2019.05.09

弱点克服で高まった初優勝の可能性 埼玉ライオンズ

3人の健常プレーヤーが加入して刺激を受けている埼玉ライオンズの篠田匡世(写真左から2人目) [写真]=斎藤寿子
フリーライター

 今年、最も“変化”と“成長”を遂げているのが、埼玉ライオンズだ。前回大会は3位だったが、11連覇を狙う宮城MAXの牙城を崩す最大有力候補の一つに挙げられる。

 ここ数年は、メンバーのほとんどが日本代表の強化指定選手入りするなど、個々の能力は非常に高く、日本国内ではトップクラスの実力を持つチームとして注目されてきた。

 しかし、ただ一つ、弱点だったのが、選手層の薄さだ。昨年は、5人の強化指定選手を有していたものの、登録メンバーは出場8チームの中で最少の9人。特にハイポインターは、大舘秀雄と篠田匡世の2人のみで、彼らはほぼ毎試合、フル出場を余儀なくされた。

 さらにライオンズは「走るバスケ」を武器とし、オフェンスとディフェンスを素早く切り替えるトランジションバスケのため、勝ち進み、試合の強度が高くなるにつれて、どうしてもスタミナの問題を抱えざるを得なかった。

 だが、今年は違う。昨年7月から日本車いすバスケットボール連盟では健常者の正式登録が可能となり、ライオンズには3人の健常プレーヤーが加入した。彼らは大学時代に車いすバスケのサークルに入り、技術を磨いてきた強者ばかり。チーム内競争が激化することで、大舘や篠田にとってはいい刺激となっており、さらに試合では彼らを温存することもできるようになったことが大きい。

 加えて、今年4月に大学に入学したばかりの18歳、赤石竜我の成長も欠かすことはできない。2017年U23世界選手権ベスト4メンバーの一人で、A代表デビューとなった昨年10月のアジアパラ競技大会では重要な戦力の一人として準優勝に大きく貢献した。これまで守備力が売りだった赤石だが、ライオンズではガードの役割も求められるようになっており、まさにチームの柱となりつつある。

 選手層の厚さと、若手の成長とが加わった今年のライオンズ。初優勝の可能性は十分にある。

文・写真=斎藤寿子

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