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12、13日の2日間に渡って、北九州市立総合体育館では「第23回全日本ブロック選抜車いすバスケットボール選手権大会」が開催された。国内での有観客での大会開催は約2年ぶり。参加した選手たちは久々となった実戦の喜びを噛みしめていた。今大会には、来年5月に大舞台を控える男子U23日本代表チームも参加。4試合を3勝1分とし、新戦力が加わったチームは大きな手応えを感じていた。
現在のチームには、2017年に行われた前回のU23世界選手権で4強入りした時のメンバーが4人残り、そのうち鳥海連志、赤石竜我、髙柗義伸は東京パラリンピックの銀メダルメンバーでもある。チーム一のシュート力を持つ19歳の古崎倫太朗を含めた4人に加えて、前回大会以降に台頭し、国際大会の経験を重ねてきたキャプテン宮本涼平、知野光希も中心メンバーだ。
また、2017年U23世界選手権のアジアオセアニア予選まではメンバー入りしながらも、6月の本戦には個人的な事情で出場が叶わなかった塩田理史も復帰。体の線の細さが目立っていた4年前とは異なり、筋力アップを図ったフィジカルからは「今度こそ世界の舞台で戦いたい」という並々ならぬ思いを抱き、トレーニングを積んできたことがひと目でわかる。もともとあったスピードにパワーを加えた力強いプレーで、チームの戦力となっている。
彼らとともにU23日本代表候補の強化合宿でもまれてきた伊藤明伸や溝口良太も、今大会で大きく成長した姿を見せた。クラス1.5の伊藤はスピードが持ち味。所属する宮城MAXは日本選手権11連覇中の強豪だが、日本代表を数多く輩出するチームにおいて伊藤が試合に出るチャンスはなかなかなかった。
しかし、ふだんの練習では世界と戦う先輩たちと同じレベルのメニューをしてきただけに、高いスキルを持つ。東京パラリンピックメンバーの古澤拓也、川原凜をはじめ、10人全員が強化指定選手の経験を持つメンバーがそろった関東選抜との対戦でも、伊藤のスピードはしっかりと通用していた。京谷和幸ヘッドコーチも「これからもっと彼のスピードを生かした戦略が考えられてくると思います」と語るほど、チームには欠かせない存在となりつつある。
一方、唯一のクラス4.5の溝口は高さが武器。九州選抜との初戦では、第3クォーターのスタートで起用され、リバウンドからのセカンドチャンスをモノにするなど、高さを生かしたプレーで3連続得点を披露した。京谷HCからも「頑張って走ってインサイドにアタックしていたのは良かったですね。もっと走力が身につくと、さらに面白い選手になると思います」と期待の声が寄せられた。
伊藤や溝口ら大会初出場の5人に加えて、7月のトライアウトで新たにU23日本代表候補入りした5人も今大会にエントリー。なかでも強豪の関東選抜相手に30-32と大事な局面となった第4クォーターで伊藤とともに鳥海、赤石、髙柗とのラインナップに選ばれたのが、最年少16歳の小山大斗だ。
試合直後には「コートでのことはまったく覚えていません」と吐露するほど緊張していたという小山。代表としての試合はこれが初めてだったうえに、いきなり東京パラリンピックメンバーの中でのプレーに、何も考えられなかったという。シュートを得意とする小山に、先輩たちがシュートチャンスを作るも、一度も決めることはできないまま、5分間の出場にとどまった。
しかし、翌日に行われた近畿選抜との第4戦では、しっかりと落ち着いてプレーする姿があった。第3クォーターで再び鳥海、赤石、髙柗、伊藤とのラインナップでコートに出ると、今度は10分間フルでプレーし、6得点を挙げる活躍。そのうち2本は二対二から伊藤がディフェンスにピックをかけた隙に、ベースラインをドライブで切り込んでシュートを決めるという技ありのシュートだった。立て続けでの同じ形の攻撃だったため、練習してきたのかと問うと、まったくの初めてで試合中に伊藤との連携において咄嗟の判断でのプレーだったという。
また、同じくトライアウトで新加入したばかりの18歳、春田賢人は安定したプレーが光り、京谷HCも高く評価。今後、主力メンバーに食い込んでくる可能性もありそうだ。
そのほか今大会では、4試合で17人中15人が得点を挙げたU23日本代表。オフェンスに関しては速い展開に加えて「個の打開力」を求めていくと言い、さらなるレベルアップが見られそうだ。
一方、チームが最大の武器とするのはA代表と同じ「トランジション」と「ディフェンス」だ。トランジションは、A代表の3人のレベルに、ほかの選手がどれだけ近づくことができるかポイントとなる。
ディフェンスはスペインやトルコなどヨーロッパ勢の高さに対抗するため、ハーフコートディフェンスでも3ポイントラインより高く張り出し、容易にゴールに近づけさせない戦術が主軸となりそうだ。さらにプレスディフェンスでトーンを変えるなどして、ディフェンスで相手をリードするつもりだ。
今後は合宿での選考によって17人から12人に絞る過程を経て、5月の本番を迎える。キャプテンの宮本、副キャプテンの鳥海はいずれも「目標は金メダル」と宣言。東京パラリンピックに続き、自国開催での“史上初の快挙”を目指す。
写真・文=斎藤寿子