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5月3日、ポーランド・ズヴァウブジフで車いすバスケットボールの欧州クラブチャンピオンを決めるユーロカップ・チャンピオンズリーグのファイナル4が開幕し、準決勝が行われた。日本代表のエース香西宏昭が所属するRSVランディルは、同じドイツ・ブンデスリーガで“因縁のライバル” RSBテューリンギアと対戦。前回大会覇者である相手に49-78で敗れた。ベンチスタートながら約22分間の出場時間を得て、チームでは2番目に多い9得点を挙げた香西。果たして、日本のエースはこの厳しい試合をどう戦ったのか。
近年は、ランディルとテューリンギアの“2強時代”が続いているドイツ・ブンデスリーガ。今シーズンも3つのタイトルすべてにおいてファイナルラウンドに進出を果たしたのが両チームだ。
その一つである欧州クラブ選手権。予選ラウンド、決勝ラウンド(クォーター・ファイナル)を勝ち抜いたトップ4チームが集結し、最後の戦いが繰り広げられるファイナル4の準決勝で激突した。
第1クォーター、序盤からランディルのディフェンスが機能した。高さのある2人のハイポインターがいる相手のインサイドへのケアだけでなく、アウトサイドから高確率でシュートを決めてくるローポインターのシューターへの素早いジャンプアップにも注力するなど、タフなシュートシチュエーションを作り出すことに成功。12-13と1点差ビハインドでの入りは、守備に重きを置くランディルにとっては、好スタートを切ったと言ってよかった。
しかし、第2クォーター開始早々に、ランディルは主力の一人が3つ目のファウルとなり交代を余儀なくされた。すると、すぐに指揮官は香西を投入した。主力のファウルトラブルによって、試合が動くことも予想される大事な場面。香西に託された役割は大きかった。
いつものように声でチームメイトを鼓舞し、スピーディなプレーでチームをけん引した香西。特にアウトサイド一辺倒になりがちだったオフェンスでは、いい動きが出てきていた。しかし、チーム全体的にシュートの確率が上がらず、せっかくのチャンスに得点を伸ばすことができなかった。
一方、第1クォーターではわずか2得点だった相手のハイポインターが目を覚ましたかのように次々とシュートを決め、テューリンギアが主導権を握り始めた。21-33と、ランディルは2ケタのビハインドを負って試合を折り返した。
後半に入っても、テューリンギアの勢いを止めることはできなかった。途中出場のベンチメンバーにも得点が生まれるなど、好プレーに沸き上がるテューリンギアに対し、ランディルはミスで失点を招くなど精細さを欠くプレーに、なかなか浮上のきっかけをつかめずにいた。そんな中、気持ちが切れかけるチームメイトを鼓舞するかのように、最後に一矢報いる好プレーを見せたのが香西だった。
香西もまた、この試合ではミスが多かった。ターンオーバー5は、ふだんの彼には考えられない数字と言っていい。しかし、ミスをしても、そしてどんなに点差が離れても、香西の気持ちにブレはなかった。最も象徴的だったのは、第4クォーターだ。香西はこの試合チームで唯一となった3Pを含め、14得点中7得点を挙げる活躍を見せた。
それだけではない。香西の“戦う姿勢”は、終盤にチームメイトの得点を生み出したアシストプレーにこそあった。ほんのわずかなフェイントを入れ、一瞬のタイミングのズレを作ったうえで味方にパスをしたそのプレーには、技術的な巧さだけではなく、どんな状況下でもそうした“ひと手間”を怠らない香西のメンタリティーが表れていた。
もちろん、香西にもチームメイトにも反省すべき点は多々あった試合であったことは間違いない。気持ちの部分も含めて、それらどう修正してくるのかが、次の試合では最重要課題となる。
昨年は準決勝、3位決定戦と連敗で終わったファイナル4のステージ。果たして、ランディルは今年、勝利で終えることができるのか。3位決定戦は、現地時間15時(日本時間22時)にティップオフだ。
文・写真=斎藤寿子