2023.09.04

パリ五輪出場権獲得の目標を達成した比江島慎が来夏に向けて誓い…「絶対に出たい」

五輪への意気込みを明かした比江島[写真]=伊藤大允
フリーライター

「うれしいですけど、疲れたなというか(笑) もう、いろんな感情ですよ。でも、本当にうれしいです」

 9月2日、「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」の17-32位決定ラウンドで、日本はカーボベルデと対戦。勝てば文句なしでパリオリンピックの出場権を自力で獲得できるという一戦に80ー71で勝利した。

 試合後、取材陣の前で第一声を冒頭のように発したのが比江島慎宇都宮ブレックス)だ。ワールドカップで17年ぶりの勝利となった8月27日のフィンランド戦後には「泣きそうになるぐらいうれしかったけれど、試合は続くので我慢しました」と語っていたが、このパリオリンピック出場を決めた試合でも、比江島に涙はなかった。

「多分、一人になったときとか、思い出したときに泣くんだろうなと思います」と、顔をほころばせた比江島。同時に、「日本が世界に通用するレベルに上がったことがうれしいです。若い世代の勢いもありますが、そこに携われたということは何より幸せ。もちろん、今まで代表活動を頑張ってきた選手たちの土台があって、僕はそれを受け継いでというか、そういった思いも背負ってやれたので、それもうれしいですね」と、またまた頬をゆるめた。

 パリ・オリンピックは来年夏。10月からはBリーグの2023-24シーズンが始まり、再び激しい選手選考へと身を置くこととなる。「今は考えたくないです(笑) 本当に疲れたし、ストレスもすごかったし」と、比江島は記者たちの笑いを誘ったが、すぐに「でも、絶対に出たいです、絶対に出たい。それは間違いないです。また勝ち抜きたいです」とも発した。

アジア1位記念のタオルを掲げる比江島[写真]=伊藤大允


「当落戦上にいるという意識は強く、毎日毎日、いつ落とされるか分からないというストレスを感じていた」という今年の代表活動だったが、「国を代表して戦い合う、プライドを懸けて戦うというのは、プレッシャーや責任も生じるのですが、その緊張感というのはこういった場面でしか味わえない。それに勝ったときの喜びは、なにものにも変えられないと思います。負けたときは落ち込みますが、こういった素晴らしい景色が待っているのなら、(代表活動を)続けたいなと思います」と、日本代表でのさらなる意欲を見せた。

 そのなかで若い世代の台頭は感じているようで、「僕たちのような経験のある選手が引っ張るのは大前提だと思うのですが、それよりも若い世代の勢いというのはすごい。あの年齢でこの大舞台で落ち着いてパフォーマンスするというのは考えられないです」と、河村勇輝(ビー・コルセアーズ)、富永啓生(ネブラスカ大学)らの奮闘を称えた。

 今回のチームでは、最年長として戦った比江島。「気づいたらですよ。僕が最年長というのは今でも慣れないし、ベテランといわれるのも慣れないです」と、苦笑いする。それでも、「(渡邊)雄太(フェニックス・サンズ)や富樫(勇樹/千葉ジェッツ)たちにリーダーシップがあって引っ張っているのは間違いないのですが、最年長としては自分なりにやったつもりなので、違う形で引っ張れたかなと思います」と、大会を振り返った。

世界大会での苦い経験を力に変えた選手たち[写真]=伊藤大允


「速い展開でズレを作ることができていたときは自分たちの時間帯だったので、それが40分間できなかったというのは、パリへとつながっていくものだと思います」と、カーボベルデ戦を振り返り、課題を語った比江島。

 全5試合に出場し、1試合の平均出場時間は14.7分。9.2得点2リバウンド1.6アシストという数字を残したが、その記録以上に大事な場面での得点など記憶にも残る大きな仕事をやってのけた。

「最高ですよね。前回大会は本当にどん底で、日本に帰りたくないという感じだったのですが、今はやり切った感しかないです」

 頼れる“チーム最年長”は、9日間の戦いを終え、充実感とともに笑顔でロッカールームへと戻っていった。

取材・文=田島早苗

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