2022.09.21

【W杯対戦国紹介】日本代表の初戦の相手は「母国の未来」を背負う20歳のエース、シカ・コネを擁するマリ

日本代表の初戦の相手となるマリ[写真]=fiba.com
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

■初戦のマリ戦は“絶対に落とせない試合”

 FIBAワールドカップ2022の初戦で対戦するのは身体能力とフィジカルの強さを持つマリだ。今大会はナイジェリアの棄権によって代替出場となった。FIBAランキングは37位と出場チームのなかで一番低く、ワールドカップにはグループラウンド敗退を喫した2010年以来2度目の出場となる。

 アフロバスケット(アフリカ大陸選手権)では2007年に一度優勝しているが、近年の2019、2021年大会ではナイジェリアに次ぐ2位。今年2月のワールドカップ予選でもナイジェリアに69-73で敗れており(レギュレーションの関係でアフリカ勢同士が同組になった)、近年はアフリカ大陸で2位という位置づけのチームだ。

 日本代表にとって、初戦のマリ戦は絶対に落とせない試合である。今大会は12チームを2グループに分けて総当たり戦を行い、各グループ上位4チームが準々決勝以降の決勝トーナメントに進む。グループラウンドでは2勝が必要になるため、マリは確実に勝利をもぎ取りたい相手だ。キャプテンの髙田真希はマリ戦の重要度をこのように語る。

「ワールドカップはどのチームも強豪で簡単に勝てる相手ではありませんが、重要視しているのは初戦です。初戦のマリに勝てば勢いに乗れるし、一つひとつの勝利が自信になっていきます。東京オリンピックでも初戦のフランス戦で勝ったことで自信を得て、勢いが出ました。国際大会において初戦はとても重要です」

■U19ワールドカップでは接戦の末に2連敗中

 警戒すべき選手は若きエース、#14シカ・コネ(190センチ)だろう。アフロバスケット2021で代表デビューを飾ったばかりの20歳。まだ代表歴は浅いが、すでにマリの顔となっている存在だ。今年2月のワールドカップ予選では平均16.7得点、10.3リバウンド、2.3スティールを記録し、この3部門においてチーム1位。フランス戦では66-77で敗れたものの、26得点、9リバウンド、5スティールをたたき出した。フィジカルコンタクトに強いポストプレーを発揮し、ディフェンスではスティールでチームの流れを変える役割も果たしている。

 若きエースを支えるのはガード陣。#8トウティ・ガンデガ(175センチ/31歳)は経験豊富なベテランガードで、アフロバスケット2019ではオールスター5を受賞。今年2月のワールドカップ予選でもチーム一となる平均4アシストを記録している。

 また、小柄ながら得点力のあるガード#50ジェネバ・ンディアエ(25歳/163センチ)もここ数年の国際大会でコンスタントな働きを見せている。インサイドでは#1カンコウ・クリバリ(187センチ/32歳)が存在感を示す。リバウンドに強い選手で、アウトサイドにパスをさばくアシストが光る。

経験豊富なガードであるガンデガ[写真]=fiba.com


 日本とマリはシニアの国際大会では初対戦となるが、コネ擁するマリとは2019年と2021年のU19ワールドカップで対戦している。2019年は7位決定戦で対戦して62-65で敗れ、2021年はグループラウンドで対戦して57-67で敗れている。

 両大会においてコネは日本戦を含めて大活躍で、2019年はリバウンド王(13.9本)を獲得し、得点も3位(15.1得点)にランクイン。2021年はマリを初の4位へと導き、19.7得点、14.8リバウンドの驚異的なスタッツで得点王とリバウンド王を獲得。大会オールスター5にも選ばれている。アンダーカテゴリーでその名を世界に轟かせたコネは、まさしく「マリの未来」となるべく存在と言えるだろう。U19ワールドカップでは2019年に東藤なな子が、2021年に平下愛佳が対戦しており、今回は雪辱戦となる。

2019年、2021年のU19ワールドカップで日本を苦しめたコネ[写真]=fiba.com


 今後はコネを中心にアフリカの脅威へと躍進しそうな勢いを持つのが初戦の相手マリである。現状では経験不足な面はあるが、フィジカルの強さについては警戒を強めたい。恩塚亨ヘッドコーチはマリ戦の展望をこのように語る。

「マリは大事な初戦と位置づけています。特にマリのフィジカルな部分は私たちにとって脅威。相手がペイントで強く体を当ててくる攻防に対し、私たちがその球際での戦いを制することが大きなポイントになります。コンタクトに負けず、気持ちでも負けないことを強調し、高いエネルギーで40分間、相手を削り続けて戦います」

文=小永吉陽子

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