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12月17、18日、高崎アリーナでは「第32回日本選抜車椅子バスケットボール選手権大会」が開催された。来年1月20、21日に東京体育館で行われる天皇杯出場へのラストチャンスでもあった同大会には、全国から13チームが出場。2日間にわたって熱戦が繰り広げられた結果、東日本の4強の一角を担う千葉ホークス(関東ブロック)が優勝。残り1枚だった頂上決戦への切符を獲得した。
2018年から「天皇杯」を下賜された「日本車いすバスケットボール選手権大会」は、日本一を決める国内最高峰の大会だ。千葉ホークスは、同大会で2度の3連覇を含む11回の優勝(千葉WBC時代を含む)を誇る古豪。近年も必ずと言っていいほど優勝争いに絡んできた。
若手の成長も著しく、東京2020パラリンピックに出場した現男子日本代表キャプテンの川原凜(1.5)を筆頭に、19年まで日本代表として数々の国際大会に出場した経験を持つ緋田高大(1.0)、24年パリパラリンピックを目指す強化指定選手の一人である池田紘平(4.5)らが主力として活躍。
特にチームの大黒柱だった16年リオデジャネイロパラリンピック日本代表の土子大輔が一線を退いた穴を埋めるように、池田が徐々に存在感を示し始めてきたことが大きい。また、16年リオパラリンピック日本代表の千脇貢(2.5)や、日本代表活動の経験を持つ植木隆人(2.0)、山口健二(4.5)らベテラン勢も健在だ。
しかし、10月1、2日に行われた東日本第2次予選会では、準決勝でパラ神奈川SC、3位決定戦では埼玉ライオンズと同じ関東勢に敗れ、天皇杯への出場を決めることができなかった。特に3位決定戦では、第3クォーターまでリードし、天皇杯への切符はすぐそこにあった。だが、第4クォーターで逆転を許し、4点差での惜敗。大きな悔しさを味わった。
今大会は天皇杯への扉を開くラストチャンス。たった1枚しか残されていない切符獲得を目指して臨んだホークスは、初戦(2回戦)は岐阜SHINE(東海北陸)を77-37で破り、幸先いいスタートを切った。
しかし、ライジングゼファーフクオカ(九州)との準決勝では、第1クォーターは本来なら引き離してもいい展開だったが、連続してイージーシュートを落とすなどミスが目立ち、自分たちでリズムを崩した。それでも第2クォーター以降は本領を発揮し、結果は75-39。「チームのテーマである、40分間同じ走力のまま戦い続けることができたからこそ、最後は突き放すことができた」と田中恒一ヘッドコーチ(HC)。いよいよ天皇杯への切符がかかった大事な一戦を迎えた。
決勝の相手は、栃木レイカーズ(関東)。今やエースとなった髙柗義伸(4.0)は、東京パラリンピックに出場し、今年9月の男子U23世界選手権では最大の得点源としてチームを日本史上初の金メダルに導いた22歳。また司令塔の増渕倫巳(3.0)は、12年ロンドンパラリンピック日本代表であり、アウトサイドのシュート力は未だ健在のベテラン。この2人が中心のレイカーズは、1回戦は10代、20代の成長著しい若手が多く勢いのある新潟WBC(北信越)を86-43、2回戦は東京パラリンピック日本代表の岩井孝義(1.0)がキャプテンを務める富山県WBC(北信越)を75-46、そして準決勝では粘るCOOLS(東京)を66-53で破り、安定感のあるゲーム運びが光っていた。
同じ関東勢でお互いに知り尽くした相手同士の対戦となった決勝は、スタートで試合の主導権を握ったホークスが66-56でレイカーズを破る結果となった。最大の勝因は、第1クォーターにあった。準決勝でも露呈した試合の出だしが悪いという課題に直面したホークス。そのため、決勝では最初に自分たちのリズムを良くして流れを引き寄せるために、田中HCが切ったカードはオールコートのプレスディフェンスだった。
「いつも僕たちスタッフは、日ごろの練習や試合会場での過ごし方、アップの様子などを見て戦略を決めています。今日の1試合目(準決勝)の入りはまだいい方ではあったのですが、天皇杯を見据えたときにやはり課題ではあるなと。そこで選手たちに刺激を入れたいと思ってプレスで入ることにしたんです。自ずと視野も広がり、声も出さなければいけなくなりますからね。決勝だからというよりも、まずはとにかくリズム良く試合に入りたいと考えていました。それがこの試合では幸いにもはまりました」
ホークスの強く激しいプレッシャーの応酬に、レイカーズは苦戦。3連続スティールで失点するなど、ホークスの勢いを止めることができなかった。結局、10分間プレスを継続したホークスが、25-8と大量リードを奪う展開となった。そして、これが明暗を分けることとなった。
ホークスがラインナップを変え、ディフェンスも通常のティーカップに戻した第2クォーターは、13-13と互角に渡り合った。そしてホークスが再びプレスに転じた第3クォーターは12-14、ティーカップのラインナップで臨んだ最後の第4クォーターは16-21と後半はいずれもレイカーズの得点が上回る結果となった。つまり、第1クォーターでの貯金がホークスに勝利を呼んだと言える。
さらに言えば、ほぼ互角だった第3クォーターにも勝因があった。実は、第2クォーターを終えた直後のハーフタイム中、田中HCは「第3クォーターはスタートのラインナップに戻して、ディフェンスはティーカップで」という指示をしていた。しかし試合が再開すると、ホークスのディフェンスはプレスに転じていた。指揮官が第3クォーター開始直前に戦略を変えたのだ。その理由について、田中HCはこう語る。
「ハーフコートのディフェンスもチームの強みではあるのですが、アップの様子を見たときに、後半も声を出してリズムよく入ってほしいなと思ったんです。それにはやっぱりプレスだなと思って変えました」
これで天皇杯に出場する8チームが勢ぞろいした。すでに組み合わせは発表されており、最後に決まったホークスは、1回戦は前回覇者で11連覇中の宮城MAXと対戦する。そのほか香西宏昭(NO EXCUSE)、鳥海連志、古澤拓也(いずれもパラ神奈川SC)、赤石竜我(埼玉ライオンズ)と東京パラリンピック代表などトップ選手たちを擁する強豪チームが激突する。果たして日本一の称号は、どのチームが手にするのか。1回戦から注目カードが続く天皇杯は、2023年1月20日にティップオフだ。
取材・文・写真=斎藤寿子