2023.09.05
男子日本代表(FIBAランキング36位)は「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」で2次ラウンド進出こそ逃したものの、アジア勢の最高成績を収め、自力で「2024年パリオリンピック」の出場権を手に入れた。
日本は、前回大会、「2020年東京オリンピック」も白星なしと、国際大会で納得のいく結果を残せていなかった。しかし、渡邊雄太(フェニックス・サンズ)や富樫勇樹(千葉ジェッツ)、比江島慎(宇都宮ブレックス)などが背水の陣で臨んだ本大会は、3勝2敗で勝ち越し。チーム一丸となって最後まで戦い抜く姿勢は、日本のみならず、世界を熱狂させた。
FIBAもホスト国である日本の快挙を称えた。公式YouTubeにて「情熱は高さに勝る。日本はいかにして歴史を塗り替えたのか」と題した8分37秒の動画を公開。突出したサイズや才能があるわけでもない日本が見せた快進撃の秘訣に迫った。
FIBAは、トム・ホーバスヘッドコーチのバスケットボールを「情熱があり、速く、賢いバスケットボール」と評価。他国を凌駕する強い心と、ボールのために命を捧げる覚悟が、48年ぶりに自力でのオリンピック出場権獲得の原動力になったと分析した。
動画では、3人の“キーマン”にスポットライトが当てられた。その1人が、身長わずか172センチの河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)である。
贔屓目を抜きにしても、2022-23シーズンBリーグMVPのスピードに追いつける選手は1人としていなかった。日本のトランジションオフェンスは、福岡第一高校仕込みの河村が最も得意とするスタイルであり、小兵が敵陣を掻き乱して生まれた得点は数えきれない。とりわけ、カーボベルデ代表(同64位)にとって、河村の加速力は大きな悩みの種となった。日本はペイントアタックやスプリットアクションを織り交ぜた河村の巧みなゲームコントロールによって見事、勝利を手繰り寄せた。
また、FIBAはフルコートのプレッシャー、ダブルチームやトラップディフェンス時におけるボールへの執着心、ビッグマンのエディ・タバレスからターンオーバーを奪ったゴール下でのスティールなど、身長を補う河村の勘のいいディフェンスにも言及した。
日本のトランジションバスケットボールには、もう1人の功労者がいる。大会ベスト5に選出されても異論のないジョシュ・ホーキンソン(サンロッカーズ渋谷)だ。
5試合の平均は21.0得点10.8リバウンドにフリースロー成功率88.9パーセントで、貢献度もチームトップの「28.6」を記録。最終戦は40分フル出場し、時にはトップを走って速攻を決めきるなど、彼を抜きにして日本の躍進はありえなかった。
FIBAは、日本のオフェンスは河村とホーキンソンのピック&ポップをベースとし、試合の大部分がホーキンソンのスクリーンから組み立てられたと解説。高さという絶対的な武器を欠く日本にはスペーシングが不可欠であり、河村のドライブ、馬場雄大や比江島のカッティングは、28歳帰化選手による助けがあってこそだった。また、ポップアップからボールを受け取り、貴重な3ポイントシュートを成功させる場面も少なくなく、ホーキンソンはコート上の至る場所で相手の脅威となり続けた。
しかし、爆発力とチームに流れを引き寄せる影響力において、富永啓生(ネブラスカ大学)の右に出る選手はいなかった。平均プレータイムこそ20分に満たず、オーストラリア代表(同3位)戦は伝家の宝刀の3ポイントも振るわなかったが、勝利が絶対条件のカーボベルデ戦は8本中6本成功、6試投目までは成功率100パーセントと大爆発。ゴールデンステイト・ウォリアーズを彷彿とさせるスプリット・アクションや、ハンドオフからのクイックリリースを駆使して強心臓から放たれる長距離砲は、幾度となくチームを救った。
カーボベルデ戦の第4クォーターは、それまでの出来とは裏腹に、フィールドゴールを次々と失敗。大逆転を許すかもしれないという不安から、国民が固唾を飲んで見守った数分間だった。それでも、日本は誰1人として、諦めることはなかった。相手エースのタバレスを狙ってオフェンスファウルを引き出すと、渡邊がプライマリーディフェンダーを交わし、切れ込んだ吉井裕鷹(アルバルク東京)のキックアウトをコーナーで待ち構えたホーキンソンがしっかりと決めきり、ゲームセット。
フィジカルのミスマッチをスピード、組織力、そしてハートで押しのけた日本のバスケットボールは、世界中のファンを虜にした。YouTubeのコメント欄ではホーバスHCや、選手たちの献身性と努力が称えられ、パリオリンピックで八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)が合流すれば、大会でサプライズになるという予想も飛び出ている。
ぜひ、“AKATSUKI JAPAN”の魅力が詰まったハイライトから、本大会の熱狂をプレイバックしてみてはいかがだろうか。
文=Meiji
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