分じゃないかなと思います。
高校生の時まではとりあえずオフェンスだけやっていればいいや、みたいなのがちょっとあったんですけど、本当に上のレベルになるとそうはいかないので、ディフェンスもやらないといけない。チームディフェンスを徹底してやるのと、あとは1対1のディフェンスで練習しいてるものを出すだけという感じでやっています。
――4度の延長まで行ったノースカロライナステート戦(104-100で敗戦)では途中、両軍が乱闘となりネブラスカ大の選手は3人が退場となりました。富永選手のバスケットボールキャリアのなかで乱闘は初めてでしたか。
富永 あそこまでの乱闘は初めてでした。ああいう風になるのもアメリカ人の「得意な」ところで熱くなって手が出ちゃうっていうのもあると思います。試合後のミーティングでコーチが「ああやって退場となるのは良くないが、こういうのも勉強だし、よく最後までこの人数で戦い抜いた」という風には言ってもらえました。なかなか笛に恵まれなかったというのもあったのですが、そのなかで戦えたのは良かったと言われましたし、団結力が高まった試合にもなったと思います。
――3人制と5人制では当然、試合の性質がまるで違うわけですが、あれほど大きな舞台をネブラスカでのシーズンが始まる前に経験できたことは気持ちとしても度胸がついたのではないでしょうか。
富永 度胸は付きましたし、日本を代表してプレーしているということがやっぱり1番大きかったです。どれだけ多くの選手達がこのチームに入りたいのか――その気持も背負っていましたし、期待もプレッシャーもあったのですが、恩返しのためには楽しんでバスケットをやるだけかなというところがあったので、結果にはつながりませんでしたが、本当に良いチームメートと良いチームワークが取れました。多分、どのチームにも負けないくらいのチームワークがあったと思っています。
――ツイッターを拝見していると、その3人制の日本代表で一緒だった落合知也(越谷アルファーズ)さんなどとその後も仲良くされているようですね。
富永 そうですね。落合さんともたまに電話したり。「最近どうなの?」と聞いてくれたり。アイラ・ブラウンさん(大阪エヴェッサ)とか保岡龍斗さん(秋田ノーザンハピネッツ)とかともメッセージしますし、本当に仲良くしてますね。
――オリンピック後に日本女子代表を銀メダルに導いたトム・ホーバス氏が日本男子代表のヘッドコーチとなり、11月末にはワールドカップ・アジア地区予選の中国との2試合で初陣を飾りました。ファイブアウトのバスケットボールスタイルを導入しシューターを重視するホ―バスHCは富永選手のことを素晴らしいポテンシャルがあると話しています。ご自身ではホーバスHCの指揮する代表をどれくらい意識していますか。
富永 日本代表に入りたいという気持ちは変わらずありますし、ヘッドコーチが変わったというのは関係なしに自分が今、1日1日少しでも成長して日本の力になる、勝利に導けるような選手になりたいです。もちろん、プレースタイルで3ポイントが強調されるというところはあるんですけど、ディフェンスなどそれ以外の部分でも成長して、日本のレベルアップのための力になれたらいいなとは思っています。
――NBAの選手になりたいという目標にブレはないと思いますが、今、NBAとご自身の距離感についてはどう感じていますか。
富永 まだちょっと難しいところはあると思うんですけど、この努力を続けて、いつかNBAのスカウトの目に止まって、となったらうれしいです。このまま努力をし続けて、試合で良いパフォーマンスをして――本当に、それだけだと思いますね。
――ディフェンスの話もありましたが、NBAという最高峰へ行くために、最終的には一番得意な3ポイントが武器になると考えていますか。
富永 そうですね。NBA選手になるには何か一つ、誰よりも飛び抜けた武器が必要で、そうなると3ポイントが自分の最大の武器だと思っているので、そこは極めて、極めて、パーセンテージを上げて。あとは、疲れていてもディフェンスを振り切る能力もそうですし、3ポイントへつながるまでの過程もいろいろ工夫して、試行錯誤を重ねてやっていきたいです。
――富永選手は3ポイントラインから離れたところからの“ディープスリー”も打ちますよね。また通常の3ポイントとディープスリーを打つ時では効果が違うと感じますか。
富永 自分たちのチームとしてもワイドに広がってスペースを作るようなスタイルなので、必然的にディープスリーが増えてくるんですけど、試合の初っ端から打つのではなくて、自分が乗ってきたなという時にバーンと1本決めると相手からしたらダメージが大きいと思います。空いたらもちろん打つんですけど、タイミングも意識していますね。
――シーズンはまだ半ばですが、個人とチームの目標を教えて下さい。
富永 個人の目標としては3ポイントの成功率をもっと上げて、もっと、もっとアグレッシブにプレーして、オフェンスだけでなくてディフェンスや泥臭いところでもチームをヘルプできるような選手になりたいです。チームとしては今、負けが続いているんですけど、ここから挽回して、NCAAトーナメントに出られるように頑張っていきたいなと思います。
――NBAという目標も大きなものですが、NCAAトーナメントもまた夢舞台です。
富永 そうですね。NCAAトーナメントに行くことでまたNBAに行く確率も上がると思いますし、チームとしても自分としても、NCAAトーナメントでプレーしてみたいなという気持ちがあります。
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