2023.09.06
比江島慎(宇都宮ブレックス)が試合後もみくちゃにされた。根っからの愛されキャラは試合後、ロッカーに戻ってくるとミネラルウォーターのシャワーでずぶ濡れになった。
8月31日、沖縄アリーナで行われた「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」の17-32位決定ラウンド。グループOでは男子日本代表(FIBAランキング36位)がベネズエラ代表(同17位)と対戦し、86-77で大会2勝目を挙げた。
ベネズエラはアメリカ大陸予選で強豪アルゼンチンを破って本大会出場を決めたほどの実力のあるチーム。しかし、今大会では1次ラウンドではまさかの3連敗を喫し、17-32位決定ラウンドへの出場を余儀なくされた。それだけに世界ランク的にも格上だけに、日本にとってくみしやすい相手ではなかった。
事実ベネズエラはパスを回してインサイド、アウトサイドでノーマークを作り、確実に得点を重ねていった。そうして、第4クォーターにはこの試合で最大の15点ものリードを奪うが、ここまでは完全な勝ちペースだったと言えるだろう。
その日本の窮地を救ったのがチーム最年長の比江島慎(宇都宮ブレックス)だった。比江島は第3クォーター残り7分8秒に4個目のファウルを犯し、ベンチに下がらずを得なかった。しかし、第4クォーターのスタートでコートに戻った比江島が躍動する。
残り7分19秒に3ポイントシュートを決めると、5分38秒には河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)のアシストから3ポイントシュートを連続で沈める。2ポイントのジャンプシュートを挟んでまたもや河村からのアシストで3ポイントを決めると、馬場雄大のアシストを受けて速攻をバスカン。この瞬間、日本は逆転に成功し、沖縄アリーナのボルテージは最高潮に達した。
比江島はその後も3ポイントを1本決めて、第4クォーターだけで17得点をマーク。試合全体でもゲームハイの23得点をあげて、日本の逆転勝利の立役者に。何と言っても勝負どころの第4クォーターの働きぶりは誰もが「さすが比江島」とうなるものだった。
「チームを救うためにトム(ホーバスヘッドコーチ)さんは僕をメンバーに残してくれたと思っています。貢献できてうれしいです」と試合後のテレビインタビューで語った比江島。2019年のワールドカップ、2021年の東京オリンピックで未勝利だった悔しさを知る男がチームをけん引したのだ。
その後、ミックスゾーンで取材を受けていた渡邊雄太(フェニックス・サンズ)の横を比江島が通ろうとすると、渡邊が比江島の肩に腕を回して思いを爆発させた。
「ずっと言ってるんすよ。誰もマコ(比江島)は止められないって! マコが信じてくれないから! ずっと言っているのに! 今日は普通。あれが比江島慎です! 頼むよ、本当に!」
「ホント、あれが普通(のパフォーマンス)。何も特別ではないですよ」
と、渡邊に被せると、「毎試合やれよ」と、比江島の胸をたたき、取材陣の笑いを誘った。ちなみに比江島がチーム最年長だ…。
全国ミニバスケットボール大会、中学のジュニアオールスター、高校のウインターカップ、大学の全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)、さらにはBリーグ優勝に貢献。それだけに比江島は超絶のバスケエリートと言えるのだが、そんなところをおくびにも出さない性格だからこそ、誰からも愛される存在になりえたとも言える。
おめでとう!まこ!
What a game for Japan! 🙌#FIBAWC x #WinForJapan 🇯🇵 I #AkatsukiJapan pic.twitter.com/ARGG1sj5oV
— FIBA Basketball World Cup 2023 🏆 (@FIBAWC) August 31, 2023
「今日は本当に(シュート)タッチが良かったので打ち切ることさえできれば入ると思っていました」と比江島はコメント。「相手の足が絶対に止まってくると思っていました。そこでしっかりと走り切れたことが大きかったと思います」と試合を振り返った。
比江島は翌日の公式練習後の会見に登壇。改めてベネゼエラ戦での感想を聞かれたあと、渡邊や富樫のコメントに対して質問が及ぶと…
「僕はそんな選手ではないですから」
と、はにかんだ笑顔を見せたが、まさに比江島らしい佇まいがそこにあった。しかし、この男、パリオリンピックの出場が決まるカーボベルデとの大一番で、またもや大爆発する力を秘めているのだ。
文=入江美紀雄
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