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5月3、4日の2日間にわたって、ポーランド・ズヴァウブジフで車いすバスケットボールの欧州クラブチャンピオンを決めるユーロカップ・チャンピオンズリーグのファイナル4が行われた。日本代表エースの香西宏昭が所属するRSVランディルは、前日の準決勝で敗れたものの、BSRアミアブ・アルバセテ(スペイン)との3位決定戦を制し、勝利で大会を終えた。「勝って終えられて良かったなという気持ちと、昨日の敗戦との悔しさが入り混じっている」と語った香西。各国の代表クラスがしのぎを削り合う厳しい戦いに臨んだ日本のエースの姿を追った。
前日の準決勝に続き、この日もベンチスタートとなった香西だったが、ティップオフからわずか2分後、早くもファウル2つ目となったフィリップ・ハフェリ(スイス)に代わり、コートに入った。香西は中盤、相手のハイポインターに立て続けにゴール下を割られ、引き離されかけたところで3Pを決めるなど、攻守にわたってチームに貢献した。
結局、第1クォーターは17-22と5点のビハインドを負ったが、指揮官は香西のプレーに良い感触を得ていたのだろう。第2クォーターは、香西が入ったラインナップでスタート。すると、その期待に応えるかのように、香西は開始早々に鮮やかなミドルシュートを決めると、さらにその1分後にはフェイントをかけてジャンプアップしてきた相手を巧みにかわした”技あり”のレイアップシュートで得点を挙げた。
そして、自らがシュートを打つだけでなく、アシストにも長けている香西だ。中盤、左サイドの高い位置で相手のディフェンスを引き付けると、すかさず逆サイドのベースライン際でフリーとなったニコ・トライミュラー(ドイツ)にパス。ボールを受け取ったトライミュラーは見事にミドルシュートを決め、チームに勢いをもたらした。
香西は第2クォーターの途中でベンチに下がったものの、その後の逆転へとつながる流れをしっかりと作った。そして、スタメンが出場した後半は、コートに立つことはなかったが、「ベンチでもやるべきことをやる」のみとばかりに、声を出してチームメイトを鼓舞し続けた。
試合は、第2クォーターの終盤で逆転したランディルが、そのまま試合の主導権を握った。大きかったのは、フリースローの成功率の高さだった。後半だけでも9本中8本という高確率で決め、リードを広げていった。
さらに第4クォーターでは、6分半もの間、相手の得点を許さなかった。これで一気に引き離したランディルは、81-64で勝利。昨年は準決勝、3位決定戦と連敗を喫したが、今年は勝利で終え、各国代表が揃う欧州クラブのトップ3に入った。香西にとっては、ドイツ・ブンデスリーガ6シーズン目にして2度目のファイナル4出場での初勝利となり、初めてのメダル獲得となった。
だが、決して喜びだけを感じていたわけではなかった。準決勝で大差で敗れたRSBテューリンギアとは、来週以降、今度はリーグチャンピオンの座がかかった戦いが待ち受けている。
「3位決定戦で勝てたことはもちろん嬉しいけれど、でも、それだけではなく、昨日の敗戦に関してはやっぱり悔しい。ただ、今日のような試合ができるということを示せたことは大きいと思っています」
試合後、ロッカールームではうれしさよりも悔しさをにじませているチームメイトたちの姿があり、決して銅メダル獲得に満足などしていない雰囲気を感じたという。
「あとは、練習の時からどのようにして準備していくかだと思います」
ちょうど1週間後の11日、ファイナルラウンドの第1戦がランディルのホームで行われる。東京パラリンピックに向けて来シーズンは日本国内で活動することを決めている香西にとって、2シーズンを過ごしたランディルのホームでのラスト―ゲーム。いつもと変わらず、コート上の内外で、最後まで戦い抜く姿勢を見せるつもりだ。
文・写真=斎藤寿子