2023.09.19

手探りの中でつかんだ自身の役割…川真田紘也が熱狂のワールドカップを振り返る

川真田紘也にワールドカップ、代表活動を振り返ってもらった [写真]=fiba.basketball
バスケットボールキング編集部

9月12日のBリーグ応援番組『B MY HERO!』では「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」の振り返りの特番が配信された。番組の中ではトム・ホーバスヘッドコーチ体制下で頭角を現し、多くのファンの心をつかんだ川真田紘也滋賀レイクス)のインタビューをオンエア。今回、その完全版を改めてお届けする。

インタビュー=入江美紀雄

黒子に徹した初のワールドカップで成長の糧となる悔しさを実感

まずワールドカップ初出場となった今大会、初戦のドイツ戦で沖縄アリーナのコートに立った瞬間の気持ちを教えてください。
川真田 日本代表になること目指してやってきました。ですから、琉球(ゴールデンキングス)との試合で、沖縄アリーナでプレーしたときとは違った気持ちというか。日本代表として、ワールドカップの会場である沖縄アリーナに入ったときはやっぱり特別感がありましたね。日本開催ということもあって、いろいろな人が応援に来てくれて、声を出して応援してくれたので、それで特別感は増しましたと思います。個人的にはあまり緊張することはなかったのですが、自分のプレーはまだまだだなと感じたところもあって。結果的にアジア1位でパリオリンピックの出場が決まったということで、僕にとっても歴史的瞬間に立ち会うことができましたし、すごくうれしく感じました。

代表活動を通じてどのようなことを学びましたか?
川真田 初めは代表での自分の立ち位置がわからなくて。する仕事というのはもちろんですけど、リバウンドなどビッグマンのプレーを代表でどう発揮していいのかわからないことも多くありました。それらがいい方向に向いたのが7月、ソウルで行われた韓国との強化試合の第2戦、勝てたあの試合です。そこでやっと自分の立ち位置がわかりました。そういった積み重ねが自分の成長につながったというか、泥臭くやってきたことが実を結んだのかなと感じますね。トムさんは基礎的な練習が多くて。ボックスアウト1つにしても「こうしよう、ああしよう」と言っていたので、そういった部分が身についたのかなと感じました。代表でそれが発揮できたので。今までも武器でしたけど、確立した武器というか、自信を持てる武器になったと感じます。

初のワールドカップで「自分のプレーはまだまだだなと感じたところもあった」という [写真]=伊藤大允


ホーバスHCは3ポイントシュートを中心としたオフェンスのスタイルを目指しました。川真田選手のプレースタイルとは違う部分も大きかったと思います。
川真田 他の選手は「3ポイント+自分の武器」を徹底するという指導だったと思います。僕に関しては3ポイントが免除というか、自分はそれが武器ではないので。自分以外の人たちは3ポイントを打てて、入れられる選手だとわかっていたので、自分はその選手たちをどう活かして、3ポイントを打たせられるのか。それが入ったら、自分も3ポイントを決めたような感覚というか。スクリーン1個でフリーができて、ハンドオフ1個でフリーができて、それで3ポイントを決めてくれれば、2人で取った3点という気分になりました。

大会期間中、もっとプレータイムが欲しいと思うことはなかったのですか?
川真田 もちろんメインでプレーしたい気持ちがありますけど、代表にいるときの自分の仕事は、控えとして、ジョシュ(ホーキンソン)を1分でも2分でもどれだけ休められるかにフォーカスしました。自分はハッスルプレーが持ち味だったので、そのハッスルをどれだけ見せて、ディフェンスしかり、リバウンドしかりで対抗できるのか。なかなかうまくできなかったですね。レベルが高くて。個人としてはかなり悔しいという気持ち。でも、悔しいからこそ、次に何が必要なのかはっきりとわかったので、この悔しさをバネにまた挑戦できたらと思っています。

しかし、ベンチでの盛り上げ役に徹した姿も注目を集めました。
川真田 西田(優大)はベンチですごく声を出していて。コート内の選手にはなかなか届かないかもしれませんが、その声が届いたとき、もしかしたら出ているメンバーの助けになるかもしれないと思ってやっていました。それに井上(宗一郎)、西田、僕らが派手なワイワイをしただけで、会場全体が盛り上がると思うんですよ。テレビを見ているお客さんもそれを見て盛り上がってくれるし、本当にチームも盛り上がります。もちろん試合に出ることも大事ですけど、出ていないときだからこそ、僕たちは何をするべきなのか。全力でチームを鼓舞することはできたと思いますね。

五輪出場が決まった瞬間、比江島選手に抱きついたけれど…

渡邊選手の「パリオリンピックへの出場権を獲得できなければ代表を引退する」という発言はどのように感じましたか?
川真田 僕たちは勝つつもりでいました。勝ったら雄太さんが引退する理由はないと思ったので。ある意味、そこまで深く考えていなかったですね。「引退させないぞ」という気持ちをもちろん持っていましたが、「勝てばいいだけの話だよな」と思いながら。だからこそ、勝つために何ができるのかということで、いろいろとやりましたけど。結果的に勝てて、パリオリンピック出場を決めて引退させなかったので、そこはすごく良かったと思います。

合宿中からチーム最年長の比江島(慎)選手と川真田選手とやり取りが話題になっていました。
川真田 僕がちょっかいをかけていますが、オフコートではノリノリで返してくれたんですよ。もちろんバスケとなると、すごく頼りになる先輩だと思っています。今大会でも強いメンタルを持って、何十点と点を取ってくれたじゃないですか。そういったメンタリティーもそうですし、技術の部分でも尊敬できると思っています。それは比江島さんだけではなく、富樫(勇樹)さん、馬場(雄大)さん、雄太さんといったベテラン組もそうですし、全員がそういったメンタリティーや勝負強さを持っていました。それは先輩だけではなく、河村(勇輝)や富永(啓生)といった後輩も関係なしに、みんながそういったものを持っているので、僕も見習わなければいけないところだと感じています。

比江島(右)を「すごく頼りになる先輩」と語った [写真]=fiba.basketball


カーボベルデ戦で勝利して、パリオリンピック出場を決めました。その瞬間、どんなことを考えていましたか?
川真田 最高でしたね。僕はとりあえず一番先に比江島さんに抱きつきに行きました(笑)。比江島さんは泣くかなと思いましたけど、案外いつもみたいにフワッとしていましたね(笑)。それにみんなは決まったのにケロッとしていて、俺のほうが泣きそうだったのにという感じでした。「歴史的瞬間やん」と涙があふれてきそうだったんですけど、比江島さんは思ったよりもケロッとしていたから「あれっ?」と思って。こんな感じなんだって。

B1復帰のシーズンとパリ五輪代表へのサバイバルがスタート

大会を終えて、周囲の反応に変化はありますか。
川真田 (試合が)地上波で配信されていましたし、結果も手伝ってか、バスケット熱は盛り上がったと感じました。すごくうれしかったです。大会を終えたあと、チームは関東組と関西組に分かれてそれぞれ帰っていったのですが、僕は伊丹空港に戻りました。ただ、伊丹はあまり盛り上がっていなかったですね(笑)。一緒の飛行機のお客さんにファンの方もいたようなので、写真を何枚か撮りましたけど、荷物を取って、ゲートを出たら「あれ」って。誰もいないと思って(笑)。そりゃみんなは羽田(空港)に出迎えに行くよねって。

滋賀に戻ってからはどうですか?
川真田 この身長で、この髪色なので。いろいろな人が「試合を見ました」、「感動しました」と言っていただいたので、改めてバスケット熱が盛り上がったと感じました。これをもっともっと盛り上げるために、次のパリオリンピックに向けてもっと勝っていく必要があると思います。1年未満の間にまた選手選考のサバイバルがあると思うので、そこでどれだけ自分が成果を残して、選ばれるのかが大事だと思うので、応援しくれる人がたくさんいるとわかりましたし、また頑張ろうという気持ちにもなりましたね。

レイクスにとっても大切なシーズンが始まります。
川真田  B2に降格したときの気持ちを知っている選手が何人かいます。あとは自分たちのバスケをして、B1に最短で上がれるかが大事だと思うので、そこに向けて今はチーム全体で頑張っています。

最後に日本代表を応援してくれたファン、Bリーグの開幕を楽しみにしているブースターにメッセージをお願いします。
川真田 日本代表を応援していただき、ありがとうございます。僕たちの目標であるアジア1位になり、パリオリンピックに出場できるのはファンの皆さんの応援があったからだと思います。テレビ画面から応援してくれた人も含め、全員の力があって達成できたことだと思っています。10月に開幕するBリーグには代表選手も出場しますし、面白い試合が多くあいますし、パリオリンピックに向けてもっともっと試合を白熱すると思います。これからも応援よろしくお願いします。ありがとうございました。

開幕するBリーグでの活躍を誓った川真田 [写真]=伊藤大允

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