Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
東京オリンピックまで1年を切った今、日本女子のトップリーグであるWリーグで戦う選手たちは、それぞれにいろんな思いを抱いてシーズンを戦っている。
バスケットボールキングでは女子日本代表でも主力を担う富士通レッドウェーブの町田瑠唯にクローズアップ。シーズンを通しての戦いに着目しながら彼女のルーツにも迫っていく。
第1弾のインタビューに続き、第2弾は西御料地ミニバス、緑が丘中学、札幌山の手高校、そして先シーズンをもって引退したが、富士通でも2シーズンをともに戦った高田汐織との対談を敢行。親友から見た小中時代の町田とは?
取材・文=田島早苗
写真=兼子慎一郎
高田 瑠唯は、とにかく足が速かったです。ミニバスに誘ったキッカケも足が速いからだったし、運動量も多かった。それと、頭を使うプレーをミニバスの頃からしていましたね。
BBK バスケットに誘ったのは高田さんだとか。
高田 私の兄がミニバスをやっていて、部員が少なくなったということでまず私が入りました。その時に私がクラスの友達を誘ったのですが、その子が瑠唯と近所で仲が良かったので、その子と私とで瑠唯を誘いました。
BBK それまではお互いに存在を知らなかった?
町田 そうですね。一緒のクラスになったのは3、4年生かな。
高田 そこからはずっと一緒。冬は雪が降れば、かまくらを作ったり、スノーボードに行ったり。暇があれば一緒に遊んでたよね。夏なら近くの川に行ってザリガニを取ったり、テニスに行ったり。
町田 外でしか遊んでなかったね。
BBK スキー場が家から車で約15分ぐらいのところにあるとか。
町田 はい。スノーボードは汐織がやっていたのがキッカケで私は始めたんですけど、汐織は上手かったですね。
高田 瑠唯のボードは当時最新のやつだったんですよ。踏んでカシャって足に付けるやつ。私のはそれよりも前の形式だったので、うらやましかったですね。
町田 でも、汐織の方がいいボードだったよね。
高田 サンタさんが買ってくれました(笑)
町田 私もサンタさんにお願いした!じゃあ、私のは最新のサンタさんだったのかな(笑)
高田 瑠唯も普通に上手かったですよ。ハーフパイプをやるエリアがあるんですけど、小学生の私たちはハーフパイプなんて出来ないから、真ん中をよく突っ切っていました。
町田 あったね(笑) 誰もいないから危なくはなかったんですよ。
高田 ぶつからないからね。
町田 夜のスノーボードもやったよね。あれは面白いし、人が少ないからいいんですよ。
BBK どっちかが『今日、行こう』と誘うのですか?
高田 そうです。電話して。
町田 携帯ないから家の電話だったよね。
高田 『もしもし、汐織です。瑠唯ちゃんいますか』ってね。
BBK そうするとどちらかの親が連れていってくれるわけですね。
高田 親が送り迎えできないときは、近所の雪が積もっている公園を走って。『筋トレ~』とかいいながら遊んで。それだけで楽しかったよね。
BBK 緑が丘中学ではミニバスの時に達成できなかった全国大会出場を果たします。
高田 中学に入ってから北海道を出る遠征が少しずつ増えてきて、その遠征を通して『やれているな』という実感はありました。
町田 秋田で強いチームが集まるカップ戦に出て優勝したよね。他にも北海道に東京の強いチームが来て試合をして。その時も全部勝ったよね?
高田 負けなかったね。
町田 そうやって全国大会に行く前に自信は付いていった気がします。
BBK その中で全国行きを決めた北海道予選などは印象に残っているのではないですか?
高田 決勝は北栄戦だよね。その時スタートの一人がねんざをしながら試合をしたことは覚えてるかなぁ。
町田 全国に行けるということよりも、試合内容が良くなかったから、あまり喜んでいなかったかも…。
BBK 内容にこだわったわけですね。
町田 全国レベルを意識していたからかな。逆に全中は負けて悔しかった印象があります。
高田 まったく覚えていないんだよね、全中。
町田 負けた試合で初めて5ファウルの退場を経験したし。決勝は会場で八王子一中(東京)が優勝したのを見ていたよね。
BBK 高田さんから見て町田さんが選手として今も変わらないところはありますか?
高田 基本的には負けず嫌い。でも、最近は感情のコントロールを自分でできていますね。
町田 思い出した(笑)
BBK 何かエピソードでも?
高田 中学の練習試合なんですけど、瑠唯が思いっきりファウルされて、でも笛が鳴らなかったんです。トップの位置でボールを取られたから相手のワンマン速攻みたいになって。そうしたら瑠唯はイライラしているし、負けず嫌いだから、すぐにディフェンスにいって相手のシュートをブロックして。さらに奪ったボールを今度はガーって運んで一人で攻めようとしたんです。それで私は『瑠唯、落ち着いて』って叫んでいました。
BBK ブロックできちゃうのもすごいですね。
高田 あれは“ファウル”ですね。
町田 いや、“ファウル気味”です。
高田 瑠唯は、昔はそういう感情を出していたんですよ。今は、感情をコントロールしているけど、当時はもう少し感情の赴くままにやっていました。
町田 …すごく迷惑かけたんですよ、ミニバス、中学ぐらいまでは。私は相手や審判にイラっとすると一人でやっちゃう癖があって。
高田 5人いるところに突っ込んでね。それでもシュートは決めてくるし活躍はするんだけど、ちょっと待てと。『瑠唯、瑠唯』って止めることは何度かあったよね。
BBK 今のプレーからは想像が付かないのですが。
町田 顔には出てはいないんですけどね。
高田 いや、出てるよ。
町田 そこは汐織だから分かるんだよ。基本は顔には出てはいないけど、プレーには出しちゃっていたというか。(イライラから)力が入ってすごいパスしたり。
高田 走っている味方に『走れ~』っていう強引なパスとかね。
BBK 本当に想像付かないのですが、感情をコントロールできるようになった理由はあったのですか?
町田 年齢を重ねたというのもあるし、『ガードとして』という思いが強くなったからですかね。
BBK ガードとしてどうあるべきかを考えたら意識的にコントロールするようになった?
町田 そうですね。
BBK 高田さんから見たプレーヤー・町田瑠唯は?
高田 瑠唯は正統派ガードかなと思います。得点に長けている、突破力があるとかいろんなガードがいるけれど、周りを生かせるガードは瑠唯だと思います。
BBK 高田さんもその中で町田さんから良いパスをたくさん受けた。
高田 そうです。
町田 汐織は合わせてくれるんですよ。
高田 確かに、引退した今シーズンは第三者として試合を見ているけど、「あー、今のはここでこう動いたら瑠唯はパスくれただろうな」とかは思う。
町田 汐織にはパスがばれる(笑)
BBK 今シーズンの町田さんのプレーを見ていて思うことは?
高田 大変だとは思うけど、もう少し点を取ってくれたらうれしいですね。瑠唯もそれは分かっていることだと思うし、周りからも言われてると思うけど。
BBK 引退した今は、日本代表でも活躍する町田さんをどう見ていますか?
高田 友達です。そこは変わらないですね。瑠唯に対して特別感というのはないです。
町田 汐織はずっとこういうスタイルというか、そう思ってくれることがうれしいんです。日本代表などで少し活躍すると対応が変わる人もいるはいるんですけど、汐織は違う。だから汐織の前だと自分らしくいられます。
BBK バスケットの相談などは今でもするのですか?
町田 ご飯を食べに行った時にチームの話とかしますね。
BBK 話しを聞いてもらいたい時に誘う?
高田 いや、それはないよね。でもなんとなくそんなタイミングの時に『ご飯でも行こう』ってお互いに気づいたら声をかけているというか。
町田 なんとなく分かるよね。
高田 それは富士通で一緒だったからではなくて、私がデンソーにいた時もオフには何かあったら自然と会っていたし。連絡取るタイミングは昔から変わらないよね。
BBK この先、どんな選手になってほしいと思っていますか?
高田 今と変わらないでいてほしいですね。それと、年齢も年齢だから大変なこともあると思うので、うまく省エネしながら。自分のプレースタイルを貫いてほしいですね。