2022.06.15

“Bリーグ→NCAA” 前例のない道を歩むケイン・ロバーツの今…「B2での経験は大いに助けになった」

NCAA初年度を終えたロバーツがTokyo Samuraiのショーケースに参加した[写真]=永塚和志
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019ワールドカップ等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。

 今月10日に行われた“Tokyo Samurai Top 30 Showcase”には、元同チームの選手で2021-22シーズンからアメリカNCAA・ディビジョン1(D1)のストーニーブルック大学でプレーするケイン・ロバーツも参加し、ひと回り成長した姿を見せた。

 前日に参加を決めたというロバーツだったが、ポイントガードとしてオフェンスを統率し、課題である3ポイントシュートを果敢に決めるなど、積極的なプレーで目を引いた。ディフェンスでも相手のビッグマンがファストブレイクからシュートを決めにいく瞬間に後ろからボールを弾きだすなど、躍動した。当人いわくシーズンが終わって以来の5対5のゲームだったとのことだが、久々にSamuraiのジャージーを身につけてのゲームを楽しんだ。

 日本人の母親とアメリカ人の父親を持つロバーツは、カリフォルニア州の高校でプレーした後の2020-21シーズンに、アマチュア選手扱いとしてB2・アースフレンズ東京Zに所属し、そこからのアメリカ・カレッジバスケットボール入りという前例のないルートをたどったことでも注目された。

 ストーニーブルックでの初年度シーズン、D1の中では中程度のレベルと言えるアメリカイーストカンファレンスでチームは18勝13敗の成績を残し、カンファレンス3位となった。ロバーツはうち15試合(1先発)に出場し、平均では8.3分の出場時間と出番は限られ、得点は0.9点、アシストは0.7にとどまった。

 しかし、1年生選手としてはチームのスタイルや自身の役割を理解し、周囲からの信頼を勝ち取らねばならないのが通常であり、ロバーツ自身も初年度を「学びの多い」シーズンだったと、実のある1年だったと振り返った。

「僕としては年上の選手たちをさしおいて多くの出場時間を得られるとは、ハナから考えていませんでした。だからといって壁に当たったとは思っていません。そこは(1年生としては)通らねばならない過程でしたし、僕個人はスキルを重視する日本でプレーしてきたわけですし、より身体能力が高く、強く、背が高くてダンクをしたりと日本とは違うプレーをする選手が多いので、アメリカの環境に慣れていく段階が必要だったんです」

 本人が言うように、徐々に出場機会を得ていったロバーツは、シーズン最終盤、3月21日のハートフォート大戦で22分コートに立ち、10得点3リバウンドとともにキャリアハイの数字を挙げた。同24日のマサチューセッツ大戦では、得点こそなかったものの、自身最多の26分間の出場を記録した。

「絶対にもっと出場時間を増やしたい」

2020-21シーズンはB2で56試合に出場した[写真]=B.LEAGUE


 アースフレンズでは、リバウンドを直接たたき込んだ豪快なプットバックダンクがSNSの影響で広まった。わずか1年とはいえプロリーグでの経験は、アメリカの大学でのプレーに対しての準備として「大いに助けになった」(ロバーツ)とした。しかし、日本のなかでは突出した身体能力を持つ彼も、アメリカではそれだけを武器にするわけにはいかない。ロバーツが言うように、身体的力量の高い選手は周りにいくらでもいるからだ。

 ストーニーブルックは来シーズンよりアメリカン・イースト・カンファレンスからコロニアル・アスレティック・アソシエーション(CAA)という格上のカンファレンスへ移籍する。よりフィジカルさが求められる新カンファレンスに移ることもあって、目下のところロバーツにとっての最重要課題は、アメリカのフィジカルなプレーに負けない体を作ることだ。秀でた跳躍力やスピードも、当たりに負けない体ができて初めて生かすことができる。

 元々、「きらい」だったというウェイトトレーニングも熱心にやっているそうだ。また、ストレングスコーチやアスレティックトレーナーはもちろんのこと、栄養士などの指導の下、食べるものなどにも気を使っているという。

「最後にストレングスコーチやアスレティックトレーナーと話をしてから、だいたい10パウンド(約4.5キロ)体重が増えたので、筋肉量がアップしたのだと思います」。ロバーツはうれしそうに、そう語った。

 1年生の年度では「GPA(平均評定)も良かった」と話すロバーツ。ニューヨーク州にある学校ではあるものの大都会のニューヨークからは程よく距離もあり、充実したキャンパスライフを送っているという。

 アメリカには6月25日に戻るという。バスケットボールの面では、2年生として迎える来シーズンへ意気込む気持ちは強い。

「絶対にもっと出場時間を増やしたいですし、1年生の時とは自分が大きく変わって、体もずっと強くなったのだとコーチ陣に示したい。この夏は、昨シーズンできなかったことに取り組んで、プレシーズンに入るまでには準備ができているようにしようと思っています」(ロバーツ)

 この年代の選手たちは1年だけでも大きく成長を見せる。ついこの間まで少年のようだったロバーツも、話しぶりがずいぶんと堂々としていることに気づく。将来は日本代表やBリーグでプレーしたいという目標のあるロバーツ。Bリーグを経由してアメリカの大学へ進学するという特異な道を辿っているが、人間としてもバスケットボール選手としても着実に成長をしているようだ。

[写真]=永塚和志


文=永塚和志

BASKETBALLKING VIDEO